「自治労第89回定期大会」が、長崎県・長崎市で開かれています。

川本中央執行委員長のあいさつ全文をアップします。下記をご覧ください。

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はじめに、熊本県を中心とした地震により、被災されたすべての皆さんに、心よりお見舞いを申し上げる。そして、何よりも自ら被災しながらも、地域の復旧・復興に向けてご奮闘された、熊本県本部、単組、組合員の皆さんに心より敬意を表したい。

自治労として5月から7月にかけて、延べ3,000人を超える仲間の強力をいただき、熊本県内の被災自治体に対する、支援行動を展開した。

組合員を派遣いただいた、西日本の22県本部および社保労連の仲間の皆さん、ベースキャンプを本部とともに運営いただいた、熊本県本部、九州地連の仲間の皆さんに感謝申し上げる。また、全国の仲間の皆さんの協力により、約1億6,350万円の被災者支援「災害特別カンパ」を集約し、熊本県内の被災単組、熊本県本部、大分県本部などへ支援金として交付した。

被災自治体の組合員は、復旧・復興にむけた努力を今も懸命に続けているが、まだまだスタートラインに立ったばかりだ。交付税などの財政措置をはじめ、引き続きの支援、そして復旧・復興の中心的な役割を担う職員、組合員が働き続けられる環境整備が重要である。

自治労として、被災から5年が経過した、東日本大震災の復旧・復興とあわせて政府への予算要求、政策課題の実現、政策制度要求に取り組むとともに、職場の仲間のメンタルヘルス対策を強化していく。

人事院は8月8日、民間の賃上げ実態を踏まえ、月例給・一時金ともに3年連続で引き上げること、また、扶養手当の改正などを主とした勧告を行った。しかし、引き上げ原資を、俸給表だけではなく、一部を地方にはない本府省業務調整手当の引き上げに配分していることは、この間私たちが言い続けてきた、霞が関と地方の公務員の給与格差をさらに拡大させるものであると言わざるを得ない。

地方における闘い、人事委員会の勧告はこれからだ。公民較差の状況も見定めつつも、自治体における較差配分のあり方については、合意に向けた十分な協議が必要だ。人事委員会および自治体当局との交渉・協議に直ちに取り組むとともに対策の強化をお願いする。

一方で、国・地方の借金が1,000兆円を超え、社会保障の拡充策に充てる予定の消費税の引き上げは、さらに先送りされることとなった。勧告を受けて、政府は給与法の改正法案を秋の臨時国会に提出することとなるが、先送り分の財源をどう確保するのか、今後、税収の増加が大きく期待できない中で、経済の状況次第では、引き上げ勧告の値切りなど下方圧力が強まることも警戒しておかなければならない。

民間春闘の結果を踏まえ、公務労働者の賃上げは当然のことであり、政府・与野党に対し、労働基本権制約の代償機能たる人勧を尊重し、対応するよう、連合・公務労協に結集して取り組んでいく。

次に秋の臨時国会は、先に触れた給与法の改正に加え、TPP、補正予算案、憲法問題、労働法規制緩和など重要課題が目白押しだ。

政府がアベノミクスの「再加速」にむけ、8月2日に閣議決定した28兆円規模の経済対策は、公共事業や財政投融資の積極活用など、かつて乱発された「先祖返り的な施策」が中心となっている。低所得者に対する現金給付などの施策もあるが、参議院選挙前に強調された家計支援策は脇役となっているのが現状で、消費不振の主な要因である将来不安を解消する道筋は示されていない。 安倍政権が発足して3年半以上が経過したが、景気回復を実感している国民はどれだけいるのか。

