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公務員連絡会地公部会は12月5日、給与法案、勤務時間法案を受けた総務省への要請と公務員部長交渉を行った。総務省からは松永公務員部長ほかが出席し、地公部会からは構成組織書記長と藤川地公部会事務局長が臨んだ。
はじめに、地公部会の金田企画調整委員代表より別紙要請書(資料1)を手交し、(1)賃金確定における労使交渉の尊重、(2)公営企業職員・現業職員の非現業職員との決定方式の違いを踏まえた労使交渉と合意の遵守、(3)臨時・非常勤職員の処遇等の改善、(4)国家公務員の新たな人事評価制度本格実施を受けた総務省の対応についてその見解を求めた。
これらについて、松永公務員部長からは、次のとおり応えた。
<公務員部長回答>
1.地方公務員の給与決定について
○ 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に則って、地域の実情を踏まえつつ、条例で定めるべきものであると考えている。具体的には、当該団体の規模や給与の実態等を踏まえ、国家公務員の給与、民間給与の状況等を総合的に勘案した上で、適正な内容とすべきものと考えている。地方公務員に対する国民・住民の信頼を確保するためにも、地方公共団体の給与制度や運用について、住民の理解と納得を得られるよう、一層の給与の適正化にむけた取組を要請しているところ。引き続き必要な助言等は行っていきたいと考えている。
○ 技能労務職員の給与については、人事委員会勧告の対象とはならず、労使交渉を経て労働協約を締結することができるなど、法の適用関係が他の一般行政職員等とは異なるところであるが、職務の性格や内容を踏まえつつ、特に民間の同一又は類似の職種に従事する者との均衡に一層留意し、住民の納得と理解が得られる適正な給与制度、運用とすることが必要であると考えている。
2.臨時・非常勤職員の給与、その他勤務条件について
○ 地方自治法、地方公務員法やこれに基づく条例等に基づき、職務の内容や職責等に応じて、各地方公共団体が定めるべきものと考えている。今回出された人事院の指針だが、国における事務補助職員等の非常勤職員の給与について、府省や官署において均衡が取れていない状況を改善するために、一般職給与法第22条に基づき、府省等の長が非常勤職員の給与を決定する際に、考慮すべき事項を統一的に示そうとされたものであると承知している。地方における臨時・非常勤職員は、その勤務形態や職務の内容が多様であるとともに、任用に係る法体系が国と異なっており、このようなことから今回の指針は地方公共団体に直接当てはまるものではないと認識している。
○ 社会保険や労働保険の適用については、多種多様である個々の臨時・非常勤職員の勤務形態に応じて、各制度の適用要件に照らして判断されるものであり、まずは各地方公共団体において、法令に沿って適切に運用されるべきものと考えている。
3.人事評価の関係について
○ 人事評価システムの導入に当たっては、評価の透明性・客観性・納得性を確保するために、各地方公共団体においてその枠組みを適切に構築することが必要であると考えている。人事評価システムが効用を発揮するためには、職員の理解と納得が得られるよう努めることが必要であり、制度の趣旨や内容について、職員との意思疎通を図ることが重要であると認識している。人事評価システムの内容は、各地方公共団体において決められていくべきものである。総務省としても地方公共団体における円滑な導入・運用が行われるよう、必要な助言を引き続き行っていきたいと考えている。
○ このような考えのもとに、研究会においては、人事評価の実施や活用に係る考え方や方向性を検討していただいているところである。検討に当たっては、地方公共団体の実情を踏まえた公正かつ客観的な人事評価システムの構築・運用に資するものとなるように努めていきたいと考えている。
4.勤務時間の関係
○ 先日、「一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、同法案が国会に提出されたところである。これに先立ち、総務省としては、人事院勧告の取扱いに係る閣議決定が行われたことを踏まえ、地方公務員の勤務時間の改定について、国家公務員の勤務時間の改定を基本とすること、公務能率の一層の向上に努め、行政サービスを維持するとともに行政コストの増加を招かないことを基本とすること等を事務次官通知により各地方公共団体に要請したところである。今後も適切に助言を行っていきたいと考えている。
これに対して、地公部会側は以下の点を質した。
(1) 多くの地方公共団体で給与カットが強行されている。人事委員会勧告を尊重する立場から問題があるのではないか。
(2) 労使交渉によって決定される技能労務職給与について、総務省は過剰な干渉はしないという考え方でよいか。民間労働者との比較について、民間と公務における同じ現業職員といっても職務・職責は実態としては全く同じではないということは、完全に水準をそろえるべきものだということではないということでよいか。また、今後とも十分な交渉・協議を求めたい。
(3) 臨時・非常勤職員の置かれている実態として、職務の内容と責任に応じた給与が支給されていない実態もあると認識している。たとえば、 資格性のあるような職について、常勤の職員と同様な仕事を行っているにもかかわらず、均等待遇が図られていない現状は、職務給の原則からしても問題ではないか。また、教育現場における臨時・非常勤職員がおかれている厳しい実態も踏まえるべきである。
(4) 人事評価制度に係わって、人事評価の研究会は、年度内に結論を出すとのことであるが、重大な関心を持っているので、地公部会への詳細な情報提供を行うこと、また、組合との十分な交渉・協議が重要であることを、研究会の場でも再確認されたい。
これに対して、松永公務員部長は、次のように回答をした。
