自治労北海道本部は2月23日に提出した春闘要求書の回答を受け、3月8日15時から2016春闘期の課題について道市町村課(対応市町村課長)と交渉を実施した。

冒頭、三浦書記長は春闘情勢に触れたうえで、「政府は給与制度の総合的見直しを強要し、地方経済にさらに冷や水を浴びせ、政策が相矛盾する」と遺憾の意を表明し「雇用制度の安定と積極的な賃上げで、地方の経済の活性化をはかることを真剣に考えなければならない」とし、重点要求に対する回答の説明を求めた。

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道市町村課は「要求事項については、基本的には、法令や国の通知等の趣旨を踏まえ、各自治体において判断の上、対応すべきものと考える。道としては、今後とも市町村に対する情報提供や必要に応じた助言を行って参りたい」との回答にとどまり、詳細が不明確のため、三浦賃金労働部長が重点項目について指摘した。

 

1.賃金要求に関する基本認識について

賃金要求については春闘アンケートの結果を基にした「ここ数年の傾向として組合員が生活苦を訴えることがほぼ固定化された中でまとめた要求事項」であることを説明したうえで、自治体職員の生活実態や賃金の引上げ要求について、基本的な認識を質した。

道市町村課は「賃金引き上げ要求については、労働者の権利であると理解しているが、公務員の場合は、社会一般の情勢に適応した水準を確保するため、労働基本権の制約の代償措置として給与勧告制度が設けられていることから、職員の給与の決定については、この給与勧告や地方公務員法に規定する給与決定の原則などを踏まえて、各自治体で判断すべきものと考えている」との認識を示したため、この間の財政事情による勧告によらない給与の削減や地域民間準拠の賃金水準の抑制政策により、自治体職員の生活は非常に厳しい実態になっていることを認識したうえでの対応を求めた。

2.今年の特別交付税などへの対応について

これまで減額の対象となっていない自宅所有者の住居手当について現時点での情報を明らかにするよう求めたところ道市町村課は「今年度の特別交付税算定上の調整対象とはならない予定であると聞いている」と回答したため自治体で判断した内容については、基本的に尊重することを強く申し入れた。

 

3.自治体のラス指数等の問題点について

昨年末に公表された2015年4月現在のラスパイレス指数について全国平均(99.0)と道内平均(97.3)とで約2ポイント程度差がある要因について道市町村課としての見解を求めたところ「道内の景気回復が遅れている中、平成27年4月現在で、給料等の独自削減を行っている道内市町村が全体の16%にあたる28市町村(10市18町村)あることも一つの要因である」とし、ラスパイレス指数については「国と地方の給与水準を比較する際の基本的な指標」との認識を示し「自治体の給与水準については、給与勧告や地方公務員法に規定する給与決定の原則などを踏まえ、各自治体において判断すべきものであることから、今後とも市町村が自ら判断する上で必要とする様々な情報について、提供して参る」との考え方を示した。

これに対し道本部は「大きな賃金制度変更・過度な人員削減で(賃金制度を)専門的に研究する職員を配置できない等の事情がある。単にわたり問題を指摘するのではなく、自治体の立場に立って、どうしたら一定の賃金水準の確保が可能となるか、技術的な指導を行うこと」も検討するよう求めた。

また、ラスパイレス指数そのものの問題点について地方六団体から国公のみに措置されている広域異動手当や本府省業務調整手当を含めて比較すべきとの議論がされていることに触れ、道としての認識を示すよう求めたのに対し、道市町村課は「国と地方の給与水準を比較する際の基本的な指標として、広く一般的に定着しているもの」との認識を示したものの「比較対象とする職員の範囲が対等でないことや、給料以外の諸手当が含まれていないことなどの課題も有している」との見解を示した。

道本部はラスパイレス指数を理由とした給与削減は断じて認めない姿勢を示し、給与水準の低下により人員確保にも影響が生じていることや職員の士気低下、業務量の増加にもつながり、行政運営への影響を及ぼすことを十分認識するよう求め、機会がある毎に国(総務省)に対して働きかけることを強く求めた。

