自治労北海道本部は2月23日に提出した春闘要求書の回答を受け、3月13日10時から2017春闘期の課題について道市町村課(対応市町村課長)と交渉を実施した。
冒頭、和田副執行委員長より、春闘をめぐる状況や経済動向に触れたうえで長時間労働の是正、臨時・非常勤等職員の処遇改善など当面する課題について指摘を行ったうえで、重点要求に対する考え方を求めた。
道市町村課は「要求事項については、基本的には、法令や国の通知等の趣旨を踏まえ、各自治体において判断の上、対応すべきものと考える。道としては、今後とも市町村に対する情報提供や必要に応じた助言を行って参りたい」との回答にとどまり、詳細が不明確のため、三浦賃金労働部長、神成自治体政策部長が重点項目について指摘した。
賃金要求については「3年連続で月例給・一時金の改善はあったが、依然として厳しい生活実態あるとの春闘アンケートの結果をふまえて取りまとめた要求事項」であることを説明したうえで、自治体職員の生活実態や賃金の引上げ要求について、基本的な認識を質した。
道市町村課は「賃金引き上げ要求については、労働者の権利であると理解しているが、公務員の場合は、社会一般の情勢に適応した水準を確保するため、労働基本権の制約の代償措置として給与勧告制度が設けられていることから、職員の給与の決定については、この給与勧告や地方公務員法に規定する給与決定の原則などを踏まえて、各自治体で判断すべきものと考えている」との認識を示したため、2006給与構造改革や給与制度の総合的見直しなどにより、自治体職員の生活は非常に厳しい実態にあることをふまえたうえでの対応を求めた。
2.今年の特別交付税などへの対応について
これまで減額の対象となっていない自宅所有者の住居手当について現時点での情報を明らかにするよう求めたところ道市町村課は「今年度の特別交付税算定上の調整対象とはならない予定であると聞いている」と回答したため自治体で判断した内容については、基本的に尊重することを強く申し入れた。
3.自治体のラス指数等の問題点について
昨年末に公表された2016年4月現在のラスパイレス指数について全国平均(99.3)と道内平均(97.7)とで1.6ポイント程度差がある要因について道市町村課としての見解を求めたところ「道内の景気回復が遅れている中、平成28年4月現在で、給料等の独自削減を行っている道内市町村が減ってはいるものの7市町村あることも一つの要因である」とし、ラスパイレス指数については「国と地方の給与水準を比較する際の基本的な指標」との認識を示し「自治体の給与水準については、給与勧告や地方公務員法に規定する給与決定の原則などを踏まえ、各自治体において判断すべきものであることから、今後とも市町村が自ら判断する上で必要とする様々な情報について、提供して参る」との考え方を示した。
これに対し道本部は「各自治体では、技術系や専門職をはじめ一般職においても、採用募集を行っても応募者ないとの実態や採用通知を出しても辞退が出ているなどの報告を受けている。こうした事態は新規採用者を含めた人材、人員確保にも大きな影響を与え、業務量の増加につながるばかりでなく、住民サービスの低下や業務の継承など行政運営に大きな影響を与えていることを認識し給与水準を引き上げるべき。単にわたり問題を指摘するのではなく、自治体の立場に立って、どうしたら一定の賃金水準の確保が可能となるか、技術的な指導を行うこと」も検討するよう求めた。
また、ラスパイレス指数そのものの問題点について、国家公務員にしか支給されていない広域異動手当や本府省業務調整手当、ほとんどの自治体で支給されていない地域手当などが給与に占める割合が増加しているなかで、給与表上の額だけを比較した数値を公表することは、実態とかけ離れていることなどに触れ、道としての認識を示すよう求めたのに対し、道市町村課は「国と地方の給与水準を比較する際の基本的な指標として、広く一般的に定着しているもの」との認識を示したものの「比較対象とする職員の範囲が対等でないことや、給料以外の諸手当が含まれていないことなどの課題も有している」との見解を示した。
道本部はラスパイレス指数を理由とした給与削減は断じて認めない姿勢を示し、国に措置されていて地方にない手当が算入されていないこと、特に町村ではラスを引き上げる職員区分が変わるだけで1~2程度変動するなどの事情を有していることなど問題点を指摘し、機会がある毎に国(総務省)に対して働きかけることを強く求めた。
4.人事評価制度について
地公法の改正に伴い、昨年4月から運用が開始されている人事評価制度について道本部は評価結果の活用については、公平性や透明性の確保など各自治体における労使交渉・協議などにより制度の検証を重ね、納得のいく制度としていくことが重要であり、評価結果の活用について、機械的に処遇への反映させるよう助言を行っていることは極めて遺憾である。」「①評価結果の活用に関しては自治体の判断により決定すること、②自治体に対し評価結果の活用について『給与や勤勉手当、昇給、昇格などの処遇へ反映をさせるべきである』等、誤解を招くような助言は行わないこと。」を強く求め道市町村課としての見解を求めた。
道市町村課は人事評価の定義に触れたうえで「評価結果の活用については、これらの改正法の趣旨を踏まえ、各自治体で判断すべきもの」との考え方を示すとともに「一般職の全職員を対象としなければならないものと認識しており、今後も市町村に対して引き続き必要な情報提供や助言等を行って参りたい」との考えを示したことから、職場において十分な話し合いの元で取り組みが進むように適切な助言を行うことを要請した。
