2005年04月08日
ゆがんだ歴史認識 「つくる会」教科書の検定合格に抗議
文部科学省は、「新しい教科書をつくる会(以下つくる会)」主導で扶桑社が作成した中学校の「歴史」「公民」教科書の検定合格を発表した。
今回合格した扶桑社の教科書は、憲法・教育基本法改悪の先取りともいえる内容で、戦争を賛美し「戦争に命をささげる国民づくり」の意図がさらに明確になり、アジア各国との平和や友好関係を大きく損なうものにほかならない。
この重大な問題を抱えた教科書を「検定済教科書」としたことに、自治労道本部として平和運動フォーラムと共同し、各単組から文部科学省への抗議文の送付を取り組む。
「つくる会」は、これまで「従軍慰安婦」「南京大虐殺」などの記述を「反日的・自虐的」として教科書から排除するキャンペーン、検定基準から「近隣諸国条項」削除の申し入れや教科書調査研究から教職員を排除することをねらった地方議会への陳情・請願や教育委員会への働きかけなどを行ってきた。
今回の歴史教科書では、
■日本の植民地支配と侵略戦争を肯定し日本の戦争責任を根本から否定
■太平洋戦争を「大東亜戦争」としアジア解放が目的の「正義の戦争」だったかの記述
■アジアの人びとに被害と苦痛を与えた事実認識がない
■戦争に献身した人を賛美し、「戦争に命をささげる国民づくり」の意図がさらに明確に
公民教科書では
■自衛隊の存在意義、国家への誇り、奉仕と忠誠、国防の義務などを強調
歴史・公民教科書の両方に
■大日本帝国憲法を賞賛した声
■世界最古の『日本国憲法』、政府はGHQが示した憲法草案をやむを得ず受け入れた
など、改憲へつながる意図がより明確になっている。
「日本人」「日本文化」など、日本を不必要に誇張する自国中心史観、皇国史観の復活への伏線と考えられる部分、ジェンダー・フリー否定など、憲法・教育基本法改悪の流れを加速するための教科書という側面も強化されている。
道本部は、重大な問題を抱えた教科書を「検定済教科書」と、公認したことに強い憤りを覚えるとともに、今後生じる問題の責任は、これを検定通過させた文部科学省と小泉内閣そのものにあると考える。
また、このことは中国・韓国などアジア諸国との深刻な外交問題に発展しており、平和運動団体などからも重大な問題として指摘されている。
道本部として、現行の検定制度を支持するものではないが、この間の検定は著しく不公正な運用であり、アジア諸国への歴史的事象の取り扱いに対する配慮、いわゆる「近隣諸国条項」すら十分に適用しない小泉内閣の姿勢に、強く抗議する。
21世紀を担う「若い世代や子どもの権利」を保障するため、史実と歴史認識を大きく歪める偏狭なナショナリズムの危険性を広く訴え、これを容認する政府に抗議する広範な取り組みを進めていく。