2008年08月14日
EU議会の「慰安婦」決議
もうすぐ、8月15日、太平洋戦争が終わって63年目の夏を迎える。「アジア・太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻む北海道集会」が8月11日、札幌市内で開かれた。
《「慰安婦」問題は人権問題》
この集会で講演した上杉聡・日本の戦争責任資料センター事務局長は、アメリカ下院に続き、オランダ、カナダ、EU議会でも日本政府に謝罪と責任を受け入れるべきとする決議が相次いでいることについて、「『慰安婦』問題が過去の問題としてではなく、女性への人権蹂躙を許さないという世界的な人権問題である」と述べ、日本国内における問題解決への運動参加を強く呼びかけた。
《「慰安婦」問題は戦時性暴力の前身》
世界がこの問題をなぜ、今問題にしているかということについては「旧日本軍の慰安所は、ボスニア、ルワンダ、ニカラグア、ビルマ、ダスフールなど今日の地域紛争で問題になっている性奴隷、戦時性暴力、人身売買など全ての問題の前身だ」と各国が受け止めているからだと説明した。
《裁かれなかった「慰安婦」問題》
一方で、国内で「慰安婦」問題は「解決済み」という見方があることについても、上杉さんは「一連の戦争犯罪は、かの東京裁判で裁かれてきたが、この『慰安婦』問題は、裁判で言及はされているものの誰も責任を問われなかった」として、今日なお残された課題であると強調した。
「慰安婦」被害者自身が初めて声をあげたのが1991年、韓国の元慰安婦の女性だった。被害者自身が名乗りづらい事情もこの問題の解明が遅れている理由だと話した。
《安倍首相の発言が引き金》
そして、この問題が世界の人権団体や議会の関心を惹いているもう一つの理由は「安倍元首相が『狭義の強制連行』はなかった」として軍の関与を否定するなど現在の日本政府に「慰安婦」問題に関する「93年官房長官談話」からの逸脱があるとも指摘した。そのことが、引き金となって一層「慰安婦」問題をクローズアップしている。
《「慰安婦」と「拉致」は同じ》
さらに、考えさせられたのは「慰安婦」問題の「強制連行」と北朝鮮による「拉致」も同義語であると語ったことだった。拉致被害者である有元恵子さんはコペンハーゲンで「北朝鮮で仕事がある」といってだまして訪朝し、現地で拘束されている。旧日本軍も多くの中国人や朝鮮人被害者をだまして連れて行き、現地で拘束した。
《政権交代で「慰安婦」問題の解決》
この問題をどのように解決するのか。上杉さんは「政権交代」だと締めくくった。現在、参院では、「慰安婦」被害者への名誉回復などを求める「解決法案」が可決され、衆院で否決という事態となっており、政権交代があれば、今法案が国会で成立すると強調した。そのためにも、地方議会での意見書などの採択も重要だ、と述べた。
心に刻まざるを得ない、そんな有意義な集会だった。