この3年間の春闘で一定の賃上げは進んだものの、労働者の実質賃金の回復は、大きく進んでいない。安倍首相が、伊勢志摩サミットの後に、世界経済の停滞リスクという「新たな判断」を持ち出し、2014年総選挙の際に国民に約束した消費税の10%への引き上げを、さらに先送ることを表明したが、政府が言うように、アベノミクスが成果を上げているのであれば、先送る必要はなかったはずだ。自らの失敗を認めず、世界経済、サミットを先送りの理由にするやり方は極めて姑息であると言わざるを得ない。先送りによる財源不足を地方自治体に負担転稼するような事態にならないよう、地財の確保に取り組む必要がある。

安倍政権は、経済政策がうまくいかなくなる度に、「地方創生」「女性活躍推進」「一億総活躍社会」などを打ち出し、今回の経済対策では、この間、民進党や連合が主張してきた「働き方改革」に取り組むとしている。

「地方創生」「女性活躍推進」「一億総活躍社会」などは即座に成果のあがる課題ではないが、女性の就労問題、非正規労働者の拡大と正規・非正規の賃金格差などの問題は、長らく自民党政権の下で生じてきたみだということを忘れてはならない。

安倍政権はアベノミクスの下、有効求人倍率、失業率はかつてないほどに改善していると声高に主張しているが、内実は、団塊の世代以降の正規労働者が大量に労働市場から退出し、そこを学卒の新規採用者や、職を求めていた労働者が正規・非正規を問わず、埋めているためとも言われている。

安倍政権が言うところの働き方改革が、真に労働者にとっての、利益・権利の向上につながるかどうかは、これまでの派遣法改悪、残業代ゼロ法案などを見れば、疑問を抱かざるを得ないのは当然のことだ。

こうした課題は公務にも無関係ではなく、連合に結集して後退させない、そして前進をさせる取り組みを進めていかなければならない。いずれにしても、新たな改革ワードを次から次に打ち出し、アベノミクスが前に進んでいるかのような演出をしているが、あくまで演出に過ぎない。国民の期待感を維持し、不満の高まりを抑えようとしているが、世論調査などでも明らかなように、アベノミクスについて評価していない国民が多数を示しているのが現状だ。

原発再稼働も然りだ。政府は、国民の多数が原発の再稼働に関して否定的であることを知りながら、原子力規制委員会の新基準を傘にして、40年以上使用している原発の延長稼働をさせようとしている。福島第一原発事故の風化が進む中で、なし崩し的に再稼働を進め、既成事実化しようとしている。

沖縄の基地移設問題も同様。何度となく選挙で、沖縄県民の反対の意思が明確に示されているにもかかわらず、政府の粛々の姿勢に変化はなく、真摯に問題に向き合おうとしていない。

憲法学者らの違憲の指摘、多数の国民の反対があったにもかかわらず、与党が強行採決した安全保障関連法案も、本格的な施行を迎える。また、7月の参議院選挙において、衆参両院で「改憲勢力」が、衆参両院で憲法改正の国会発議に必要な3分2議席を上回る結果となったことを受け、改悪に向けた議論が加速していくことが危惧される。

安倍首相は、在任中の改憲に強い意欲を示しているが、本丸の9条からということではなく、「お試し改憲」的な動きが出てくる恐れもある。天皇の生前退位などの議論も出てきており、秋以降は衆参両院の憲法審査会の動向などを注視していく必要がある。いずれにしても、現行憲法の基本的理念である平和主義、国民主権、基本的人権の尊重とは逆行する政策転換を進めてきたのが安倍政権だということを十分念頭に置いた運動展開、世論形成を進めていくことが重要であり、平和フォーラム、戦争をさせない1000人委員会、立憲フォーラムなどとも連携し、自治労が中央・地方から、重層的な取り組みを進めていかなければならない。

民進党がこの間、言ってきたように、立憲主義を守っていくこと、そして、政策を転換し、持続可能な社会・経済としていくことが重要だ。しかし、安倍政権の政策に対する様々な国民の懸念に対し、民進党などが、十分に政策・メッセージを国民に伝えられてないことは大変残念だ。参議院選挙では、自民党による争点つぶし、争点隠しにより、税や社会保障などの政策課題、憲法のあり方などについて議論が掘り下げられることはなかった。

