2月15日、道本部は2014年度道本部自治体財政セミナーを開催し、60地本・単組・総支部、約140人が参加した。本年は、地方財政確立道民会議主催の講演会「格差問題と北海道の地域経済を考える」に合わせての開催となった。
冒頭、主催者あいさつで道本部難波副委員長は「2014年度の地方財政計画は一定の水準が確保されたが、公務員の労働生産性は低いとして、賃金を抑制する動きがある。また、国が人件費削減を自治体に要請し、これに応じる、もしくは応ぜざるを得ない財政的に厳しい自治体を選別し、財源を多く配分するという、極めて問題のある仕組みを構築しようとしている。自治労も、連合のSTOPTHE格差社会キャンペーンや公務労協の公共サービスキャンペーンに積極的に参加し、地方財政確立の運動を作らなければならない。」と訴えた。
第1部の道本部自治体財政セミナーでは、前地方自治総合研究所研究員の高木健二さんから講演「2014年度地財計画と地方財政~難題山積の地方財政」を受けた。
高木さんは「2014年度地方財政計画の規模は拡大したが、①地方法人特別税・譲与税の縮小廃止、②地方法人住民税の国税化・地方交付税化、③自動車関係税の再編と代替財源確保難、④市町村の固定資産税の大幅減税の可能性、⑤地方交付税の歳出特別枠・別枠加算廃止方向、⑥消費税増税分の国庫補助事業への限定充当、⑦公共施設解体費用捻出の地方債化など、問題点は山積している。」と指摘、「今回の『地域の元気創造事業費』では、行革努力を交付税算定に利用するのは、標準的行政を削減した算定であり、標準的行政が標準ではないことになり、矛盾した算定になる。また、東京都の地方税を横取りすることは自治体の課税権の剥奪であり、地方を、税を剥奪される勢力(東京都)と取る勢力(その他の地方)に二分し、分断化させる。自治体間対立を激化させ、地方の連帯性が消滅し、中央集権を強化することになる。地方自治、地方分権は死語になるだろう。」と結論した。
その後、北海道地方自治研究所の辻道雅宣研究員から報告「道内市町村の財政状況-2012年度決算の特徴」を受けた。辻道研究員は「歳出削減により、市町村財政面では好転傾向にあるが、黒字となっていても内容がよくない場合もある。また、総務省は、黒字の市町村が増えてきており、国の財政は厳しいという理屈で地方交付税などを削減することも検討している。」と述べた。
第2部は講演会「格差問題と北海道の地域経済を考える」が開催され、全体で約250人が参加した。
冒頭、主催者あいさつで連合北海道の工藤会長は「安倍政権は、中央集権的な政策で格差を開くことばかりしている。昨年、安倍政権は地方交付税を減らし、地方公務員の給与引き下げを強制したが、まさに、中央が地方を支配する上意下達的な政治をめざす安倍政権の本質を象徴するものだった。本道民会議は、昨年もシンポジウムを開催して市場経済優先の安倍政権による、地方切り捨て、弱者切り捨て政治に警鐘を鳴らした。連合北海道としても、「STOP THE 格差社会!暮らしの底上げ実現」キャンペーン第2弾をスタートしており、民主党北海道とも連携して、街頭行動を展開し、ワークルール改悪反対や非正規労働者の処遇改善、労働者の組織化、地方財政の確立、地域福祉の充実、そして「特定秘密保護法」廃止などを訴えている。本日の講演会を通じて、勤労道民・生活者が安心して働き暮らし続けられ、持続可能な地域社会をめざし引き続き取り組んでいく。」と述べた。
その後、北海学園大学の西村宣彦准教授から講演を受けた。西村准教授は冒頭、「格差社会といっても、個人、世帯間、地域、男女、正規非正規、世代、所得、資産、生活の質、など、様々な格差がある。世界の矛盾を正す視点は重要だが、それだけでは不十分であり、どのような社会を明日につないでいくか、理念が必要。」と述べた上で、詳細なデータを解説しながら、「民間設備投資は全く不調で公共投資が景気を支える構図になっている。また、アベノミクス効果は賃金上昇には結びついておらず、人口は札幌集中、道外への流出が止まらない。雇用情勢も全国と比べ遅れており、消費者物価は、円安による為替差損効果が大きく、灯油などの価格高騰の影響が大きく、それを除くとデフレ基調である。」と、アベノミクスの北海道における効果を考察した。また、格差をどう乗り越えるかについて「連帯なき自主自立の強調は、苦境に陥った自分と関係ない自治体を「努力が足りない」「自己責任」と切り捨てる方向に容易に持っていくのであり、例えば財政再生7年目の夕張市は、現職の83%は財政破綻時にはヒラか入庁前。自己責任を問われるべき人たちではずだが今後13年続く厳しい再生計画が職員の心をへし折り、中途退職へと導き、地域と自治体の再生を困難にさせている。地方に対する適正な財源保障は重要であり、財源がなければ、地域が再生するわけはない。また、元気な地域を作るのは、やはりヒト。郷土を愛する、優秀な人材を育てることに投資すべきであり、外からも新しいヒトを受け入れることが重要である。魅力ある地域にヒトは来る。地域の資源を使って、どうすればもっと魅力を高められるのかを考え、実行していくことで、どんな自治体にも可能性はある。」と、結論した。
最後に主催者まとめで連合北海道の出村事務局長は「本日の講演で格差の現状、アベノミクスの効果を確認できたと思う。これを生かして「STOP THE 格差社会!暮らしの底上げ実現」キャンペーン第2弾など運動も展開していかなければならない。安倍政権の問題点は多いが、議員立法で連合が要求していた、交通政策基本法案やタクシー新法が成立しており、政党を越えての賛同を得た結果でもある。このような事例を足掛りに取り組みを進めていく。」と、述べた。