自治労北海道本部は、北海学園大学と連携し、公務員(地方自治)をめざす学生に職場の現状や課題を実際に地方自治体に勤める組合員をはじめ、役員や関係者など道本部から講師を派遣し、労働組合の意義を含めた「北海学園大学社会科学特別講義」を実施している。
この講義は、4月10日から7月17日の毎週金曜日に、計15回にわたって一部(全日)、二部(夜間)の生徒に90分間の講義をそれぞれに行っています。第1回は、「社会科学特別講義ガイダンス」として、北海学園大学川村准教授より、この講義の意義や課題、それぞれの授業に対する取り扱いなどが話され、第2回には、「地方自治制度」を、この特別講義を始める前に必要な基本的な地方自治制度について、同大学西村教授より自治体の実態や課題に触れる前に学んでいます。
4月24日に行われた第3回講義には、地方自治にとって大きな問題ともいえる夕張市の財政破綻問題について、「財政再建団体になるということ~財政破綻の背景と今の市民の暮らし~」と題して、自治労組織内議員の厚谷司夕張市議より、道本部から機関会議ごとに発行している「夕張市報告集」を講義資料に、財政破綻に至った経過や現在の市における苦労、多の自治体との違いなどの講義をしていただきました。受講した学生からは、「原発問題から炭鉱の復活をどの様に考えるか」や「様々な意見を取り入れた観光対策なども必要ではないか」、「ふるさと納税もついてくる商品価値で変わっているがどの様に考えるか」など、多くの質問や意見が寄せられました。
その後の第4回には、地方自治にとっての財政課題や地方交付税の課題などについて、同大学の西村教授より「地方財の問題について」と題して講義が行われました。
第5回目には、「これからの地方自治」と題して、自治体の運営に携わる首長目線からの講義も必要との認識から、自治労津別町職で執行委員長も経験している佐藤多一津別町長より「志をもつこと~プロは自分のシナリオを書く、アマは他人のシナリオが気になる~」と題して、「地方公務員をめざすには、その町を好きになることが必要であり、その使命は、地域を豊かにすることと考える。そのために私が望む地方公務員像は、志を持つことであり、生きがいを感じていただくこと」と話され、さらに小規模自治体の持つ現状と課題にも触れていただいた。また、自治労運動の経験から、「自治研活動から多くのネットワークを得てきた。いまもその経験が大きな財産となっている。組合というイメージはそれぞれにあると思うが、そうした活動も職員組合の重要な取り組み」と話された上で、「職場にも組合にも魅力的な人の存在が活気を生む」と学生への期待も話され、最後に、実際に面接などを行っている立場から、試験にむけてのアドバイスも送られた。
そして、5月15日に行われた第6回講義には、道本部藤盛副執行委員長(現道平和運動フォーラム代表)が、講義に立ちました。
北海道をはじめ各自治体が抱える課題に原子力問題もあることから「北海道における原子力関連施設等の現状と課題」と題した講義をこの取り組みに含めていただいた。藤盛副委員長は、学生に対して「それぞれの考え方などがあると思う。それを否定するものではないし、今後の話は、私たちの主張として聞いていただきたい」とした上で、設置自治体における「アメとムチ」で電源交付金の仕組みなど、自治体における悩みや課題にも触れた。また、泊原発の課題や幌延の深地層研究所問題に触れ、福島第一原発事故を教訓にした放射能問題について、自治労が行った東日本大震災復興支援への参加体験と現在の復興状況、そして現在の原発避難区域の現状から、津波による復興と放射能被害の現状に違いがあるのか話され、幌延も最終処分場の問題からなし崩し的に北海道に「核のごみ」が持ち込まれる危険性もあることに触れた。
また、函館の訴訟問題にも、大間原発の危険性から対岸にある函館が一切の遮断物が無く、万が一の場合は住民生活にも危険が及び、ひいては地方自治の崩壊にもつながるとして、この訴訟問題の必要性にも触れられた。学生からは、「木古内出身で、人ごとではないと感じた。なぜ原発が必要か、電力は足りているのに」、「大間の問題は初めて知った。自分たちにできることはあるか」などの意見も出された。
この特別講義は、今後、地方自治の仕事として、道本部役員や組合員が講師を担当し、「現業職場における課題と任務」「自治体における貧困対策」「自治体の介護・福祉問題」「自治体の子育て支援」などを予定している。もちろん、労働組合の必要性やその意義、取り組んでいる課題にも触れ、学生がもっとも気になっているだろう賃金課題についての講義も進めていく予定です。