※本文は2015自治労北海道情報No.051として7月10日以降、各単組に文書で送付されます。
政府は6月30日の閣議で、「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」(以下、「基本方針」という。)を決定し、7月3日に「地方人口ビジョン」及び「地方版総合戦略」の進捗状況について公表しました。基本方針等の概略と取り組みのポイントは以下の通りです。
(1)「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」
基本方針を、総合戦略の策定段階から事業推進の段階に入るとしたうえで、「地方創生の進化」に取り組むこととしています。
地方創生の進化をはかるための柱として、①「稼ぐ力を引き出す」、②「地域の総合力」を引き出す(頑張る地域へのインセンティブ改革)、③「民の知見」を引き出す(民間の創意工夫、国家戦略特区の最大活用)が打ち出されています。
これは、6月末に同時に閣議決定した「骨太の方針」と同様に、財政制度を通じて国が政策誘導をはかる「インセンティブ改革」、民間の活力を通じて歳出抑制をめざす「公的サービスの産業化」と同じ方向を示している点に留意が必要です。
個別にみると、地方移住の支援策として、米国の「CCRC」(Continuinng Care Retirement Communityの略)の事例を参考に、地域の高齢化が希望に応じ、地方や「まちなか」へ移り住み、必要な医療・介護ケアを受けるようにできるとした「日本版CCRC構想」の推進を打ち出し、東京圏の急速な少子高齢化への対応策として地方移住の支援などを掲げています。これも、6月に日本創成会議(座長増田寛也元総務大臣)が「東京圏高齢化危機戦略」の提言を下敷きにしているものと考えられます。
日本創成会議の提言については、高齢者の移住に対し、現状でさえ、医療や介護ケアに必要な財源や人材が十分でないことなど、いくつかの自治体首長が懸念を表明している通り、慎重な検討、対応が求められます。「日本版CCRC構想」は年末に最終案をまとめ、次年度中に自治体に対しモデル事業を進めるとしており、今後の政府や自治体当局の動向を注視する必要があります。
また、今後設計する地方創生に関する「新型交付金」については、具体的な成果目標とPDCAサイクルの確立、(他自治体の)先駆的・優良事例の横展開を支援するとしています。これは、交付金を通じた国の政策誘導、自治体横並びの政策となりかねず、地域の実情にそったまちづくりを阻害する可能性があります。
自治労全体の取り組みとして、地域の自主性を活かすための自由度の高い交付金を求めることが重要ですが、当面の取り組みとして、現在作業を進めている「地方版総合戦略」が地域の実情に沿った課題、政策が議論されているか点検する必要があります。また、新型交付金をはじめ、地方創生に必要な財源が恒久的な財源として確保されるか不透明であり、新たに企画する事業について、将来の財政負担や事業の持続可能性も含め、検証を求めることがポイントとなります。
(2)「地方版総合戦略」の進捗状況
政府が3日に公表した資料によると、「地方版総合戦略」の策定状況について
①都道府県は、既に策定済み2県(高知、和歌山)、2015年10月まで36県とし、今年度中に全都道府県で策定予定としました。
②市町村(全1741市町村)は、策定済みは7市町村で、準備中が766市町村、今年度中には1728市町村が策定予定としました。
「地方版総合戦略」の策定にあたって、産官学金労言を含めた推進組織の設置状況について
①都道府県は、既に整備済み31県、準備中14県としています。なお、既に整備済み31県のうち、産官学金労言が全て参加しているのは、23県(47都道府県の48.9%)。
②市町村(全1741市町村)は、既に整備済み379市町村、準備中1006市町村、検討中293市町村としています。
なお、既に整備済み379市町村のうち、産官学金労言が全て参加しているのは、144市町村(全1741市町村の8.2%)。
上記の通り、特に市町村の推進組織については、「現在、準備中」としているところが最も多く、地域の実情に沿った課題抽出、解決をはかるためにも、推進組織の整備を確実に求める必要があります。
自治労の「まち・ひと・しごと創生法」の対応方針や連合「地方のてびき(地方創生版)別添70頁以降」で示した通り、①「地方版総合戦略」の策定にあたり、労働組合を含む推進組織の確実な設置を自治体当局に求める、②自治研活動の実践をいかし、地方連合会、地域協議会と連携して推進組織に労働組合として参加、提言をはかることを積極的に進めることとします。
各単組での取り組み強化をお願いします。
P70~地方創生版 まちひとしごと創生基本方針2015(概要)