公務労協は"基本権制約下での政府による企画立案・勧告要請は認められない"と抗議
※この交渉情報は、単組ホームページやチラシ等には掲載せず、組織内の意思統一用として取り扱ってください。
公務労協は、12月16日、公務員制度改革に関わる給与制度見直しについて、国家公務員制度改革推進本部事務局(以下「公務員事務局」という)との交渉・協議を実施した。
この交渉・協議は、12月2日の交渉・協議で、①内閣人事局の設置について来年3月の法案提出に向け作業していくこと②給与制度見直しの方向性やスケジュール、労働基本権見直しのスケジュールを盛り込んだ工程表を来年1月中を目途に政府として決定すること、が明らかにされ、「工程表、内閣人事局について、誠意を持って交渉・協議を行うこと」としたことを受けて行ったもの。
交渉・協議には、公務労協の岩岬副事務局長と構成組織の労働条件担当者が参加し、公務員事務局側は、淵上・古賀の両審議官が対応した。
冒頭、淵上審議官が「明日開催される顧問会議に給与制度見直しの内容を説明し議論をしていただくことになっているので、きょうはその内容を説明したい。今後、1月中の工程表策定に向けて皆さんと交渉・協議を行い、最終的には甘利大臣との間で決着することとしたい」として、別紙に基づいて説明を行い、①給与制度に関わる検討項目については、人事院に対して、こういう視点で見直してほしいという勧告要請を行う②幹部職員の任用の弾力化については、人事院と相談しながら進めれば勧告の必要はないと考えている③級別定数の内閣人事局への移管についても検討をしており、しかるべき時期に提示する、との考えであることを明らかにした。
これに対し、公務労協側は次の通り、公務員事務局の考えを追及した。
(1) 1月末までにあまり時間はないが、われわれが納得できるまで誠実に交渉・協議し、合意することを約束していただきたい。
(2) 顧問会議報告では「労働基本権の制約下で、勤務条件について内閣人事局がPlan機能を担う」としているが、人事院総裁は国会で「使用者機関の性格を持つ内閣人事局が政令で給与の基準を定めることや勤務条件の企画立案を行うことは憲法上の問題に関わる恐れがある」と答弁しているように、憲法違反であり、到底認められない。
(3) 政府や政府組織には、行政府としての政府の立場と使用者としての政府の立場があるが、これまでの人事院への要請は後者の立場で行われている。公務員事務局は使用者としての政府ではないので、前者ということになり、労働基本権制約の下ではあってはならないことだ。行政府としての政府が勤務条件の企画立案を行い勧告要請を行うことは、第三者機関に政治的圧力を掛けるとともに、代償機能を空洞化するものであり、認められない。
(4) 級別定数をどうしたいのか分からないが、仮に使用者機関にそれを移すということであれば、勤務条件そのものであることから、到底認めることはできない。何のためにどうしたいのか、考えを明らかにしていただきたい。
(5) 労働基本権の付与を先送りにしたままで、使用者機能を強化することは認められない。一体のものとして進めるべきだ。
(6) 幹部職員の任用の弾力化は、勧告なしにできるとの見解であるが、公務の中立公正性を確保するために身分保障があり、能力実績主義の任用を基本とし、法律に定めがない限り、降任等の不利益処分はできないことにしている。成績不良でない場合でも降任等ができるようになれば、中立公正性が確保できない。公務員制度の根幹に関わる問題だ。納得できるよう、十分議論をさせていただきたい。
これらの追及に対し、両審議官は次の通り答えた。
(1) できる限り皆さんの理解が得られるよう誠心誠意交渉を積み上げていきたい。ただし、必要不可欠と判断すれば、皆さんの完全な合意が得られなくても、人事院に要請することはあり得る。
(2) 現行制度の下でも見直しの方向性を示して、人事院に勧告するよう要請することで、憲法違反の問題は生じないと考えている。人事院には独立性があり、その立場で「恐れがある」と言っているのだと思うが、われわれは憲法上の制約を超えない範囲で勧告要請を行うことにしたい。人事院の勧告は自主的判断に基づくものであり、われわれが求めているものとずれないようにしたいと考えている。これまでも専門スタッフ職、定年制について人事院に要請してきた経緯がある。
(3) 基本法の実施を責務とする推進本部とその事務局が基本法の理念を実現するための方向性を示した上で要請する必要があると考えており、仮に勧告要請の内容が適当でなければ、第三者機関として適当と考える勧告を行うことになるので、政治的圧力ではないと思う。なお、公務員事務局の性格については、整理して次回に考えをお示ししたい。
(4) 定数管理は内閣人事局が担うべき機能としていろいろ書かれていることの一つであり、級別定数についても人事院と調整を始めたところであり、内閣人事局が担う機能の全体像と併せ、次回以降、お示しすることとしたい。
(5) 労働基本権の問題については、第2回の労使関係制度検討委員会で検討を加速するよう要請したところであり、要請に基づく勧告が実現する段階では接近してくるのではないか。
(6) 幹部職員も労働基本権の対象であることは認識しているが、どういう手続きにするかを検討するに当たっては人事院の考えを十分に聞くことにしているので、勧告がなくても法改正を行うことは可能と考えている。
以上のように、給与制度見直しの内容以前の問題として、入り口・手続きの問題で議論が平行線となったことから、最後に岩岬副事務局長が、①労働基本権の制約の下で、勤務条件について公務員事務局や内閣人事局が企画立案し、第三者機関に対して勧告要請を行うことが憲法違反となるかどうかについての考え方の整理②公務員事務局の位置づけ・性格の整理③内閣人事局機能の全体像、を次回の交渉・協議で明らかにするよう求め、「これらを踏まえ、見直しの具体的内容についての議論に入るかどうかの判断を行う」との公務労協としての意思表明を行い、交渉・協議を締めくくった。
(別紙)
給与制度の主な見直しの視点
1 能力実績に応じた処遇の徹底等(基本法5条2項1号、2号及び5号、10条2号関係)
(1) 幹部職員等の任用・給与の弾力化
幹部職員等について成績不良でない場合においても、一定の場合に、降任、降格、降給を可能とする(国家公務員法78条の特例)。
(2) 管理職員の管理職手当(特別調整額)の傾斜配分の強化
(3) 幹部職員賞与の実績に応じた傾斜配分の強化
* 現行は、期末特別手当のみで、例外的に減額が可能
(4) 人事評価制度の円滑な実施と適切な活用
2 定年まで勤務できる環境の整備等(基本法10条3号関係)
(1) 定年まで勤務できる環境の整備
専門スタッフ職の拡充、組織・業務のあり方見直し等により、定年まで勤務できる環境を整備する。
(2) 再任用の原則化
平成24年度までに、やる気と能力のある希望者を、原則再任用する。
(3) 定年延長の検討
* わが国における経済や雇用の状況、民間における定年延長の導入状況、雇用延長状況及び給与水準等を踏まえて、今後、具体的に検討することとしてはどうか。
(4) 高齢職員に係る給与の抑制
* (1)〜(3)を進めるに当たり、総人件費の増嵩にも留意しつつ、高齢職員の給与の引下げ、役職定年制の導入、専門スタッフ職を含めたスタッフ職の活用、処遇のあり方を検討する。
3 優秀な人材の確保(基本法10条2号関係)
* 初任給の引上げ等による給与カーブのフラット化、能力と実績に応じた処遇の徹底を図るため、所要の措置を講ずる。
4 官民人材交流の推進(基本法7条3号、6条5項関係)
*官民人材交流促進のための給与等の処遇見直し(不利益となる制度の見直し等)