4.地方公務員法改正に係る課題について

 人事評価制度に関する道内自治体の進捗状況と今後の各自治体への調査予定を示すよう求めたところ「総務省が1月1日現在で行った調査によると、指定都市を除く全国の市区町村において、人事評価制度を導入している団体は、1,721団体中933団体、54.2%が導入済となっているが、道内においては178団体中31団体、17.4%であり、導入が進んでいない状況にある。道内市町村の導入への取り組みは遅れているものの、全ての市町村において4月1日までに導入する予定と報告を受けている」とし、今後の調査については必要と考えているが具体的には未定であることを示した。

道本部は「制度設計に係る十分な検討もなく、拙速な導入となれば自治体職場に混乱を来し、住民サービスへの影響も懸念する」と指摘し「評価結果の活用について、自治体に対し機械的に処遇への反映させるよう助言を行っていることは極めて遺憾である」「①評価結果の活用に関しては自治体の判断により決定すること、②自治体に対し評価結果の活用について『給与や勤勉手当、昇給、昇格などの処遇へ反映をさせるべきである』等、誤解を招くような助言は行わないこと」を強く求めるとともに、管理職員に優先して導入するなど自治体の判断で段階的に導入することへの道市町村課としての見解を求めた。

道市町村課は改正地公法の人事評価の定義に触れたうえで「評価結果の活用については、これらの改正法の趣旨を踏まえ、各自治体で判断すべきもの」との考え方を示すとともに「施行時期までに、一般職の全職員を対象としなければならないものと認識しており、今後も市町村に対して引き続き必要な情報提供や助言等を行って参りたい」との考えを示したことから十分な話し合いの元で取り組みが進むように適切な助言を行うことを要請した。

5.雇用と年金の接続について

公務における特殊性を踏まえ、定年延長をすべきとのこの間の要求を踏まえ、地方から積極的に働きかけを行うことを求めたうえで雇用と年金の接続に関する道としての考え方を示すよう求めたところ道市町村課は「地方公共団体の雇用と年金の接続については、閣議決定や国の要請に基づき、当面の間は再任用によることとされており、道としては、市町村における再任用制度が円滑に運用されるよう、引き続き、国の動向等を踏まえながら情報提供や助言等に努めて参りたい」との認識を示した。さらに道本部は多くの自治体で再任用職員が1・2級で任用されている実態を踏まえ、定年前の生活水準を維持するために、最低でも4級での任用、生活関連手当(特に寒冷地手当)の支給も含めた処遇改善にむけ、各自治体に働きかけるよう求めた。

 

6.その他の課題について、

女性活躍推進法に基づく特定事業主行動計画や、遅れている男女平等参画に関する条例・計画の制定、次世代育成支援対策推進法に基づく特定事業主行動計画の策定の課題、労働安全衛生委員会の設置や運営状況の動向、セクハラ・パワハラなどへの対応、メンタルヘルス対策について指摘し、道としての見解を示すことと各自治体に対する助言などの取り組みを要請したところ「女性活躍推進法に基づく特定事業主行動計画の策定等については、法令や国の通知の趣旨を踏まえ、各自治体において適切に対応すべきもの。労働安全衛生法に基づく職場環境の整備促進については、労働安全衛生管理体制の早期確立のため、安全衛生委員会の設置や職員の健康管理体制の充実について、引き続き助言して参る。セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントについては、各団体の実状に応じた実効性のある対応策が講じられるよう助言を行うとともに、ストレスチェック制度が義務化されたメンタルヘルス対策についても、市町村職員を対象とした「メンタルヘルスマネジメント実践研修会」を引き続き開催するなど、職員の健康管理体制の充実などについて助言して参る」と回答した。

道本部は各自治体で職員構成がいびつな状況や世代間のギャップの課題にも触れ解決策の提示など丁寧な対応と引き続き自治労道本部と情報交換を行いながら対応していくことを求めた。

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最後に三浦書記長から「自治体職員は少ない人員・増大する行政需要という大変な状況の中で働いている。その奮闘に応えるためには賃上げが必要。また、臨時・非常勤等職員も職場になくてはならない状況にあり、正規同様賃上げが必要」とし、「道としてしっかりと役割を果たしてほしい。それが人員確保にも資する」と指摘した。また、改正地公法の課題については春闘アンケートで人事評価制度の内容について多くの職員が理解していない実態に触れ「4月からの導入を急ぐことで職場が混乱し、行政サービスに影響するのであれば本末転倒」と指摘するとともに適切な助言を改めて要請し交渉を終了した。