公務労協は、11月14日に甘利行政改革担当大臣に提出された国家公務員制度改革推進本部顧問会議の内閣人事局に関する報告について、推進本部事務局交渉を実施し、「労働基本権制約下において、代償機関である人事院の機能を使用者側となる内閣人事局に移すことは断じて認められない」と厳しく抗議した。
交渉は、13時から行われ、公務労協側は吉澤・岩岬の正・副事務局長、構成組織職長が参加し、推進本部事務局側は岡本次長らが対応した。
冒頭、岡本次長が「報告(概要)」に基づき、「顧問会議として、「報告」及び当日提出された欠席顧問からの意見と合わせ、大臣に提出した」と説明したのに対し、公務労協側は次の通り主張し、報告の問題点を厳しく追及した。
(1) 報告内容については、多々疑問や疑義があるが、最大の問題は、人事院の代償機能がどういう歴史的経緯や意義をもっている、すなわち憲法上、法制上の問題について、ワーキング・グループ(以下、「WG」という。)や顧問会議で十分検証していないことだ。
(2) 内閣人事局は「国家公務員の人事管理に関する戦略中枢機能を担う組織」とされているが、基本法にはない概念だ。それを根拠として、人事院の代償機能である試験、任免、給与、研修の企画立案、方針決定機能等を使用者である内閣人事局に移すことは、使用者の権限だけ強化するものであり、断じて認められない。
(3) 代償機能は、全農林警職法判決で労働基本権制約が憲法違反とならないための要件とされているものであり、代償機能が弱められれば、憲法問題になる。また、ILO勧告では現状の代償措置では不十分と指摘しており、それをさらに弱めることは受け入れられない。
これに対し、岡本次長らは、次の通り見解を述べた。
(1) 代償機能の問題は認識しており、過去の経緯について資料をお配りし、個別に説明した。日本以外の国の状況についても資料をお配りしている。それが十分かどうかは委員の皆さんの判断と思う。
(2) 基本法の一元管理、説明責任を果たすためには、人事管理の中枢機能を担う必要があり、その場合、試験、任免、給与等について手を触れられないのでは機能を発揮できないため、主体的に企画立案等を行うが、他方、代償機能ということがあるので人事院が勧告や意見の申出を行うことなどを考えることにしたもの。
(3) 報告内容で警職法判決に反することはないと考えている。いずれにしても、報告はWGや顧問会議の考えであり決めきったものではないので、具体的にどう対応していくかは、甘利大臣が判断していくことになる。
以上のように、推進本部事務局側は、報告はWGや顧問会議の考えであり、どう具体化するかは大臣の判断、との考えを示すに止まった。これに対し、吉澤事務局長が「報告内容と具体化に向けた検討については、引き続き交渉・協議をさせていただく。また、大臣が判断するということであり、公務労協としては認められない報告内容であるため、大臣との交渉を申し入れる」と要求し、交渉を締めくくった。
また、公務労協の公務員制度改革対策本部は、「労働基本権制約の代償措置と公務における公正・中立性を蔑ろにするもので、到底認めることができるものではなく厳重な抗議の意を明らかにする」との福田本部長談話を発表した。
以上
「論点整理に関する報告」についての談話
11月14日、国家公務員制度改革推進本部顧問会議(以下、「顧問会議」という。)は、多くの顧問が不参加のもと、高木顧問(連合会長)が提出した「拙速な対応をはかるのでなく、顧問全員が参加する機会を設定し、慎重かつ十分な審議・検討の確保をはかることが最低限必要である」とする意見書を無視し、座長の強権的会議運営により、「論点整理に関する報告」を了承し甘利行革担当大臣に託した。「論点整理に関する報告」は、前日の13日に開催された顧問会議ワーキンググループへの草野委員(連合総研理事長)の修正要求をも無視したものである。また、その内容は、労働基本権制約の代償措置と公務における公正・中立性を蔑ろにするもので、到底認めることができるものではなく厳重な抗議の意を明らかにする。なお、同顧問会議において甘利行革担当大臣は、「来年度予算への対応について、各省との交渉・了解等の作業
もしなければならず、総理や党にはかり最終的な方針を決めたい」との慎重な姿勢を明らかにしている。
「論点整理に関する報告」は、①今回の公務員制度改革の理念と内閣人事局の設置の目的について、国家公務員制度改革基本法の基本理念を再掲し、②顧問会議より検討依頼がなされた論点を5点について整理、③内閣人事局の担うべき機能及びその組織のあり方について、内閣人事局があるべき勤務条件について基本的な企画立案を行い、人事院に対して必要な検討、勧告・意見申出を行うような仕組みとする方向で、できる限り見直す等を指摘している。
労働基本権が制約される現行法制度において、内閣人事局が企画立案等を所管または関与することは、断じて許されない。ILОをはじめ国際的にも代償措置たり得ないと判断されている現在の人事院の機能・権限等を使用者である内閣人事局に移行することは、現行制度さえ否定するものであり、全農林警職法事件最高裁判決にも矛盾するものに他ならない。今後の次期通常国会をはじめとする政府の対応如何によっては、連合との連携のもとILО結社の自由委員会への再提訴も辞さない覚悟を明らかにする。
また、公務員人事において公正・中立性を確保する機能について、十分かつ具体的さらに専門的な検証を行うこともなく、試験、任免、分限・懲戒等の企画立案機能を内閣人事局に移管することは、行政の継続性及び安定性、公正性と中立性に重大な影響を及ぼすものとして容認できるものではない。
公務労協は、「論点整理に関する報告」に基づく法律措置に反対し、内閣人事局について、非現業公務員の協約締結権付与を前提とした労使関係において政府を代表する責任ある使用者としての権限を具備する組織とすることを強く求める。さらに、連合との連携のもと、ILO勧告をみたした労働基本権の確立と民主的公務員制度改革の実現を不断に追求するものである。
2008年11月18日
公務公共サービス労働組合協議会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部
本部長 福 田 精 一