自治労北海道本部は、北海学園大学と連携し公務員をめざす学生を対象に職場の現状や課題を実際に地方自治体に勤務する組合員をはじめ、役員や関係者など道本部から講師を派遣し、労働組合の意義を含めた「北海学園大学社会科学特別講義」を実施している。この講義は、4月10にから7月17日までの毎週金曜日、計15回にわたって一部(全日過程)、二部(夜間過程)の学生に90分間の講義を行っています。すでに、このホームページでも厚谷夕張市議長、藤盛副委員長などの講義を報告してきた。今回は、第11回から第14回までの講義の報告をお知らせします。

image (4)第11回目は「自治体の医療現場」と題して、衛生医療評議会居橋事務局長を講師に行った。居橋さんは、講義に参加した学生に目標を①社会保障制度における自分たちの役割を知る、②医療制度改革への考えを持つ、③将来にむけて行動することを目標として、自分だけではなく、友達や知人の家族環境を自分に置き換える視点を持って講義を聴いて欲しい。とした上で、現在の医療制度改革についての問題点や課題、在宅医療がもたらす社会像、医療提供体制の変化とその対応、そして自治労衛生医療評議会の取り組みを話され、一人一人ができることを考えようと投げかけた。学生からは「家族が看護師、広域対応がありやめたいと聞いている」「放射線技師などの専門職は多くないのか?その状況は?」などの意見や質問も寄せられた。居橋さんは、「状況は厳しいが、皆さんにも絶対に関係してくる。状況を受け止め、考えて欲しい」と話された。

第12回目は「自治体と労働組合」と題して、自治労北海道本部山上執行委員長が教壇に立ちました。山上委員長は、「労働組合は産業革image (1)命時のイギリスから始まり、助け合いが原点」「日本は明治維新後の近代的工業の発展がはじまり、労働争議の発生と政府や経営者の弾圧が激しかった」「戦争ともに労働組合は解散したが、戦後、次々と結成、独占資本とのたたかいが続いた」などと労働組合の歴史を丁寧にわかりやすく説明したのち、労働組合の役割、そして自治労運動について「労働基本権が、戦後の混乱時image (2)にGHQ指令により付与されず、現在に至っている。公務員労働者に基本権がないのは日本だけ」「基本権の代償として人事院があるが、その機能も果たされていない」など公務労働における権利の違い、さらには、ストを指導して行政処分を受けてきた自らの経験にも触れられ、最後に最低賃金の署名を学生にお願いして講義を終了した。

その後、藤盛副委員長、難波副委員長も交えて、川村教授や学生からの質問に答える形式でのディスカッションを行った。質問は「自治体労働者がどの様な状況になるからこそ労働組合が必要なのか」「組合が大事だと説明するには・・・」「署名など“関わりたくない”との気持ちが先に来るが、処分を受けてまで活動する意義は」「労働組合がなぜ、選挙闘争を行うのか」などの意見や質問が寄せられ、委員長、両副委員長からそれぞれ「上司に意見するために労働組合は必要、一人ではできないことも労働組合ならできる」「様々な活動、運動を行ってきているが、いずれも社会を良くしようという気持ちから」「政治は無関心でいられても、無関係ではないことを覚えて欲しい」などと丁寧に答え、学生の感想では、「イメージと違った」「職場において労働組合は必要だと感じた」「地方公務員をめざしている。受かればぜひ自治労に入りたい」などの感想も寄せられた。

第13回目は、自治体における官製ワーキングプアを題材に、川村教授が講義image (3)を行った。川村教授が研究している労働問題や各地域での取材や現状からの課題について、「労働組合にも弱点、克服するべき課題がある。それは正規職員を中心に組織されていること。もっとも組織を必要としている非正規を置き去りにしている」と指摘され、自治体非正規おける任用の課題や委託事業で働く労働者の現状と課題から公契約条例についてなどに触れ、学生がそれぞれの課題にグループ討議を行い、課題克服にむけての取り組みなどを発表した。

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学生からは「経費削減、正規と非正規の格差が問題、正規から非正規へ人件費の配分を見直しては」や「自治体が発注者としての責任をどう考えるかによって対応は代わるのでは」、「そもそも労働組合に入れる環境にあるのか?スト権が公務員にないとはなされていた。一方で非正規の賃金がカットされても困るのではないか」など、多くの意見が寄せられた。

第14回目は、北海学園大学のOGでもあり、自治体の非正規職員を経験し、参議院議員でもある「あいはら参議」を講師に、官製ワークキングプアについて考え合う講義を行った。

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あいはら参議は、北海学園大学のOGとして「46年前に学園大学を卒業した。当時は路面電車が学園大近くまで延びていた。当時学費の値上げ提案があり、学費闘争があった。」など卒業生として当時の状況に触れ、現在との変化など学生に伝え、非常勤職員だった頃に「労働組合があり加入できた。様々な闘争を行い権利向上を勝ち取ってきた。」など、image (4)非正規だった頃の戦いにも触れた。また、立候補の至る経過にも触れ「皆さんもそうした機会があるかも知れない。ぜひ政治に興味を持っていただきたい」と18歳に選挙がなったことにも触れながら述べられ、さらには、現在の安保法政の国会審議に触れ「数の力で押し通そうとする政治、国民の多くが反対であるにもかかわらず衆議院で決めて、参議院に回しても60日で否決扱いになり、衆議院に戻され、3分の2で成立することを狙っている」など、国民を無視した国会審議に苦言を呈した。

学生からは、「国会議員に女性が少ない。この問題をどの様に考え、対応するか」、「国会議員にも定年制を設けることも必要では、また、クォータ制を性別だけではなく若者などの年齢にも適用させるなどを考えてはどうか」など、踏み込んだ質問や意見も寄せられた。また、現在の国会審議から、「札幌でも集会やデモ行進など行われているが、東京での取り組みはどうなっているか」の問いに「渋谷では、学生が前面に出た取り組みが展開されている。皆さんもしっかりと考えて行動して欲しい」と若者の力が今の政治には必要、国民全体がノーを突きつけることが重要なことにも触れられた。最後にあいはら参議から学生へのメッセージとして、「大いに悩んで欲しいし、迷って欲しい。一人で生きていくことは難しい、多様な関係性をつくり、様々な道を探って行くことが必要」と学生にエールを送った。

この講義は、今週の7月17日が最後の講義となる。最後は総括の意味も含めて学生と道本部執行委員複数名でのディスカッションを企画している。少しでも今後の選択肢になる講義を行っていきたい。