「地域医療の充実と、医療・介護労働者の労働環境改善についての要請書」の提出について、自治労本部から情報がありました。

詳細については下記をご覧ください。

 

【写真】0328要請行動

 

2016年3月28日、自治労は、厚生労働省唐澤保険局長へ「地域医療の充実と、医療・介護労働者の労働環境改善についての要請書」の提出を行った。

※要請書はコチラ → 地域医療の充実と、医療・介護労働者の労働環境改善についての要請書

 自治労本部からは、荒金副中央執行委員長、石上総合政治政策局長、白井衛生医療局長、また、新潟県本部から榎本書記次長、新潟県厚生連労働組合和田副執行委員長、原副執行委員長が参加した。

 要求書提出にあたり、白井事務局長から①中山間・へき地、農村地域での医療を担う病院に対して、安定して医療提供が行えるような医師派遣制度や、中山間・へき地医療等を担った医師のキャリアアップ制度などを講じること②「5局長通知」「6局長通知」の周知徹底と、医療従事者の労働条件改善を強力に指導すること③2016年度診療報酬改定において変更された、『看護師の月平均夜勤72時間要件」や「夜間看護体制の充実に関する評価」についての検証と労働負担・離職があった場合には是正すること④「かかりつけ薬剤師・薬局」推進のための薬剤師確保に向けた対策を講じること⑤介護サービス充実と、医療・介護連携を実現のための介護職員の処遇改善と人材確保を行うことについて要請を行った。

 さらに、「特に、中山間・へき地、二次医療圏や、二次医療圏が広域に渡る地方の医師確保についてはご尽いただきたい。地方において2025年を前に高齢化がピークを迎え人口減少に転じているが、人口規模に比例して単純に医療提供量を少なくして良いというわけでなく、どこに住んでいても同じ水準の医療が提供されなくてはならない。病院の衰退は地方の衰退につながり、地方の人口が減少することで地方から都市部へ移り住む人口が減少し、いずれは都市の衰退、日本全体の衰退につながると考える。全国の自治労の仲間からも、国に地方の現状を届けるように強く言われている。」と述べた。

 続いて、和田新潟厚生連労組副委員長は、「厚生連病院等公立・公的病院は都市だけではなく中山間・へき地、農村地域も担っている。特に、地方では高齢化が著しく、人口が少なくても医療需要は高く、そこに住民がいる限り、医療を失くすわけにはいかない。しかし、医師・医療従事者不足により病院の安定的経営が厳しくなっており、これを解決することが喫緊の課題である。」と述べた。

 これに対し、唐澤保険局長は、「2016年度診療報酬改定においては、厚生労働省も全力を挙げ本体部分をプラス改定とした。今回の医療経済実態調査で、多くの公立病院、厚生連、日赤、済生会等の公的病院等医療法人以外の病院について赤字に落ちたという実態が示された。まず、ここを医業収支改善しないと地域の救急医療が保てなくなる。そのため、今改定において、様々な改定項目があった中、特に『救急医療』に重点的に点数をつけ、厚生連病院、日赤病院等への救急医療加算を意識して改定した。

 また、かかりつけ医、かかりつけ薬剤師の推進等を重点課題とし、様々な職種が地域の中で専門性を発揮し、力を十分にあわせてチーム医療ができるよう施策を行った。地域の中核病院として、そのような診療報酬改定の主旨を理解して、地域医療を担っていただきたい。

 『看護師の月平均夜勤72時間要件』については、上限の変更をしなかったことで、夜勤時間の負担増に直結するものではないと考えているが、この導入に伴う様々な問題については、情報収集し、解決していきたい。

 看護職員の労働環境を確保し、女性の活躍を推進し、働きやすい職場を作り、ワーク・ライフ・バランスを守ることは当然であるが、地方の実態として少し工夫しなければ病院経営が困難な場合がある。看護協会等関係者と十分に議論を重ねながら解決に向けて取り組んで行きたい。この課題解決に向けては診療報酬における措置だけでは不十分であると考えており、合わせて根本的な看護師不足対策に努めてまいりたい。

 地域包括ケアシステムについては、医療・介護の連携が課題である。都道府県が二次医療圏単位で医療計画を作り、市町村が介護計画を作り、二次医療圏で計画を作る場合、各市町村の意見を聞き計画が繋がることになっているが、それだけで自然に医療・介護の接続が行われているとは言えない。自治労からもこの課題について課題提起をしていただくようにお願いしたい。

 特に、医療分野においては、急性期病院の医師・看護師等にも在宅、介護に対しても関心を持っていただくように推進している。しかし、介護職から医療職に対してアプローチすることが難しいことが課題だと感じている。これについて、自治労でもバックアップし、医療・介護それぞれの視点から提案や情報を発信するなど、互いの職の実情について理解を深め連携を進めていただきたい。

 地域の中核病院である厚生連病院等の急性期の病院では『治療をして直す』という視点が強いが、在宅医療・介護における『生活の快適さ』へも視野を広げ、医療から介護につなげる地域包括ケアシステムについても考えていただきたい。」と回答した。

 さらに、新潟県厚生連労組原副委員長は「新潟県佐渡市では、現在6万人弱の島民のうち高齢化率が40%程であり、2025年問題が既に佐渡では起こっている。へき地で共通する課題ではあるが看護師の離職問題が深刻で、特に、妊娠・出産・育児を機に30~40代の中堅看護師の離職が増え、年齢構成も課題解決と人数確保が急務である。

 離島の医療を担う佐渡総合病院は、二次救急を担っているが、実際は、準三次救急も担っており、限られた人員で慢性期患者から急性期・循環器などで幅広い患者に対応している状態である。地域の中心となる病院として、新潟県本土に負けない医療を提供したいと考えているがが、職員の長期実習を行うためには人員が不足しており、病院全体で職員のキャリアアップが十分に図れていない。キャリアアップにより『やりがい』を得て、離職防止につながると考える。」と現場課題を述べた。

 これに対し唐澤保険局長は、「地域に出て特定行為等看護師の在宅医療を推進する観点からも、地域全体で医療機関・介護施設が協力して住民の健康を支える仕組みが必要である。

 また、他の職種に比べ男性の割合が少なく、女性が多い看護職場では、子育ての期間はフルタイムで働くのが難しいが、夜勤を免除されるわけではない等課題が多い。厚生労働省としても、医療職のキャリアアップをはかり離職防止につなげることが重要であると考える。」と述べた、

 最後に、荒金副委員長が「自治労として、高齢化・人口減少社会における地域医療を守るため、引き続き現場から問題提起をさせていただきたい。また、同時に、地域包括ケアシステム推進に向け、医療・介護一体となった取り組みを推進していく。今後とも、医療現場の労働環境改善に向けてご協力いただきたい」と述べ、要請を終了した。