5.臨時・非常勤等職員の処遇改善に向けて
臨時・非常勤等職員の処遇改善について道本部は「地方自治体で働く臨時・非常勤職員に対しては、昨年12月27日には総務省研究会の報告が出され、3月7日には『地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案』が閣議決定し国会に提出され、今後国会で議論されることとなる。任期の問題やパートタイムで任用される者への手当の支給、法施行日が1年先延ばしとなったことなど課題もあるが、一般職非常勤職員への給料・手当の支給などの改善点も含まれていると認識している。」として、本法案に対する北海道の見解を求めた。
道市町村課は「地方公共団体における行政需要の多様化等に対応し、公務の能率的かつ適正な運営を推進するため、臨時・非常勤職員について、特別職の任用及び臨時的任用の厳格化や一般職の非常勤職員の任用等に関する制度の明確化を図るとともに、一般職非常勤職員について期末手当などの手当の支給が可能となるよう規定を整備するものである。道としては、これら改正法案をはじめ、関係法令の趣旨を踏まえ、必要となる条例等の整備などについて、引き続き、市町村へ情報提供や助言を行って参りたい」と考え方が示された。
道本部は「これまで法の間に置かれてきた、臨時・非常勤等職員の処遇改善は急を要する事項であり、安心して働き続けられる環境を確保するためには、雇用の安定は賃金労働条件とならび最重要課題である。再度の任用の担保や財政措置の問題をはじめ多くの課題がある。また、任用替などにより雇止や賃金・労働条件の切り下げがあってはならず、各自治体への丁寧な説明と各自治体における労使の協議を十分に行っていくことが必要。」と指摘し、道として情報収集に努め、各自治体へ適切な助言を行うよう求めた。
6.雇用と年金の接続について
公務における特殊性を踏まえ、定年延長をすべきとのこの間の要求を踏まえ、地方から積極的に働きかけを行うことを求めたうえで雇用と年金の接続に関する道としての考え方を示すよう求めたところ道市町村課は「地方公共団体の雇用と年金の接続については、閣議決定や国の要請に基づき、当面の間は再任用によることとされており、道としては、市町村における再任用制度が円滑に運用されるよう、引き続き、国の動向等を踏まえながら情報提供や助言等に努めて参りたい」との認識を示した。さらに道本部は多くの自治体で再任用職員が1・2級で任用されている実態を踏まえ、定年前の生活水準を維持するために、最低でも4級での任用、生活関連手当(特に寒冷地手当)の支給も含めた処遇改善にむけ、各自治体に働きかけるよう求めた。
7.長時間労働の是正について、
長時間労働の是正にむけ、道本部は「現在、政府でも長期間労働の是正について検討がされているが、各自治体においても、メルヘルス罹患による長期病休や自死が起きており非常に厳しい実態にある。地方自治体においても長時間労働の是正は喫緊の課題である」と実態を訴えながら道としての考え方を求めた。
道からは「現在、働き方改革において、時間外勤務の縮減が重要な課題となっており、時間外勤務の縮減は、ワークライフバランスの実現による士気向上はもとより、育児・介護等による時間的制約のある職員の活躍の場の拡大や、男性職員の育児等への参画の推進にも資するものと考えていることから、国の動向等を踏まえながら情報提供や助言等に努めて参りたい。」との認識が示された。
道本部は「長時間労働の要因については、国によりすすめられてきた人員抑制攻撃により、業務量に見合った人員が確保されていないことが最大の要因である。長時間労働の是正にむけては、労使がともに共通認識にたちワークルールを確立することが必要。また、予算の制約がある中でサービス残業や超勤単価の課題もある。本来、法律を守るべき自治体が法律を守らないとはならない。」と現状の課題について指摘し、道市町村からの適切な助言を行うよう求めた。
8.よりよい地域医療・福祉の実現について
神成自治体政策部長より「2025年には団塊世代がすべて75歳以上となり、本格的な超少子高齢化・人口減少社会を迎える。しかし、医療・介護・福祉の現場では、サービスの需要が急増しているにもかかわらず、人材不足が深刻化しており、離職防止や新たな担い手の確保にむけて処遇改善に取り組むことが喫緊の課題。社会保障費が増大していくなかで、地域医療・福祉を守り、社会保障を基盤とした持続可能な地域社会をつくるため、道として施策や市町村に対する支援、道だけで解決できない課題については国への要請が必要。」と現状の課題を指摘しながら、道として適切な対応を行うよう求めた。
最後に和田副執行委員長より「労働基本権の代償措置としての人事院勧告制度について、昨年の配偶者にかかる扶養手当の見直しを見ても、民間調査に基づくものとなっていない。政府の恣意的なものになっており、心配、懸念をしている。地域における公務員の役割はもちろん住民自治を守ることにあるが、地域の購買力としての役割や地域の中小企業の給与ベースの底上げにつながっていることも認識しなければならない。また、自治体に働く臨時・非常勤等職員について、自治体によっては割合が50%を超えているところもある。同一賃金、同一価値労働の観点に立つのであれば、処遇の改善は速やかに行うとともに雇用面での改善を行う必要がある。」と基本賃金の引き上げや臨時・非常勤等職員の処遇改善、雇用と年金の接続などについて改めて指摘するとともに適切な助言を要請し交渉を終了した。