2015年9月4日、札幌市・自治労会館で開催し、全道の組合員、自治体議員など、約100人が参加した。

冒頭、難波道本部副委員長は「増田レポート以降、安倍政権は『地方創生』を重要政策に掲げたが、国のトップダウンではなく地域住民とともに持続可能なビジョンを描く、消滅でも創生でもない地域づくり、地域の希望を見つけることが重要」と、述べた。

第1部では講演「地域に希望あり-まち・ひと・仕事を創る」を大江正章コモンズ代表より受けた。大江代表は「現代の田園回帰志向は一過性のブームではなく、特に若い世代に顕著になっている。事実、非農家出身の新規就農者はこの30年で50倍近く増えている」と、現状を分析、その中で特にI・Uターンが増加している島根県の邑南町などの事例を紹介した。更に増田レポートの実態については「若年女性の半減が市町村の消滅というのは乱暴であり、人口1万人以下が消滅、というのは科学的根拠に欠けている。事実、レポートで消滅可能性都市が8割以上とされた島根県では、特に山間部や離島で近年、人口が増加に転じている」と、切り捨てた上で「増田レポートとは時代遅れの経済成長優先政策とグローバリゼーションへの対応のための体制刷新である」と結論した。

DSC_7069

 

 

 

 

 

 

 

○大江 正章 コモンズ代表

1980年 早稲田大学政経学部政治学科卒業。

1980~1995年 学陽書房編集部勤務。地方自治関連・社会問題の書籍を編集。

1996年 コモンズ 創設

・アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表、

・全国有機農業推進協議会理事、

・日本有機農業学会理事、

主要関心分野は、地域・環境・農・自治など。

主著:「地域に希望あり―まち・人・仕事を創る」(岩波新書)、「地域の力―食・農・まちづくり」(岩波新書)、「農業という仕事―食と環境を守る」(岩波ジュニア新書)、「新しい公共と自治の現場」(共著、コモンズ)ほか多数。

 

 

第2部は大江代表と佐藤津別町長、土屋発寒北商店街振興組合理事長に参加頂き、ディスカッションを行った。

佐藤町長は、日本初農林水産省JAS認証オーガニック牛乳、筑波大学や千葉県船橋市との連携事業、木質バイオマスコージェネレーション施設など、津別町の取り組みを解説し、「まちづくりは夢を追うのではなく、input(外部のものを取り込むこと)をしっかりやることが大事」と述べた。

発寒北商店街(通称:ハツキタ商店街)は札幌市西区の商店街でシャッター街化しつつあったが、振興組合が「くらしの安心窓口」やディサービス施設「にこぴあ」を建設するなど、「さっぽろで一番住みやすいまちへ」を標語に町おこしに取り組み、NHKでも特集されるなど注目されている。土屋理事長はハツキタ商店街の取り組みについて「生活している人が良い、便利だと思うところには人が集まる」と、述べた。

その後、大江代表をコーディネーターに会場全体で議論し、参加者からも津別町木質バイオマスの仕組みやハツキタ商店街「くらしの安心窓口」のシステムについてなど、時間ぎりぎりまで質問が出された。

最後に難波副委員長は「自治体の職員が自分の町を良いと思えているのか?自分の地域を知ることが大事。先進事例に学ぶことも大事だが、マニュアルでは自分の地域は良くならない」とセミナーを総括した。

DSC_7073

 

 

 

 

 

 

 

○佐藤 多一 津別町長

1973年 京都産業大学外国語学部卒業。

1974年 津別町役場勤務、1987年から自治労津別町役場職員組合執行委員長を4年務めた後、農業委員会事務局長、企画財政課長などを歴任。

2006年12月 津別町長選挙に初当選し、現在3期目。

津別町職労組合員の頃から有志によるまちおこしの取り組みを進め、1998年にはオホーツク寒気団とともに「オホーツク車いすガイドマップ」発刊に携わる。また、1998年阪神淡路大震災の神戸っ子134人を受け入れた。

DSC_7079

 

 

 

 

 

 

 

○土屋 日出男 発寒北商店街振興組合理事長

通称“ハツキタ商店街”理事長。最盛期に107を数えた加盟店が2011年には71店に減少した商店街の活性化に尽力。「さっぽろで一番住みやすいまちへ」を標語に、振興組合での「くらしの安心窓口」開設や、ディサービス施設「にこぴあ」を建設するなど、地域とともに歩む商店街を模索。2014年には加盟店が87店にまで増えた。本年6月26日にはNHK北海道クローズアップでも特集された。