-参議院総務委員会で附帯決議とともに採択され、本会議へ送付-
人事院勧告を勧告通り実施するための関連法案は12月11日に衆議院で可決され、参議院に送付されていたが、12月18日午前中の総務委員会で審議、全会一致で採択され、本日(19日)午前10時からの本会議で可決・成立する見込みである。なお、参議院総務委員会でも資料1、2の通り附帯決議が全会一致で採択されている。
本日成立する法案は、近日中に公布閣議が行われ、いずれの法案も施行日は2009年4月1日となる予定。給与法、勤務時間法改正法案の人事院規則、退手法改正法案の政令は、われわれとの交渉・協議を経て、来年2月頃公布することが予定されている。
参議院総務委員会では、民主党の那谷屋正義、武内則男の両議員らが、人事行政の中立公正性、超過勤務、非常勤職員、退職手当の返納、内閣人事局構想の問題などを追及した。
<那谷屋議員>
国民主権のもとにおいて、公務員の人事行政について、中立公正性を確保することが重要と考えるが、人事院総裁の見解をうかがいたい。
<人事院総裁>
人事院は、現行国家公務員の中立公正性の確保と労働基本権制約下の代償機能として内閣から独立した存在として制度的保障となっていると考えている。
<那谷屋議員>
内閣人事局の担う機能や組織のあり方について拙速に結論を出すべきでないと考えるがどうか。
<鳩山総務大臣>
内閣人事局の機能については、国家公務員が中立公正性を持った全体の奉仕者としての服務規律等を果たせることなどを含めた議論がされるので、拙速ではなく与野党の垣根を越えて徹底的に議論していきたい。また、人事院や総務省から内閣人事局に移管される業務等があるが、様々な問題があるのでこれから努力していく。
<那谷屋議員>
地方分権の推進などによって業務量が増加しているので、地方公務員の純減は限界にきているのではないか。また、今後の公務員の人材確保に向けて具体的にどのように考えているか。
<鳩山総務大臣>
行革やスリム化はまだ進めなければならないが、常に削減ありきとは考えていない。この間地方公務員は5.7%を上回る削減に取り組んでおり、よくやっていることは認めなければならない。しかし、職員数の純減や地方分権改革などで地方公務員の仕事量が増えていることは把握しているが、削減が限界に近づいているかは改めて判断したい。また、全体の奉仕者として高い倫理観を持った有能な人材に公務員になって頂きたいので、モチベーションが高まる人事行政を行いたい。この一環として公務員制度改革などに現在取り組み努力している。
<那谷屋議員>
人員削減を非常勤職員で補っているシステムに問題があるので、必要な職員を確保し超過勤務も縮減すべきだ。
<鳩山総務大臣>
役所で職員の仕事ぶりを見ていると誰が常勤で非常勤か区別できないことがある。非常勤職員は制度として必要であると考えるが、常勤職員の削減に伴う代替要員とするのではなく、あくまでも非常勤職員としての勤務でなければならない。常勤職員の代替を行うのであれば常勤の職員として雇用すべきである。このようなことがないように適正配置に努めたい。
<那谷屋議員>
昨年の附帯決議に基づく非常勤職員の問題への対応はどうなっているのか。
<吉田人事院給与局長>
8月に非常勤職員の給与に関するガイドラインを発出しており、これに則して各府省で必要な処置がとられることになると考えており、ガイドラインを下回ることがないように指導していきたい。
<村木総務省人事・恩給局長>
今年の勧告の際の報告等も含めて、人事院と協力しながら進めていきたい。
<那谷屋議員>
勤務時間が短縮されても、超勤の縮減が進まなければ意味がないので、しっかり取り組むべきではないか。
<鳩山総務大臣>
勤務時間が短縮されても超過勤務が増えるのは良くないので、公務の効率が向上するように努力させたい。また、現在進められている人事評価制度の導入において部下の超過勤務を減らすことで評価が上がることも検討に値する。
<那谷屋議員>
今後設置される退職手当・恩給審査会の運営について、公正・公平性が確保されるよう具体的な措置を講じるべきではないか。
