自治労本部は6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015(いわゆる「骨太の方針」)」に関する書記長談話を発表しました。
なお、この情報は2015自治労北海道情報No.052として各単組に発送しております。
1. 政府は6月30日、「経済財政運営と改革の基本方針2015(いわゆる「骨太の方針」)」を閣議決定した。2020年度の財政健全化目標の確実な達成をはかるとして、経済と財政双方の一体的な再生をめざす「経済・財政再生計画」を新たに盛り込んだ。具体的には、2016年度から2018年度までを集中改革期間と位置づけ、プライマリーバランスの対GDP比▲1%程度と設定し、中間地点の2018年度において進捗状況を評価することとした。
2. 焦点となった政府の一般歳出は、3年間の安倍政権の歳出の伸びを踏まえ、その基調を継続し、2016年~2018年度までの歳出の増加を1.6兆円程度とし、地方一般財源総額は2018年までにおいて、2015年度の地方財政計画の水準確保を「目安」として設定した。一方、歳入改革は、既に決定ずみの消費税率10%の引き上げ以外は具体策に乏しく、経済成長による税収増に依存し、抜本的な税制改革を回避している。
3. 全体として、不安定な経済成長に依存する一方、歳出抑制一辺倒の政策の羅列であり全く評価できない。その上で「公共サービス産業化」、「インセンティブ改革」など、民間活力を活かしつつ、歳出抑制をめざす考え方が全般的に貫かれており、容認できない。「目安」として設定した国の一般歳出は、毎年1兆円以上伸びる高齢化による自然増を5,000億円程度に実質的に抑制する内容であり、医療・介護分野の「公共サービスの産業化」の推進、「インセンティブ改革」を通じた病床再編や介護給付費の適正化など、あらゆる社会保障費の抑制方策が目論まれており、警戒を強める必要がある。
4. 地方財政については、公共サービスの水準や人件費の主な原資となる地方一般財源総額を確保するとした点は一定評価できるが、あくまで「目安」であり、着実に確保されるよう取り組まねばならない。一方、「インセンティブ改革」として、歳出効率化を進めた自治体の経費水準をモデルに地方交付税算定に反映することや地方創生関連の交付金をはじめ、頑張る地方を支援する仕組みなど、財政制度を通じた国の政策誘導の強化は極めて問題である。また、地方交付税の留保財源率の見直しに言及したことは、その内容次第では、地方交付税総額のあり方に直結する話であり、動向を注視しなければならない。
5. これに加え、「公共サービス産業化」として人口20万人以上の自治体にPPP/PFIの導入を促す仕組みの検討、市町村で民間活用が遅れている分野の民間委託の加速、2020年度までに窓口業務などの委託に取り組む市町村数を倍増することなど、看過できない内容を含んでいる。「集中改革プラン」で人員削減が進む一方、地方自治体の財政需要は増大しており、これ以上民間委託を進めれば公共サービス崩壊の危機に直面することは明白である。また、地域雇用の重要性からみても、人員削減どころか、人材確保が最優先されるべきであり、民間委託の阻止にむけ、取り組みを強化しなければならない。
6. 政府予算は当面する概算要求や年末の政府予算編成の作業まで、社会保障費、地方財政ともに予断を許さない状況にある。自治労は、地方自治法第99条の意見書採択の取り組みに集中するとともに、公共サービスの充実とこれを支える地方財政の確立にむけ、関係省庁、国会対策など全力で取り組むこととする。
2015年7月2日
全日本自治団体労働組合
書記長 川本 淳