自治労本部は6月2日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2016(いわゆる「骨太方針」)」に対する福島書記長談話を発表しました。下記に関係資料を含め掲載しています。ぜひご覧ください。
1. 6月2日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2016」を閣議決定した。前日には、安倍総理が消費税率の引き上げ時期を2019年10月に再延期することを表明したところであり、「骨太の方針2016」の中で示されている最低賃金の引き上げ、非正規労働者に対する「同一労働同一賃金」や保育・介護関係労働者の待遇改善、奨学金制度の拡充などを具体化するための道筋と財源は、まったく不透明となった。消費増税の再延期と「骨太の方針2016」の閣議決定を相次いで行うことで、自らの経済失政そのものを世界経済のリスクにすり替え、従来型の消費刺激策や総花的項目を並べ立てる手法は、参議院選挙を前にした争点隠しである。
2. 社会保障分野では、「成長と分配の好循環の実現」として、「結婚・出産・子育ての希望、働く希望の実現」をめざすとし、子ども・子育て支援、子どもの貧困対策、介護離職対策、障害者の活躍支援などについても取り組む姿勢を見せている。しかし、そのための財源として予定されていた消費税率の引き上げが先送りされたことにより、社会保障制度の持続的安定と充実強化は、極めて不安定なものとなった。今すべきことは、社会保障と税の一体改革の原点に立ち帰り、社会保障の充実・安定化とそのための恒久的財源の確保のための方策を明示することである。
3. 一方で、「経済・財政再生計画」において目標とされてきた「600兆円経済の実現と2020年度の財政健全化の達成」は、変更されなかった。これは、地方に対して、これまで以上に歳出削減圧力が高まることが危惧されるものである。現に、窓口業務の民間委託等の加速、地方交付税算定に係る「トップランナー方式」の早期拡大などが記載され、さらに、「見える化」の徹底・深化・拡大として、国庫支出金に対する「パフォーマンス指標」の設定、医療・介護分野における給付実態や地域差等の提示、自治体決算での住民一人当たりコストの経年・類似団体比較などの項目が挙げられている。この間、自治労は、予算要求や国会審議等を通じて、人口・面積や事業規模の差異等、各自治体が置かれた環境は大きく異なるものであり、一律の数値目標管理による民間委託の導入推進や交付税算定への反映には強く反対してきた。しかし、政府は、それを強化するばかりか、「改革の成否は、自治体の現場等へ諸改革をどこまで浸透・拡大させることができるかにかかっている」として、旧来の上意下達による政策強制の復活を目論み、地方分権・自治体主権を否定するものであり、強く批判する。
4. 「消費増税の再延期は『新しい判断』に基づくもの」「延期期間中にアベノミクスをもう一段加速する」と安倍総理は強調するが、この間の景気と経済成長頼みの財源確保とトリクルダウン型の発想による経済政策では、むしろ格差を拡大し、社会保障の大幅な給付削減と自己負担増、自治体財政の不安定化をもたらす。
5. 自治労は、安倍内閣・自公政権による民主主義の危機的状況に歯止めをかけ、生活者・働く者に軸足をおく政策への転換と「中道」「リベラル」の政治勢力の拡大をはかるため、参議院選挙に総力を結集してたたかう。
2016年6月7日
全日本自治団体労働組合
書記長 福島 嘉人