<村木総務省人事・恩給局長>
審査会において、処分対象者から意見を聞くなど公平・公正性を担保するようにする。また審査会は法律の専門家などで構成したい。
<武内議員>
非常勤職員給与ガイドラインを下回ることのないよう、人事院として各府省を指導して欲しい。また、地方では、退職手当もなく低い賃金水準で勤めている実態がある。総務省として実態調査を行い、責任を持って改善していただきたい。
<吉田人事院給与局長>
各府省の実施状況を把握し、点検して参りたい。
<鳩山総務大臣>
非常勤職員制度は必要であるが、常勤と同じように使うのであれば常勤にすべきである。公務の非常勤も、新ワーキングプアという実態がなきにしもあらずであり、人事院の指針を受けてしっかりやらなければならないと思っている。
<武内議員>
公務員制度改革について、労働者の権限をそのままに使用者の権限だけを拡大することは認められない。内閣人事局が勤務条件を決めるのであれば、労働基本権の問題とセットで解決をしなければならないと思うがどうか。
<谷人事院総裁>
一般職の国家公務員についてその地位の特殊性や職務の公共性から労働協約締結権などが制約されているが、この制約に対しては相応の代償措置が講じられる必要があるというのが最高裁の判例であり、労使対等の協議による労働協約に代えて、労使の間に立った第三者機関である人事院の勧告に基づいて法律で給与を定め、法律の委任に基づいて人事院規則で基準を定めることは代償機能の重要な一部である。使用者機関の性格を持つ内閣人事局が政令で給与の基準等を定めることや勤務条件の企画立案を行うことは憲法上の問題にも関わる恐れがある。現行の労働基本権制約の下にあっては、人事院が担う代償機能は維持される必要があると考える。
<谷本内閣府副大臣>
顧問会議の報告では、内閣人事局は国家公務員全体の人事制度及びその運用の全般について企画立案等のPLAN機能、そして制度や運用の改善・改革であるACT機能を担うとされている。勤務条件については、人事院が意見申出を行う仕組みや必要な検討・勧告・意見申出を求めるような仕組みを例として挙げている。人事院が具体的な検討・勧告・意見の申出を行えば、労働基本権制約の代償機能は確保できるのではないかという顧問会議の提案であると認識している。報告の内容の具体化については、しっかりと関係機関と折衝を行っており、労働基本権制約の代償機能が損なわれることのないよう適切に対応して参りたい。
<武内議員>
内閣人事局が人事行政の企画立案と実施機能を持ち、第三者機関が中立公正の観点から事後チェックをするという見直しを行うことが報告されているが、これは現行の中立公正性に関する考え方の大きな転換ではないか。猟官制の復活を危惧する。
<谷人事院総裁>
現行の国家公務員制度は、戦前の官吏制度の弊害の反省に基づいて、公正平等に行政を執行し、忠実に時の内閣を支えることのできる職業公務員集団を確保・育成するために、内閣から独立した人事院を設けて任用、分限、懲戒の基準設定、採用試験、研修の企画立案、実施を担わせることにより、公務員人事行政の中立公正性を確保するための制度的保障としており、事後チェックのような仕組みで中立公正性確保の機能は代替できるものではない。
<谷本内閣府副大臣>
顧問会議の提案は認識しているが、その具体化についてはしっかりと関係機関と折衝を行っているところであり、公正中立性が損なわれないようにしっかり適切に対応していきたい。
<武内議員>
昨日の顧問会議で、給与制度の見直しが議題になったが、現行労働基本権制約の下での手続きを踏まえるか、あるいは協約締結権の検討の結果に応じて措置されるものだ。また、幹部職員の任用について、成績不良でなくても降任、降格、降給を可能する仕組みの提案があったが、幹部職員にも成績主義の下で身分保障が適用されるものであり、到底認められない。仮にこのような特例を設定するためには、憲法改正が必要ではないか。
<谷人事院総裁>
