連合政策ニュースレターより、標記内容についての報告がありましたので、以下の通りお知らせいたします。
第53回社会保障審議会介護保険部会が11月27日(水)、都内会場で開かれた。 来年の通常国会への介護保険法改正案提出にむけ、部会による報告書のとりまとめに入った。事務局より「介護保険制度の見直しに関する意見(素案)」(以下、「素案」)が出され、これに基づき議論を行った。連合からは平川則男・生活福祉局長が出席した。
主な議論内容は、以下のとおり。
(委員)介護保険料について、保険者間における保険料の地域格差に言及してもよいのではないか。
(委員)介護予防事業(一般介護予防事業)の機能強化に際しては、介護予防事業全体の重点化・効率化を図りつつ、成果をあげることが期待される。その進捗状況について広く共有するとともに、効率的・効果的に事業展開しているか検証する仕組みを設けることを提案したい。総合事業の事業費の上限についての記述は、上限の定め方や上限の実効性の点で曖昧である。保険料負担者の理解と納得感が得られる事業実
施となっているか、進捗状況を確認する機会を設けていただきたい。
(委員)素案は、認知症当事者の声はほとんど反映されていなく、今後の介護保険制度や認知症施策に不安を隠せない。
(委員)医療保険制度で行われている在宅医療について、その拠点を介護保険法で位置づけるということは、その報酬などが介護保険から支払われることになるのか。こうしたグレーゾーンの対応を明確化すべき。また、介護給付費分科会で議論すべきものが混在している。若年性認知症に関しても言及すべきではないか。
(委員)素案は自治体に配慮した内容になっているが、事業の実施にあたり、市町村の現場力を高めてほしい。
(委員)介護業界のイメージアップをはかるべきではないか。働きがいのある職場にしてほしい。
(委員)イメージアップだけでは介護職員の定着につながらない。専門職としての地位とそれにふさわしい賃金がセットになっていないことが問題だ。
(連合委員)前回の部会に提出した意見書に記載の通りだが、今回は素案の枠内で意見を述べたい。コーディネーターやボランティアの育成は、これまでも市町村の社会福祉協議会が進めてきたものであり、既存の組織の活用を明示すべき。また、予防給付の訪問介護や通所介護の内容を細かく検証した上で、職の専門性が必要とされ、要介護状態の軽減または悪化の防止に資する効果が認められるサービスについては、加算などで対応すべきだ。新しい総合支援事業は、市町村の裁量で決められるものであり、事業に対する被保険者の権利性は低くなることから、2号被保険者の権利性を補う手段として国によるガイドラインや実施要綱の策定などに関して、介護給付費分科会などで議論を行うことを検討してほしい。さらに、市町村の介護保険運営協議会には、2号側の参画をより推奨すべきと考える。人材確保について、介護職員を専門職としていくことで地位向上がはかられる。自立・尊厳を支える専門職として社会的な認知を高めてほしい。介護職員処遇改善加算について、継続を強く求める。ワークライフバランスや労働法の研修実施や、無資格者に初任者研修や実務者研修の受講を推奨してほしい。情報公表制度の充実もお願いしたい。
(委員)新たな事業への2号保険料の充当はおかしい。全体の費用抑制について、より厳しく取り組んでほしい。
(委員)ケアマネージャーに留まらず、サービス提供責任者に対する研修もお願いしたい。人づくりが「在宅の限界点」を高める実効性につながる。
(委員)まちづくりの観点も重要だ。連合委員が指摘したように人材確保は、処遇ありきだ。
(委員)素案で「市町村は介護保険事業計画の中で要支援者へのサービス提供の在り方とその費用について明記することになるが、その結果を3年度毎に検証することを新たに介護保険法に法定化することを検討する」としているが、結果については3年を待たずにきちんと報告されるべき。また、人材確保について国・都道府県・市町村が役割分担しつつ、それぞれが積極的に「取り組むことが重要」としているが、「取り組むべき」と記載したほうがよい。
(事務局)連合委員から指摘されたコーディネーターの育成は、政府としても考えている。専門性への加算について、単価設定は市町村にしてもらうが、既存の給付との齟齬が生じないように現行の単価を踏まえて検討する必要があると考える。
(委員)今回の制度改革は、地域包括ケアシステムの構築に向けて前へ進める意図があったと思う。但し、市町村による恣意的な運用にならないようローカルルールのチェックも含めて都道府県の適切な関与が必要だ。
(委員)高齢者が多い地域は、保険料は高めになる。介護保険制度がスタートしても民間の参入がほとんどなく、求められるサービスをすることができない小さな自治体もある。実態を見ながら制度設計を考えてもらいたい。
(委員)厚労省保険局と老健局との政策協議をより密なものにして、医療と介護の連携に向けて取り組んでほしい。
次回は、12月20日に開かれ、報告書のとりまとめが行われる予定。