労働者の解雇が相次いでいる。民間の調査機関によれば、11月から09年の6月まで非正規労働者を含む170万人の雇用が削減される可能性を指摘している。
思えば90年代の初め、バブル崩壊時にも大量の解雇と賃金カットが労働者を襲った。それから経済は徐々に立ち直り、戦後最長という「好景気」を謳歌した日本経済だっった。
しかし、この景気回復過程の内実は、労働者派遣法の改悪に伴う大量の非正規労働者の誕生と一方における成果主義賃金制度の導入や低賃金政策に支えられたものだった。
労働者にとってはまったく好景気などという実感の沸かない時代だったのだ。実際、ここ10年は賃金相場は横ばいかマイナス、史上最高収益の更新が続いたトヨタ自動車でさえ賃上げを抑制し一時金などでその場をしのいできた。
このように労働者への配分を後回しにして、経営側は株主への配当だけは優先、一方で莫大な内部留保をため込んだのだった。
そして、ここへきてアメリカは発の世界的な不況と国内経済への深刻な影響も、結局労働者へのシワ寄せ、使い捨てで乗り切ろうとしている。
先日、知り合いの会社社長と話す機会があった。ちょうど、北海道新聞朝刊一面トップに「大手16社貯金33兆円」「株主重視の姿勢反映」「人員削減4万人の陰で・・・」という見出しが踊った日だった。
社長は「これだよ、これ」といって「株主重視・・・」という活字を指さした。つまり、日本の会社経営はまず社員重視、次に株主・役員という伝統が流れていた。しかし、小泉・竹中改革の頃からか、それが大きく変わりはじめたというのだ。
社長の経営する会社も、今次不況のあおりをもろに受けているという。受注が減り、前年比で大きく収益が下回っているらしい。でも「配当は後回し、会社を支えている社員を守らないと・・・」
大手企業がいとも簡単に労働者を使い捨てする陰で中小企業は日本的な経営を大事にしようとしている。皮肉なことに、日本の大企業の繁栄はこうした圧倒的多数の中小経営者とそこに働く労働者の血と汗に支えられてきたことを忘れてはならない。
来年はさらに経済危機が深化する。経団連は減員が正社員にも及ぶことを示唆している。労働組合は何をなすべきか、おおいに議論すべき時である。
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