地公部会が「技能労務職給与研究会」最終報告(案)検討に関する要望書を提出
※この交渉情報は、単組のホームページ、機関紙、チラシ等には活用せず、内部意思統一用に止めてください。
公務員連絡会地公部会は、「技能労務職員の給与に係る基本的考え方に関する研究会」が3月最終報告のとりまとめ段階に入ることから、1月9日14時30分より、同研究会の佐藤博樹座長宛の『研究会「最終報告」検討に関する要望』(別紙)を事務局である総務省公務員部給与能率推進室へ提出した。総務省からは島田給与能率推進室課長補佐が出席し、地公部会からは藤川事務局長ほか幹事クラスが臨んだ。
はじめに、地公部会の藤川事務局長から要望書を手交し、特に、賃金センサスの使用は、比較データとして適切でないので基本は反対であるが、報告書で触れざる得ない場合は、職務内容、職責の異同を考慮すること、またこれを賃金制度や水準においてどう決定するかは労使交渉の課題とすべきであることを強く求めた。
それに対して、島田課長補佐からは、以下の回答があった。
(1) 次回研究会は1月23日に開催し、報告書(素案)を検討する予定。次々回、3月6日の研究会を最終回と予定している。現在、次回の研究会にむけて事務局素案を作成中である。
(2) 報告書は、地方公共団体の人事当局及び公務労協からのヒアリングを含め、これまでの研究会での議論を踏まえたものとなる。本日の要望は、何らかの形で研究会委員にもその趣旨を伝えることとしたい。
これらに対して、各幹事より次のことを重ねて要望した。
(1) 交渉方式を見直すようなメッセージを送るとするならば、労使現場は必ず混乱する。市労連方式での交渉などは、労使の長年の歴史的経緯があるもので、外部から良い悪いとの指摘することは非常に問題である。「中間とりまとめ」公表以降に開催の研究会の議論では、交渉方式は労使自治の世界であることが確認されている。市労連方式での交渉でも、給与水準は、現業組合と職員組合は別々で決めているというのが実態である。
(2) 研究会は、民間委託を進めるべき立場ではないということを、明記していただきたい。
(3) 現業の職務は、民間の職務と異なるので、民間給与との単純な比較は困難である。
(4) 現業賃金への批判は、「単純な労務」をしているのに高過ぎるのではないか、とのことであった。研究会座長も、法律上の文言と今の技能労務職員の業務の内容との違いは書いた方が良いと指摘している。したがって、自治体の現業労働者の仕事は単純労務とは違うということを是非、明記すべき。
(5) 学校では、調理員、用務員それぞれがより良い仕事をしようとの姿勢で、現場の問題に対処し、校長の判断などにより働いている。こうした職員のモチベーションに影響しないような記述にしていただきたい。
(6) 任用替えは、職種転換なのか一般行政職への転換なのか各自治体でイメージが異なっている。センセーショナルな問題となるので、これに触れることには慎重にお願いしたい。
(7) 情報公開について、「中間取りまとめ」では、交渉過程についても公開すべきと述べている。労使の自由な発言を規制することにつながらないようお願いしたい。
最後に、藤川事務局長から「現業労働者の賃金は、あくまで労使交渉で決定するのが基本であり、交渉方式は、労使自治の世界である」ことを重ねて訴えるとともに、「本日の要望の趣旨が最終報告に反映されるよう、事務局としての努力をお願いしたい」と述べ、申入れを終了した。
【別紙】
2009年1月9日
技能労務職員の給与に係る基本的考え方に関する研究会
座 長 佐 藤 博 樹 様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄
研究会「最終報告」検討に関する要望
貴職におかれましては、技能労務職員の給与に係る基本的な考え方の取りまとめにあたって、この間、私どもからのヒアリングの場を設けていただくなど真摯な検討を続けておられることに心から敬意を表します。
私どもは、本研究会を設けることに対しては、労使交渉、労働協約による賃金決定への国の関与が強まるという懸念があることを表明してきました。このたび、最終報告(案)の検討が始まるにあたって、同報告が、各現場に対して大きな影響を与えることから、少なくとも以下の事項を踏まえた検討を行われるよう強く要望します。
記
現状と課題
○ 地方公営企業法(第38条第4項)も地方公営企業等の労働関係に関する法律(第7条ほか)も、労働協約締結権をもつ公営企業・特定地方独立行政法人労働者や現業労働者(地公企労法附則第5項)の賃金は、いくつかの原則(地方公営企業法第38条第2、3項)を踏まえつつ労使交渉を基本に決定することを想定している。本研究会も労使交渉の手続きをテーマにしているが、あくまで労使交渉を基本に決定することを明確にすべき。
