1月10日~11日、札幌市・自治労会館5階大ホール、京王プラザホテル札幌・2階シンフォニーで自治労北海道本部「2014国民春闘討論集会」を開催し、130地方本部、単組・総支部292人(うち女性・23人)が参加した。
はじめに、藤盛副委員長が主催者あいさつを行い「連合は5年ぶりにベア要求を掲げてのたたかいとなる。政府の賃上げ要求に対し、大手では容認の報道もあるが、7割が中小企業労働者であり日本全体が賃金をあげていく状況にはない」としたうえで「官公労は確定期に賃金闘争を集中せざるを得ない実態もあるが、しっかりと今春闘をたたかい、賃金相場形成をしていかなければならない。10数年来抑えられてきた労働分配率を適正なものにし、雇用の劣化に歯止めをかけるためしっかりと地域春闘に結集してほしい」と訴えた。また給与制度の総合的見直しの検討の課題については「署名や打電等の取り組みを提起させていただくが、単組・職場でしっかりと学習を深め、取り組みに結集してほしい」と要請した。
続いて基調講演Ⅰとして江森孝至連合総研主任研究員が「正々堂々と賃上げの要求を掲げよう-2014春闘の課題と展望」と題し講演した。
江森主任研究員は「労働界はデフレ下での春闘に完全に染まり切った中で、久々に物価上昇基調での春闘を迎える。また、消費税も引き上げられる。従来のように春闘を取り組んでいたのでは、物価が上がって消費税も上がる中で賃金だけが下がりかねない現実がある。今春闘期を転換期の春闘にしていかなければならない」と今春闘について触れ、「内需の拡大、購買力を高めるために、中小企業労働者の引き上げ、非正規労働者の引き上げをしなければならない」「1%以上の賃上げを勝ち取らなければ物価上昇にも満たない賃上げとなる」と「ベア・月例給の引き上げが何としても必要となる」と訴えた。
また、専売公社・JT、フード連合での労組役員経験を踏まえ、労働基本権回復の課題や非正規職員の組織化、TPPの課題についても触れ、労働基本権の回復については「法律的に労働基本権が担保されても労使双方がしっかりと自主決着できる能力がなければならない」という問題提起や、非正規職員の組織化については「数を増やすだけでなく人材育成の場である」とし「非正規という異質なものを抱えることによって、会議の持ち方ひとつとっても考える。足し算ではなく掛け算となりうる」と組織化に取り組んだフード連合役員の変化について紹介した。
引き続き、基調講演Ⅱとして森本正宏自治労本部労働条件局長より「自治労・2014春闘の課題およびポイント」と題し講演を受けた。
森本局長は「安倍に惑わされず、政権が思っている以上に賃上げをする姿勢が連合・自治労に求められ、労働者全体に賃上げを広める運動が必要となる」と今春闘へ望む姿勢について触れたうえで、「今春闘で賃上げ→プラス勧告(調査方法も検討事項のためストレートにいかないかもしれないが)→早期差額支給→給与制度の総合的見直しはいらない」という考え方の基本を示し「その考え方に立って春闘期にどこまで労使交渉しなければいけないかということになる」とした。また、「確定期に行うことは勧告が出されて給与表の改定・一時金の改定をどうするかということだが、賃金改善はそれだけでなくどういう運用をさせるのかということにもよる。運用によりどう全体のベースを引き上げるのかをしっかりと春闘期に出してほしい」と提起した。
昨年末に出された地財計画については「地域の元気創造事業費など不満な点は残るが、給与関係経費は回復し、歳出の特別枠も一定確保され、総額でも前年を上回る状況である」としたうえで「消費税アップによる効果であり、3~5年後には財政的に厳しい局面が想定される」と指摘した。
最後に給与制度の総合的見直しの重点的な項目である「地域間の給与配分の見直し」「世代間の給与配分の見直し」の2点について「国公については配分の問題であるが地公にとっては水準の問題である」などの問題点を説明し、引き続く取り組みへの協力を要請した。
その後、道本部提起として「2013秋期闘争中間総括(案)」「2014道本部春闘方針(案)」について櫛部賃金労働部長より、「2014国民春闘アンケート結果について」を酒井総合研究室事務局長より提起した。
全体討論では、臨時・非常勤等職員の処遇改善、組織化についての発言や、春闘の位置づけについて「1年の賃金・労働条件改善にむけた労使課題を明確にする取り組みとするべき」「人件費削減攻撃が想定される中でこの春闘から闘争態勢の準備を」という発言、また給与制度の総合的見直しについては「取り組みのなかで北海道ではどういう見直しがされるのか、どう自分の賃金が変わるのか、組合員からは求められる。しっかりと取り組まなければならない課題であり、十分な情報提供と中央交渉の強化を求める」といった発言が出された。
2日目は公開講座として開催し、冒頭、山上執行委員長が「混迷する政治・経済状況、労働運動を取り巻く状況が厳しい中で、今後想定される課題・問題点について学習を深めたい。今日の講座が今後の取り組みの糧となればと考える」とあいさつした。
引き続き、講座Ⅰとして「労働法制の規制緩和にどう立ち向かうか」と題し、自治労北海道顧問弁護士でもある北海学園大学法学部・淺野高宏准教授から講演を受けた。
淺野准教授は労働法制の規制緩和が議論されている規制改革会議や産業競争力会議、雇用・人材分科会などで「労働者側の利益を代表(意見を反映する)するものがメンバーになっておらず、労働者保護の観点が抜けている」ことを指摘したうえで、労働時間規制・ジョブ型正社員・雇用の金銭解決制度など現在、議論・検討されている事項の問題点や内容について弁護士として労働争議に関わる中での事例も交えながら説明した。そのうえで「現在構想されている制度では労働組合自体が当事者として交渉できる力をつけなければならない。労働組合がどのように規制緩和の歯止めとして絡んで行けるか。現行法制上でも同様であり、労働組合が組合員の利益を代表する組織とならなければならない」と労組に期待する役割について参加者へ訴えた。
講座Ⅱでは「アベノミクスと公務員給与」と題し、東京大学大学院法学政治学研究科・金井利之教授から講演を受けた。
金井教授はアベノミクスについて「過去の『改革』を無にする郷愁・回顧・復古的な側面が強い」とし、日銀への関与や公共事業政策など「非新自由主義的な政策を打ちだしている点が大きな特徴」と指摘した。
自律的労使関係議論については、労働側に近い政権の場合の関係の難しさや「民間であれば経営権を持つが、自治体当局は経済的自由権がない。使用者性をそもそも欠いている」ことをあげ、「勧告制度下で給与を考えていく方が意味がある」と現状の公務職場で労働基本権が回復した際の問題点を指摘した。
また「労働組合運動の弱さが日本経済の『失われた10年』の元凶の一つ」とし、「労働組合が強ければ労働生産性を得られたし、企業が鍛えられた。古典的な「労働者的」取り組みへの回帰が経済にプラスに働く」と労働運動の役割について述べた。
さらに公務職場においては「生産性をいかに回復させるか(労働強化するのではなく)が労働者に求められる。多様な働き方などの言葉に惑わされず、労働組合が真面目に正規化・定数の拡大・生産性の向上を図る以外にない」と訴えた。
最後に「経済全体を踏まえて財政政策、社会保障政策を考える必要がある。自治体職員や自治労ほど、マクロ経済の視点を学ばなければならない」と指摘した。
集会の最後に藤盛副委員長が「この春闘期に労働者として私たちが中心的役割を担うことが重要。引き続く地方本部別の春闘討論集会に多くの参加をいただき、今春闘の意義について確認をしたい」とまとめ、集会を終了した。