国家公務員は憲法15条2項により全体の奉仕者とされており、行政の専門家集団として時々の内閣に忠実に仕えることを通じて全体の奉仕者としての使命を全うする。このような職業公務員については、その入口で情実等による縁故的採用を遮断し、政治的な理由等によって降任されたり免職されたりすることのないよう保障すること、さらに昇進等についても恣意的な基準によらずに能力実績に基づいて行われることが必要である。スポイルズシステムを廃し、メリットシステムによることは近代公務員制度の基本原則であり、それを通じて行政の持続性、安定性が維持される。こういったことは憲法15条2項の趣旨の実現に深い関わりがあると考えている。
<武内議員>
消防職員は休憩時間も自由に利用できず、24時間拘束されている。こうした実態についてどう考えているのか。また、勤務時間の短縮に伴い、無賃拘束が伸びることにならないよう、対策を講じるべきである。実態を調査し、どうしたら健康で働けるのか、しっかり対応できるよう、きちんと発信をしていただきたい。
<岡本消防庁長官>
船舶など同様の問題を抱えているところで、どのような工夫が行われるか情報を集めて、国家公務員との均衡が図られるよう、市町村の具体的な相談に応じていく。
<鳩山総務大臣>
できるだけ暖かく対応していくのが基本である。勤務時間の短縮が生きるよう考えていかないといけない。
資料1-参議院総務委員会の附帯決議(給与法等改正法案)
一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
平成20年12月18日
参議院総務委員会
政府及び人事院は、本法施行に当たり、次の事項についてその実現に努めるべきである。
一、国の医療施設における勤務医確保が喫緊の課題であることを踏まえ、引き続き医師等の適切な給与水準を確保するよう努めるとともに、深刻な社会問題となっている医師不足解消のための抜本的な対策を講ずること。
二、本府省業務調整手当の導入に当たっては、必要な人材確保など手当の導入趣旨と本府省における勤務の実態を十分踏まえ、適切に支給対象範囲を定めること。
三、長時間にわたる超過勤務が、職員の心身の健康、人材確保等に重大な影響を及ぼしていることにかんがみ、その縮減を図ること。また、職員が超過勤務命令を受けずに相当時間にわたって在庁している勤務の実態について早急に調査し、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
四、非常勤職員については、職務内容及び経験等を踏まえた適正な給与を支給するとともに、休暇その他の処遇の在り方に関して検討を行い、常勤職員との処遇の不均衡是正に取り組むこと。また、任用形態・勤務形態の在り方について検討すること。
五、公務員制度改革を推進するに当たっては、労働基本権の在り方を含め、職員団体等の意見を十分聴取し、国民の理解が得られる結論を得ること。
右決議する。
資料2-参議院総務委員会の附帯決議(退職手当法等改正法案)
国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
平成20年12月18日
参議院総務委員会
政府及び人事院は、本法施行に当たり、次の事項についてその実現に努めるべきである。
一、昨今の一部幹部公務員の不祥事等に対し国民の厳しい批判が寄せられていることにかんがみ、綱紀の粛正をさらに徹底するとともに、行政及び公務員に対する国民の信頼を確保するための措置を引き続き検討すること。
二、退職手当・恩給審査会における公平・公正な審査が確保されるよう、委員の人選及び審査手続について配慮すること。また、退職手当の支給制限及び返納・納付に係る処分を行うに当たっては、特に遺族、相続人の取扱いを含め、十分慎重な対応を図ること。
三、退職手当制度の見直しの趣旨にかんがみ、退職手当の一部支給制限制度及び一部返納制度については、公務規律の弛緩を招くことがないよう、厳正かつ公正な運用に努めること。また、いわゆる諭旨免職についても、適切な対応を図ること。
四、今回法律上の措置が講じられていない非特定独立行政法人等については、各法人に対し、国家公務員の場合に準じた検討を行い、必要な措置を講ずるよう要請すること。
右決議する。