秋の臨時国会は、課題が山積みだが、民進党を中心とする野党には、与党との対抗軸を明確にした政策論議を期待したい。

また、9月15日には、民進党の代表選が行われ、岡田代表は退任される。残念ながら、参議院選挙では岡田代表が目標として掲げた「3分の2を取らせない」ことは、達成されなかったが、立憲主義否定・民意軽視の安倍・自民党による「一強政治」に歯止めをかけていくために努力し、1人区候補者の一本化を図るなど、「野党共闘」の動きがあった。1人区の勝敗は11勝21敗という結果だったが、民進党だけであれば、より厳しい結果に追い込まれていたことは明らかであり、積極的に評価すべき。新たに選出される代表には安倍一強政治にいかに立ち向かうのか、その姿を、次の闘いにむけての闘い方も示していただくことを強く期待しする。

大変厳しい情勢のなか、7月の参院選では、全国の組合員の団結のもと、18万4千票と6年前の得票を大きく上乗せし、全国比例・自治労組織内候補の江崎孝の再選を果たすことができた。また、選挙区では、組織内候補・伊波洋一さん(沖縄選挙区)、政策協力候補・宮沢ゆかさん(山梨選挙区)が激戦の中、議席を獲得することができた。自治労協力国会議員の皆さんとも連携し、政策の実現に取り組んでいく。

しかしながら、18万4千という得票数に関して、81万自治労として決して満足して良い数字ではない。結果の総括をそれぞれの段階で進めるとともに、改めて、組織と運動の点検・強化を図りながら、今回の成果を次の闘いにつなげていくことが何よりも重要だ。その中から、自治労としても、中道・リベラル勢力の拡大に引き続き、努力・尽力していきたい。

最後に、組織強化・拡大について、自治労組合員数は81万人と、組織拡大の取り組みを進めてはいるが、長期的な組合員の減少に歯止めが掛かっていないのが現実。昨年の大会で、「新規採用職員組織率の全国平均70%台への回復」、「臨時非常勤等の10万人組織化」の課題を運動方針として確立し、取り組みを進めてきた。新規採用者を獲得できなければ、組織が小さくなっていくのは当然のこと。新規採用者の組織化は、組織の存亡に関わる課題という認識が必要だ。

組合員意識調査は、組合活動に積極的に参加している組合員は仕事に対するモチベーションが高いという相関関係があることが分かっている。仕事のやる気に溢れた若年層にどう働きかけていくのかが課題。例えば、自治研活動では若年層に対しては、「UNDER35」と企画をして、まちづくり、地方自治の確立など、政策担当者を見据えた若手組合員の人材発掘に努めている。こうした様々な工夫が必要だ。また、自治体で働く臨時・非常勤等職員の仲間は、70万人を超え、公共サービス提供に欠かせない存在となっている。

処遇改善とともに、組織化・拡大の取り組みが必要なことは言うまでもない。そして、自治労の組合員の4割を占める、女性がしっかりと参画できる組合づくりを進めていくことが重要。この他にも課題は様々あるが、こうした取り組みを重層的に展開し、組合員、現場のニーズに対応した組合づくりに努力することが、次なる自治労運動の力につながっていく。

労働組合の存在感を発揮するには、職場の多くの仲間を組織化していくことが重要だ。地道ではあるが、組織点検・強化と組織拡大に取り組んだ結果は選挙とと同様、組織の力となって、数となってはね返ってくるもの。単組、県本部、本部が一体となって、諸課題の解決、そして克服にむけて取り組んでいくしかない。

以上、多くの課題が山積する中、私もそれぞれの課題に対して全力で取り組んでいく決意を申し上げるとともに、明日までの2日間の大会において、代議員の皆さんの真摯な議論をお願いする。