自治労北海道本部は11月9日に、2015秋期闘争の推進にむけ北海道市町村課交渉を実施した。
冒頭、三浦書記長が2015人事院勧告の問題点を指摘したうえで、国会情勢を受けた総務省の対応について「地方公務員法の主旨やこの間の労使による給与決定の経過を無視するもの」と批判し、要求事項総体に関する基本的な考え方を示すよう求めた。
道市町村課は「要求事項については、基本的には、法令や国の通知等の趣旨を踏まえ、各自治体において判断し、対応すべきものだと考えるが、道としては、今後とも情報提供や必要に応じた助言を行って参りたいと考えている」と回答した。
詳細が不明確で不満な回答のため、三浦賃金労働部長から、以下のとおり具体的に指摘を行った。
1.給与決定の基本的な考え方について
これまでの各自治体の実態や運用の経過を踏まえて、労使で十分に話し合って決定すべきであるとの指摘に対し「地方公務員の給与については『均衡の原則』に基づき、生計費や国・他の地方公共団体、民間の給与などを考慮して定められるべきもの。実際に決定していく過程においては、職員団体とよく協議をし、双方が納得して進めることが重要」との認識を示したため、それぞれの自治体での労使協議での判断とその結果について尊重することを求めた。
2.地方公務員の給与水準に係る課題について
消費税率引き上げなど、可処分所得がマイナスとなり働くものの生活実態は厳しいことや、依然として財政事情が厳しく給与カットを続けている自治体も残されており、こうした自治体においても、増額改定がなされるべく助言するよう求めたのに対し、道は「職員の給与の決定に当たっては、地方公務員法に規定する給与決定の原則や人事院勧告などを踏まえて、各自治体で判断すべきもの」との見解を示したため、給与のプラス改定に対し職員は大きな期待を寄せていることをしっかりと受け止め対応することと、その一方で国会情勢もあり、各自治体の判断が年明けにずれ込むことも想定されるため、差額の支給事務や年末調整事務など様々な課題もあるため、適切な対応・助言を求めた。
3.2015給与改定に係る課題について
勧告準拠ではその較差の多くが地域手当に配分されているため、較差が解消できないことから北海道全体の公務員給与が引き下がることとなり、地方交付税の引き下げと北海道経済へ多大な影響を及ぼす課題であることを指摘し北海道としての人事院勧告に対する基本的な考え方を示すよう求めたのに対し「月額分については地域手当の引き上げの割合が大きいのは、ご指摘のとおり」とし、さらに較差解消の手法は自主的判断が必要であること、改定時期についての見解を求めたところ「国の通知の趣旨などを踏まえ、それぞれの自治体において自主的に判断されるべきもの」との考え方を示したため、各地方公共団体の自主的決定を尊重すること、各地方公共団体へ通知・助言等する場合は「圧力・強制」ととられかねない指導・介入は行わないことを改めて求めた。
ラスパイレス比較を行う際に地域手当や国家公務員のみに措置されている広域異動手当などを含めて、比較するような見直しが行わなければ、地公の給与水準ばかりが高く示され、理不尽な攻撃を受けかねないことを指摘し、比較方法の見直しについて道としての対応を求めたのに対し、道は「国と地方の給与比較のあり方について、地方の意見を踏まえ、平成26年4月1日現在から、各団体の地域手当支給率を加味した「地域手当補正後ラスパイレス指数」や「ラスパイレス指数に指定職を含めた場合の試算値」を算出し公表している。また、給与に占める給料と手当の状況など、ラスパイレス指数以外の数値を公表しているところ」と現状の公表方法について説明し「公表に当たっては、住民に対する誤解を与えることのないよう適正かつ、より分かりやすい公表方法とすべきもの」との考えを示した。また、今年度の給与実態調査については内容確認・精査中であることと、公表時期については未定であることが報告された。
5.地公法改正に係る諸課題について
人事評価制度に関して道市町村課で押さえている北海道内の導入状況を明らかにするようもとめたところ「札幌市を除く道内178市町村のうち、人事評価制度を一部でも導入しているのは全体の17%にあたる30団体であり、全体の83%に当たる148団体が未導入となっている」と現状を示した。
そのうえで、昇給・勤勉手当の反映への考え方や、「制度の導入」そのものが目的化しかねないこと、スケジュールありきではなく現場判断を尊重することを指摘・要請したのに対し「人事評価制度の導入に関しては、それぞれの市町村において、職員に対して十分な制度周知を行った上で、制度の構築を主体的に進めていただくべきものと考えており、道としても、市町村に対する情報提供や必要な助言に努めていきたいと考えている。また、等級別基準職務表の条例化等についても、地方公務員法の改正の趣旨を踏まえ、主体的に決定すべきもの」との道としての考え方を示した。
6.臨時・非常勤等職員の処遇改善にむけて
昨年、多くの単組で臨時・非常勤等職員の処遇改善がされたが、正規職員は遡及改定がある一方で臨時・非常勤等職員に遡及改定がされていない状況から、4月遡及改定にこだわった取り組みを全道各単組が展開していることに触れたうえで、過去の裁判例から任用根拠にかかわりなく職務内容・勤務実態などから見て常勤的な臨時・非常勤等職員については、手当支給ができること等を各自治体に周知・徹底することを求めたのに対し「市町村の臨時職員等については、平成26年7月に出された総務省通知を踏まえ、各市町村に対し必要な助言や情報提供を行ってきたところであり、今後とも適切な助言等に努めてまいりたい」との考えを示した。
7.労働安全衛生体制の確立にむけて
この1年間の各自治体の進捗状況と具体的な成果を示すよう求めたのに対し、「労働安全衛生法に基づく安全・衛生委員会の設置状況については、本年3月末現在の調査によると、設置すべきとされている295事業場のうち88.5%に当たる261カ所の事業場で設置されており、昨年度と比較して、新たな事業場が増えたことにより、2.6ポイントの減となっている」と現状を報告し「安全・衛生委員会は、メンタルヘルス対策に係る相談体制の充実や、公務災害の原因把握と再発防止対策を図る上においても、職場の労働安全衛生対策に重要な役割を果たしていると考えており、法律等に基づき全事業場において、所要の委員会が
設置されるよう、今後とも助言してまいりたい」という基本姿勢を示し道職員対象のメンタルヘルス研修への参加や、相談窓口の設置、道と地方公務員安全推進協会との共催によるセミナーの実施など、道としての取り組みが示されたため、引き続きの情報交換と改正労働安全衛生法によるストレスチェック制度の確実な実施と労働安全衛生委員会の開催にむけ、道市町村課として各地方公共団体へ情報提供することを要請した。
最後に三浦書記長が総括的に各課題について指摘したうえで「各自治体の自主的決定を尊重する立場で対応すること」を強く求め、交渉を終了した。