○ 現業労働者の賃金交渉を、一般行政職等の賃金交渉と一体的に行っていることが問題であるかのような記述は、削除すべき。
論点1:給料表作成に当たっての考え方
級の構成にあたっては、民間において主流である能力等級制の考えも紹介して、あたかも4級制を推奨するかのような記述は、削除すべき。
論点2:民間給与水準の調査・比較方法
○ 各自治体(任命権者)労使が現業労働者の賃金を民間労働者の賃金と比較するにあたっては、次の点に留意すべきことを、明確にすべき。
・ 職務内容の異同に十分配慮して比較することとすべき。既存の統計資料は職種の呼称は類似していても、その定義に立ち入ると職務内容には公務と大きな差異がある場合がある。この差異をじゅうぶん吟味することが必要であるが、この差異を賃金決定にあたってどのように扱うかは、労使交渉の課題である。
・ 賃金センサスの年ごとの都道府県別・職種別(または中産業分類別)データは変動が大きく、これをもとにした賃金決定は困難である。
○ 「単純労務」と呼ばれた現業労働者の職務は高度化している、との委員の指摘を報告書に表現すべき。また、自治労現業評価委員会による『中間報告』(2008年12月)も参考にしていただきたい。
-自治労現業評価委員会『中間報告』抜粋-
○ 職務内容が公務として民間とは異なる点についての評価
・現場を持つ現業
現業の重要な特徴は、現場を持っていることであり、現場を熟知した人たちの集団であること。また、日常的に地域社会や人々の生活の場に入って仕事をしている現業職員の情報や感覚は、住民の立場に立った政策を展開しようとする自治体にとっては、何にも代え難い政策情報である(「中間報告」P8(2))。
・専任による継続的業務遂行
現業の職場は、本来は正規職員による継続的な業務遂行を特徴としている。この継続性がきわめて重要な意味を持つことを再認識する必要がある。また、専任の職員が業務を担っていることは、災害時などの非日常的な状況においても大きなメリットとなる(「中間報告」P9(3))。
・現業現場が持っている総合性
人々の暮らしは、行政のいわゆる「縦割り」とは全く無関係に展開している。一見すると限定的な業務を行っているように思える現業の仕事は、行政の部局編成を超えた対応や調整を求められるといえる(「中間報告」P10(4))。
○ 「単純技能労務職」という呼び方が想定する仕事の中身と実態との乖離についての評価
・単にマニュアルに沿って作業をしているのではなく、地域の公的な問題に責任を持つ自治体の最前線で、総合的な観点から問題に対処することを考えなければならないのが現業の職場である。多数の部局に跨る問題を総合的に捉え対応することができるのが現業である(「中間報告」P10(4))。
・現業活性化の可能性
現業職員は定められた業務を行うだけの人ではなく、地域の公的な諸問題の解決に大きな責任を持っている自治体の職員である。また、自分の業務(権限)範囲からだけ捉えるのではなく、自治体として何をするべきかという視点で捉えることが必要である(「中間報告」P10(5)〜P11 )。
・現業職場の位置づけを再評価
地方分権改革は、住民に身近な自治体が、住民に見近なサービスを供給することを基本として、そのための政策を自治体現場の実情に見合った形で立案し、実施していこうとするものである。したがって、究極的には、自治体の中でも、現場にもっとも近いところにあり、現場をもっともよく知る現業職員の位置づけや役割について、より重要視され、議論されることが求められるはずである。
しかし、現実には、現業職員の仕事は「単純労務」と位置づけられ、現場で政策を立案することは想定されていない。そして、そのような法的位置づけが形式的に理解され、「単純」で「誰でもできる仕事」なのだから、民間委託し、もっと低い賃金で行うことができるはずだという議論になるのである。しかし、本中間報告でも明らかにされているように、評価委員会が行ったヒアリング調査や意識調査では、現場職場の創意工夫によって、住民の安心や安全、そして快適な生活を保障していくことができると考えることができる。それは、今後の質の高い公共サービス供給の基本的な考え方につながるものである(「中間報告」P33(1))。
論点3:交渉手続
職員団体の交渉と一体となって行っていたり同時並行的に行っていることが、給与水準に決定的な影響を及ぼしているとは認められないこと、労使自治の範囲内であることを、明確にすべき。
論点4:説明責任
既に各自治体は給与の公表を行っており、その内容で十分である。
その他
任用替えによる職種転換をすすめるような記述はすべきではない。