9月6日、札幌市・自治労会館で「道本部自治体政策セミナー」が開かれ、全道から約140人が参加した。セミナーでは、地方交付税の仕組み、平成25年度普通交付税額の算定への考え方、2014年度の動向について学習した。
講演①として、「地方公務員給与の臨時削減問題と財源保障の展望」と題して、飛田博史・地方自治総合研究所研究員が講演した。
飛田さんは「給与削減問題の本質は、地方交付税の削減問題。国家公務員給与の臨時削減をてこに地方自治体に圧力をかけて、地方交付税の削減を行った。これは、財政問題につながる」と述べたうえで、
地方公務員給与の臨時削減の経過を「国家公務員の給与削減は東日本大震災復興財源捻出のために暫定的に行ったもの(平均7.8%)。2012月12月の選挙結果(自民党圧勝)により安倍政権は、地方公務員給与削減を強く打ち出し、地方は反発したが、安倍政権は地方に対し要請した。並行して、2013年度地方財政対策を決め、地方公務員給与削減を反映した地方交付税総額(17.1兆円)を決定し、国の『要請』が実質的な『強制』に転化した」と説明した。
地方交付税の算定の仕組みについて「地方財政計画で積算した、歳出-歳入(自主財源)=足りない分を地方交付税で補填という仕組みだが、地方の自主財源は乏しいので地方交付税の削減は、自治体運営に影響が大きい。地方財政計画の規模は前年と変わらないが、地方公務員給与削減分を補填する『防災・減災事業費』は公共事業なので起債。あとで補填の約束だが補填は元利償還金7割・8割で実額保障ではない。『元気づくり事業費』を給与削減・定数削減したところに重点配分することは問題がある」と述べた。
今後の対応として、「地方交付税は1990年代までは自然増であったが、2000年代はマイナスベースになった。財源確保するには今まで以上に行動することが必要になる。地方自治法第99条を活用した議会意見書、地方交付税法17-4を活用した総務省への意見書などの取り組みを強化していく必要がある」と述べた。
講演②は、「2014年度政府予算と地方財政の動向」と題して、高木健二・前地方自治総合研究所研究員が講演した。
高木さんは、「アベノミクスの嘘。株価上昇は海外ヘッジファンドが相場(乱高下)を動かして利益を出していることから見える現象。円安は頻繁な為替介入(政府・日銀のドル・米国債購入)によるもの。異次元の金融緩和によるものでは無い。国内自動車メーカーの収益は円安と思われるのは11%。その他の要因はコストカット(人件費削減・雇用形態の非正規化。外注化)によるもの。金融緩和で設備投資は増えていない。日銀の当座預金額だけが増えている。非正規化で消費者所得は減少しているから消費は拡大していない」とアベノミクスの情勢を分析した。
さらに「一括交付金を見直し、ひも付き補助金に戻す。地方交付税の不交付団体を現在の3倍にしたい(新藤総務相)。自主財源である税収が伸びないから交付税が必要なのに不交付団体を増やす具体策は、人件費削減・企業誘致で成果を上げた自治体に地方交付税の重点配分。行政改革・地域活性化の努力を査定し、頑張る地方自治体に重点配分するとしているが、論理破綻している政策だ」批判した。
最後に「震災復興費35%の1兆円が未使用、『不用額』に計上しているのは非常に問題。給与カットまでして捻出したものが復興に使われず、さらに関係ない事業に流用されている。被災地では市町村職員不足で現場対応すらできていない。これをどうにかする政策をすべきだ。地方財政計画で、総務省は2013年度歳出総額維持を主張しているが、財務省は減らしたい考え。12月の財務省との調整が重要。財務省は特別枠の解消、総務省は特別枠維持を主張。自治労の取り組みとしても重要になるだろう」と問題提起を行った。