(1) 人事委員会が置かれている地方公共団体における職員の給与の決定に当たっては、人事委員会勧告を尊重して給与改定を行うということが基本であると認識している。独自の給与抑制措置については、このような勧告尊重の基本姿勢に立った上で、それぞれの団体において 厳しい財政状況等を勘案して、人事当局と職員団体との交渉や議会における審議等を経て、条例改正を行い実施されているものであると承知している。地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨を踏まえて、それぞれの地方公共団体において十分に論議いただくべきものであると考えているところである。
(2) 技能労務職員の給与については、職務内容が公務として民間とは異なるところもあるが、法の原則どおり、同一又は類似の民間事業の従業員の給与を考慮し、住民の理解と納得が得られる適正な給与制度・運用となるようにすることが必要であろうと考えている。
賃金センサスのデータを地方公務員の給与と比較する際には、公表されているデータのままでは、雇用形態や勤務形態の異なる民間事業所の従業者の給与が含まれていることについては、留意が必要であるということは承知している。研究会においても、こういったことを踏まえて、労使双方に題材を提供するという観点から、賃金センサスデータの分析を含めて民間給与の調査・比較手法等について研究してもらっている。研究会の議論については、今後とも、引き続き、情報提供をしていきたい。
(3) 地方公共団体における臨時・非常勤職員の報酬等の処遇については、それぞれの地方公共団体において、その職務の内容等に応じて適切に決定すべきものだと考えている。研究会においても、「臨時・非常勤職員の報酬等については、業務の内容や業務に伴う責任の程度等に応じて、各地方公共団体において適切に判断すべきではないか。」という観点から、議論が行われているところである。今年中には研究会における議論を整理していただくこととなっており、これを受けて地方公共団体における質の高い効率的な行政サービスの実現に資するよう制度・運用の在り方を検討していきたいと考えている。
文部科学省が教員の勤務実態に関する調査を行われたことは承知している。教職調整額のあり方等の問題については文部科学省が中心となって検討を進めているところである。こうしたことも含め、様々な議論があることは認識している。
(4) 研究会については、そろそろ報告書の取りまとめ時期にさしかかってきているが、研究会資料や議事概要については、これまでと同様、情報提供を行っていきたい。
また、職員との意思疎通が重要である点は、研究会でのこれまでの議論でも委員の方々の間では共通認識となっており、取りまとめに当たっても、その点に変わりはないものと考えている。
最後に、金田書記長から、地方自治体における行政サービス水準の向上と人的資源確保のため、地方公務員の新たな定員削減計画を地方自治体に求めないことを要請して、交渉を終わった。
資料1.総務省への申入書
2008年12月5日
総務大臣
鳩 山 邦 夫 様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄
地方公務員の賃金、労働条件に関する申入れ
貴職の地方自治確立、地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
今日、雇用・生活などの地域間格差は重大な政治・社会的な課題となっており、少子高齢社会における社会保障の水準確保や教育、医療、防災など地域における住民ニーズに適切に対応する自治体の役割強化が求められています。
しかし、政府の国・地方の歳入歳出一体改革により、公共サービスのあり方についての十分な国民的議論と合意を抜きにした定員・賃金の削減や、地方財政計画の圧縮、地方交付税の大幅削減により、公共サービスの縮小や質の低下が懸念される事態になっています。それに対して、地方公務員の多くは、公共サービスの維持・改善をすすめるため、懸命の努力を続けています。その一方、財政逼迫を理由とした一方的な賃金引下げが深刻化し、労働基本権が制約されていることへの代償措置である人事委員会制度は空洞化していることから、労使が交渉を通じて自律的に勤務労働条件を決定する制度への転換が急がれます。
貴職におかれましては、地方公務員の賃金水準の確保と、労使自治を尊重した賃金確定が強く求められており、下記事項の実現に向けてご尽力頂きますようお願いします。
記
1.自治体サービスの確保・向上のため、地方公務員の賃金水準が確保されるよう取り組むこと。また、自治体賃金の確定に当たっては、地公法第24条3項の趣旨を踏まえた自治体の自己決定が尊重されるよう対応すること。とくに、公営企業職員や現業職員の給与については、非現業職員との決定方式の違いを踏まえ、労使交渉と合意を尊重して対応すること。
2.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みを行うこと。そのため、全国人事委員会連合会の体制・機能の強化をはじめ人事委員会の体制・機能強化や人事委員会相互の連携方策の強化について支援を行うこと。
3.臨時・非常勤職員の処遇等の改善のため、非常勤職員に係る給与の適正な支給を求める人事院の指針を参考にしつつ、常勤職員との均衡と雇用の安定に向けた取組みを行うよう各自治体に助言すること。また、社会保険・労働保険の適用に係って、法令に沿った運用が行われているかどうか実態把握をすすめ、問題点、課題の改善に取り組むこと。
4.公立学校教員給与について、人材確保法の趣旨を踏まえた水準確保を図るよう自治体に助言すること。
5.国家公務員の新たな人事評価制度の実施に伴う地方公務員の人事評価制度の見直しにあたっては、4原則2要件を具備した制度となるよう組合との十分な交渉・協議と合意と納得を得るよう「助言」をすること。また、「地方公共団体における人事評価の活用等に関する研究会」の検討にあたって、地方公務員部会の意見反映の場を設けること。
6.退職手当債の発行、公的資金補償金免除繰上償還の実施の許可に際して、一律的な人件費削減や、特定項目の人件費の削減などを条件としないこと。また、地域手当、寒冷地手当など人件費に係る特別交付税の減額措置を実施しないこと。
7.地方自治体における行政サービス水準の向上と人的資源の確保のため、地方公務員の新たな定員削減計画を地方自治体に求めないこと。
8.所定勤務時間の短縮について、人事院勧告において来年4月実施とされたことを踏まえ、各自治体においても速やかに実施されるよう、所要の措置を行うこと。