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2008年07月10日

原子力政策の破綻を示すプルサーマル、その問題点

北海道平和運動フォーラムは、サミツト開会日の7月7日夜、自治労会館5Fホールにおいて「原子力政策の破綻を示すプルサーマル、その問題点」の講演会を開き、組合員、市民団体の会員など300人が参加した。

主催者を代表して山田代表は、「核と人類は共生できないという基本にたって反原発運動を進めてきた。日本のプルサーマル計画は高速増殖炉を中心として核燃料サイクル政策の破綻を隠蔽するものである。さらに、米国はプルサーマルの実験を日本にやらそうとしている。誤った国策についてNOという声を国にあげていこう。」とあいさつした。

講師の小林圭二さんは、京都大学原子炉実験所に講師として退官されるまで勤務し、原子炉物理学の研究、原子炉の運転、保守に従事した学者。日中は大学の仕事をしながら、夜は反原発運動に協力されてきた。


【画像】講師・小林圭二さん

自治労道本部は、後志地本管内の単組・組合員のプルサーマル問題の理解を深めるために、7月8日夜、岩内町地方文化センターで、後志地本と共催し学習会を開催した。
テーマ及び講師は小林圭二さん。120人が参加した。

プルトニウム利用は国際的犯罪、推進の理由はデタラメ・ウソ

小林講師は「プルサーマルの必要性」をめぐって、第1に、プルトニウム利用は国際的犯罪である。長崎原爆がプルトニウム利用の始まりであり、核兵器製造技術と原子力「平和利用」技術は同じである。核兵器製造のためのプルトニウムを作る「原子炉」、ウランの使用済み燃料からプルトニウムを分離・取り出す「再処理」工場が開発され、その技術が今日の原発と六カ所再処理工場に使われている。

しかし、平和利用とされた原子力開発によってインド・パキスタン・イラン・北朝鮮などの新たな核保有国が生まれており、世界は核をめぐる緊張が高まり、プルトニウム製造やウラン濃縮の動きにも神経をとがらせ、それを芽のうちに摘み取ろう躍起である。世界はプルトニウム利用から撤退しており、日本だけが逆行してプルサーマルなどのプルトニウムの大量利用に踏み出すことを止めるべきである。

第2に、政府・電力会社がプルサーマル推進の理由として挙げている、①ウラン資源の節約(有効利用)、②余剰プルトニウムを持たないという国際公約の履行、③高レベル放射性廃棄物量の低減、に対して次のように考える。
①プルサーマルはウラン資源の節約ないし有効利用にはならない。プルサーマルのウラン資源利用率はわずか1%に過ぎず、資源上のメリットが乏しいことは原子力界の常識である。プルトニウムの利用は、高速増殖炉によってはじめて意味を持つものである。②余剰プルトニウムの焼却というのは欺瞞である。余剰プルトニウムを持たないという国際的公約を守ることは、プルサーマルをやる理由の一つにはなるでしょう。しかし、それならば何故、プルトニウムをせっせと分離・生産する六カ所村再処理工場を稼働させるのか、政策がまったく矛盾している。再処理工場の稼働を凍結しなければ、この理由は意味をもたない。③高レベル放射性廃棄物の低減はプルサーマルの目的ではない。再処理の目的はプルトニウムを高速増殖炉の燃料に供することであって、高速増殖炉計画がなければそもそも不要な工程である。高速増殖炉をやらないのであれば、使用済み燃料を再処理せず直接処分するというもっと安価な別の道がある。

プルサーマルの危険性は多岐に及ぶ、実績はどこにもない

次に、「プルサーマルの危険性」である。
プルサーマルは原発の変則的な使い方をする。元来、今の原発は低濃縮ウランを燃料とする設計となつているが、本来の燃料でないプルトニウムを含むMOX燃料集合体を大量に混装荷する使い方をする。そのため、①現行軽水炉の構造には手を加えない。そのため装荷できるプルトニウム量を最大1/3までに制限する。②MOX中のプルトニウム含有率をできるだけ多くし、一度に多量のプルトニウムを焼却することによって、MOX燃料の加工、輸送、貯蔵等にかかる追加費用や手間を抑える。③ウランとプルトニウムの性質の違いから起こる多少の不合理は許容する。④試験過程をできるだけ省略し、いきなりぶっつけ本番で商業利用を始める。以上のような変則的なやり方で実施する上に、安全性より経済性に重きが置かれている。

第1に、原子炉の性質に増える危険性がある。①原子炉の制御装置や停止装置(制御棒とホウ酸)の効きが低下する。②原子炉の挙動がより危険になる。③燃料の燃え方にムラが生じる、④燃料組成が複雑でミスを起こしやすい。

第2に、MOX燃料の危険性である。①ガス状の「死の灰」(FPガス)の放出率が大きくなる。②燃料棒内の圧力が高くなる。③融点が低くなる。④熱伝導度が小さくなる。⑤新燃料は放射能がウラン燃料より強く作業者の被曝量が増える。⑥臨界量が小さい、発熱が大きい、⑦放射能毒性が強く、取り扱いには密封された特別な整備が必要になる。

第3に、安全余裕が削られる。現行の設計を変えずに変則的なやり方で実施するため、対策が間に合わせ的でどうしても限界がある。プルサーマルをやるとウラン燃料が従来もっていた安全余裕は確実に削られ、その結果、ウラン燃料なら耐えられた事故もプルサーマルになると耐えられず被害を招く事態に至るおそれがある。

第4に、日本のプルサーマルは他国に実績がない。安全上の基本的条件であるプルトニウム含有率あるいはプルトニウム富化度や燃焼度など、プルサーマルの技術的条件を比較すると、日本は他国に例をない突出した高さになっており、日本の過去の小数体試験やふげんの条件と比べても著しく高い。これから実施する日本の条件と同等のプルサーマルの実績はどこにもない。等々について指摘した。

国の原子力政策破綻のツケを立地自治体と住民に強要

政府は、高速増殖炉を中心とする核燃料サイクルという原子力政策の破綻を隠蔽し、打開するために使用済み燃料と再処理工場の新たに「用途」として持ち出したのがプルサーマル計画である。そのツケは原発立地である泊をはじめ4町村の「住民への危険性増大」というシワ寄せを強要することになる。そのようなツケを立地自治体が払う必要がないことを強く訴え、住民の反対の声を大きくし、計画を撤回させようと訴えた。



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