12月2日、参議院・厚生労働委員会が開催され、労働基準法改正案の審議が行われた。民主党の小林正夫議員、津田弥太郎議員をはじめ与野党からの質疑ののち、採決を行い、自民・民主・公明三党の賛成多数により可決した。
<主な質疑>
◆年次有給休暇の時間単位取得について◆
【小林議員】平成7年の年休の半日単位取得に関する監督課長名の通達において、年休は1労働日以下に分割することは予定されていない、とされている。年次有給休暇は本来一日単位であるとの理解でよいか。
【労働基準局長】原理原則はその通りである。平成7年通達は、労使双方に半日単位取得のニーズがあったことから、半日単位は認めたが時間単位までは崩さないとの主旨である。
【小林議員】年休1日は、時間単位休暇の何時間分か?
【労働基準局長】原則的には1日の所定労働時間数が1日となるが、労使協定で明確にする必要がある。基本的なルールは労働政策審議会で議論いただく。
【小林議員】この規定はあくまでも時間単位で与えることができるというものであり、1日単位の休暇を請求した労働者に対して使用者側が時間単位での取得を強制することはできないものと考えてよいか。
【労働基準局長】指摘のとおり、使用者側が時間単位での取得にせよということは認められるものではない。
【小林議員】時間単位の分割により年休の取得が促進されるのか。
【厚生労働大臣】この規定が、取得しやすくなる方向に働けばよいと考えるが、1日単位で取得するのが本来の主旨である。
◆時間外割増率の引き上げについて◆
【小林議員】時間外割増率については、衆議院において割増率を引き上げる対象を「80時間超」から「60時間超」との修正がなされたが、厚生労働大臣と修正案提案者に、この修正に対する所見を伺いたい。
【厚生労働大臣】政府原案においては月80時間超としていたが、与野党の合意により月60時間超となったことは大変好ましい。
【細川律夫・衆議院議員】民主党は長時間労働の抑制のため、時間外割増率はすべて50%にすべきと考えていた。政府案の月80時間の時間外労働は週休二日であれば一日4時間の時間外労働でありワーク・ライフ・バランスにはほど遠く、これではとても賛成できない。しかし、60時間であれば一日3時間である。不十分ではあるが、一歩前進と受け止め合意した。
【津田議員】改正案により、月45時間を超える時間外労働については法定を超える率にすることが労使の努力義務になるとの説明であるが、法律には直接的にはそのように記載されていない。わかりやすく説明を。
【労働基準局長】労基法36条2項には、厚生労働大臣が時間外労働の限度基準に関する告示を定められるとの規定がある。今回の改正で、告示で定める内容に「労働時間の延長に係る割増賃金の率」を追加した。改正法成立後、告示の改正を行うが月45時間を超える特別条項付き協定を締結する際には割増率が法定割増率を上回るようにとの趣旨を規定する。労基法36条3項は、限度基準告示に関する労使の努力義務を規定しており、これらの改正により割増率についても労使の努力義務となる。
【津田議員】35%や40%など、労使の努力義務の目安を示すべき。
【厚生労働大臣】個別労使で取り組んでいただくものである。
【津田議員】時間外割増率50%の部分は中小企業は「当分の間」適用猶予となっている。しかし、労働条件の最低基準を定める労働基準法において、ダブルスタンダードとするのは問題である。中小企業の労働者は命の価値でも大企業と格差があるのか。
【厚生労働大臣】労働基準法は本来はシングルスタンダードであるべきだが、企業の経営体力等を鑑み、当分の間適用猶予とした。
【津田議員】附則3条の3年後の見直しにおいて適用猶予をはずすとの決意を伺いたい。
【厚生労働大臣】猶予期間を長びかせればよいというものではない。労使団体ともよく協議をしてできる限りの努力を行ってまいりたい。
◆雇用問題について◆
【小林議員】採用内定取り消し問題については、民主党が昨年の通常国会に提出した労働契約法案のように、労働契約法に採用内定および取り消しの規定を整備すべき。
【厚生労働大臣】労働契約法に規定すべきか否かは検討が必要だが、当面は、まず企業に対して極力内定の取り消しは行わないでほしいとの観点で対応していきたい。
【小林議員】非正規労働者の労働契約の中途解除が問題となっているが、労働契約法第17条1項の解釈を伺いたい。
【労働基準局長】労働契約法第17条1項は、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と規定しているが、この「やむを得ない事由」は、解雇権濫用法理で解雇が有効とされる場合よりも限定的であると理解している。
【津田議員】雇用保険について、雇用保険の加入要件としての「1年以上の雇用見込み」は見直すべき。また、基本手当の受給資格要件として被保険者期間は特定受給資格者か否かに拘わらず「離職の日以前1年間に6カ月」とすべき。さらに、保険料率は引き下げるよりも、非正規労働者の問題に財源を活用すべき。
【厚生労働大臣】雇用保険制度の在り方については、労使が参加した労働政策審議会において議論いただいているところである。保険料率については、料率引き下げと制度改革とどちらが効果があるのか政府内で検討しているところだが、個人的には津田議員と同じ認識である。
【津田議員】11月4日に労働者派遣法改正案を提出したが、厚生労働大臣の決意を伺いたい。
【厚生労働大臣】恒産なくして恒心なし、である。常用雇用を基本とすべきである