自治労北海道本部は、北海学園大学と連携し公務員(地方自治)をめざす学生に職場の現状や課題を実際に地方自治体に勤める組合員をはじめ、道本部役職員や関係者などの講師を派遣し、労働組合の意義を含めた-北海学園大学社会科学特別講義「地方自治体の仕事と労働組合」-を実施している。

今回は、第7回から第10回まで(前回5月18日に第6回までを紹介済)の講義を紹介する。

DSCF82555月22日に行われた第7回講義には、道本部組織部長(現業公企評議会担当)の大西誠さんが教壇に立った。講義は、「地域・住民に直結する公共サービスを考える」と題して、地方自治体における現業職場の必要性や実態について話した。講義の冒頭、自治労本部は発行しているDVDを見た後、自治体における「現業職」について、適用法や「どういった仕事があるか」について説明し、現業職場における地域公共サービスの民間委託化や非正規労働の実態に触れた。また、東日本大震災の対応における自治体の人員不足に現地の混乱状況や自治体職員の役割、しかし一方で対応しきれない慢性的な人員不足などにも、現地職員の実態や状況に触れながら話された。さらに、労働組合の役割として「権利ばかりを主張しているわけではない。地域住民との接点からよりよい行政実現のため政策提言をする。」「組合の現業職場や職員の発想から、今の分別回収などが生まれた」など、特徴的な取り組みなどの紹介も行った。

image (2)5月29日に行われた第8回講義には、元釧路市職員である櫛部武俊さんを講師として、「誰もが助けて!と言える地域をつくる~生活保護制度と生活困窮者自立支援法が地続きとなって~」と題して、貧困に対する行政の取り組みについて講演していただいた。櫛部さんは、自身を「くうたらケースワーカー」と称してから話し始めた。釧路市における「自立支援プログラムを行う体制」から、釧路モデル考え方や取り組みについて触れ、「地域で支えられていた人が、支える人に回る仕組み」を高齢化が危惧される職への担い手としての就労支援など話された。さらに、日本における“自殺”の現状を、それを考えてから亡くなるまでの年月を性別、職業別での違いやその経路についても話された。学生からは、「生活保護不正受給によるイメージや、この間の生活からのイメージが変わった。」、「地域ぐるみの取り組みが大事」などの感想や意見が寄せられた。

image6月5日に行われた第9回講義は、道本部社会福祉評議会特別幹事 相内利幸さん(札幌市職連)から、「自治体の子育て支援と現状」と題して、少子高齢化の現状から支える世代の減少や非正規雇用の増加を背景に、「家族を養う自身がない。子育てに追われたくない」という理由から結婚や出産をためらうこともよく聞く。さらに子どもは減っているが児童虐待件数は増加しており、子どもの貧困も大きな課題であると現在の社会背景から話された。子ども・子育て支援新制度の内容や現状、新制度における幼保連携型認定子ども園の職員について、公立保育・教育施設に求められる役割などに触れ、さらには、労働組合としてそうした実態に基づく取り組みの紹介も行った。相内さんは、「消費税率の引き上げによる財源確保を前提、しかし延長、さらに質・量の拡充のためには追加財源が必要」、「保育士は、5年以内に保育教諭の資格が必要、一方では賃金や勤務実態から退職者も後を絶たない」、「潜在保育士(地域に居住する保育免許を有している方)も、職現場での勤務を希望しない実態もある」など、現場の厳しさも訴えかけた。学生からは、「子育てを終わった方への預かりはできないのか」「保育士募集対策は何かしているのか」「賃金の改善の見込みはあるのか」など、現実的な意見も寄せられた。

image (1)6月12日に行われた第10回講義には、道本部社会福祉評議会議長の塚越寛さん(浜頓別町職)を講師に「地方自治体の介護・福祉」と題した講義を行った。塚越さんは、福祉労働者の劣悪な労働条件や低賃金に触れ、政府の政策に常に左右され、時には施設維持も困難になる実態や、地域包括ケアシステムの内容、本人や家族の介護の考え方の実態、そして、今後の高齢者人口の見通しについて触れた。塚越さんは、「皆さんが働き盛りの時には、一人が一人を支える“肩車型社会”になる。」と話した上で、「福祉職場は3Kと言われてるほど厳しい職場、しかし今の社会では必要な職場であることも間違いない」、「介護の希望は、本人と家族で希望が正反対の実態」、「75歳人口は、都市部で急速に増加、地方でも緩やかに増加する。そうした状況に対応する政策が必要だが、報酬面などは引き下げれる状況」、さらに地方からの講師と言うこともあり、「地方自治体には、皆さんが期待するような施設はないが、職員としての役割は大きい。」など、地方で働く現状や課題などにも触れた。学生からは「障害施設での虐待のニュースがあった。施設職員への対応はそうした場合にはどうするのか」、「自分たちは何を意識していけばいいのか」などの意見や質問も出された。

この講義は、7月17日までの合計15回の講義を予定し、すでに10回目が終了した。今後は、医療現場における講義や非正規労働者の実態、山上執行委員長の出番も用意している。もちろん、この間の講義でも労働組合の役割や私たちが行っている行動についても、様々な話から「私たちにできることは?」などの意見も寄せられている。自治体職場も総合的見直しに見られる都市と地方、さらには評価制度の導入による職員と職員などの分断の課題もはらみます。この講義でも学生にその都度伝えている「労働組合の役割」を組合員の皆さんも意識し、健康で働き続けられる職場を、将来の担い手のためにもめざしていきましょう。