公務員連絡会地方公務員部会は、8月12日午前10時から、2008年人事院勧告を受けて全国人事委員会連合会(全人連)に対する申入れを行った。公務員連絡会側は、地公部会の佐藤議長(全水道委員長)、金田企画調整委員(自治労書記長)、藤川地公部会事務局長、江﨑次長と地公部会幹事が出席、全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表及び政令市人事委員会の代表者が対応した。
冒頭、佐藤地公部会議長は、要請書(別紙)を手交し、「勧告内容は、月例給と一時金据え置きというもので、組合員の生活実態から見て極めて不満である。地方公務員にとっての最大の関心事であった住宅手当の持ち家廃止について、本年は見送ることになったが、住宅手当は生活関連手当であり、国と地方では職員の住宅政策は根本的に異なる現状を引き続き訴えていく。一方で、地方公務員給与引き下げの政治圧力と財政難による給与の独自削減が行われており、賃金水準の改善、標準的給与確立、臨時・非常勤職員の処遇改善の取り組みなど、課題は山積している。全人連におかれては、十分に協議する場を継続して頂くと同時に、各人事委員会におかれても各組合と率直な交渉・協議が保障されるような取り扱いをお願いする」と申入れの趣旨を述べた。
引き続き、藤川地公部会事務局長が要請書の内容を説明し、全人連の努力を求めた。
また、日教組から、国の財源削減は給料・手当の削減の理由とはならず、見直しをするならば、十分、納得のいく説明を果たすことを要請した。
こうした地公部会の要請に対し、内田会長は以下の通り回答した。
<全人連会長回答>
○ 全人連会長の内田です。私から全国の人事委員会を代表してお答えいたします。
○ ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、役員県を通じて、全国の人事委員会にお伝えいたします。
〇 まず、最近の経済状況ですが、政府の8月の月例経済報告では、「景気は、このところ弱含んでいる。」とし、先月の報告まであった「回復」という表現を削除しております。2002年2月から始まった戦後最長の景気回復が終わり、景気が後退局面に転じている可能性を示唆しております。また、先行きにつきましても、「アメリカ経済や原油価格の動向などによっては、さらに下振れするリスクがある。」と警戒感を示しております。
〇 このようなアメリカをはじめとする世界経済の減速に加え、原油や原材料の価格高騰により、企業収益が悪化するとともに、食料品やガソリンの相次ぐ値上げが家計を圧迫し、国民生活を取り巻く環境は厳しいものとなってきております。
○ さて、本年の人事院勧告ですが、既にご承知のとおり、昨日、国会及び内閣に対して、勧告が行われました。
○ 人事院勧告によると、民間給与との較差は、136円(0.04%)と極めて小さく、俸給表の適切な改定には不十分であるなどの理由から、俸給表及び諸手当の改定を見送り、昨年、見直しに着手するとしていた住居手当については、引き続き検討を進めるとしております。
○ また、特別給につきましても、民間の支給割合と概ね均衡しており、支給月数の増減を行わな いとしております。
〇 その一方で、医師の人材を確保するため、来年4月から、年間給与を平均で約11%引き上げることが適当であるとして、医師の初任給調整手当の大幅な改善を行うこととしました。
○ 職員の勤務時間につきましても、過去5年間の調査結果を踏まえ、来年4月から、1日あたりの勤務時間を7時間45分とするよう勧告しました。
○ 詳細につきましては、これから人事院の説明を受けるところです。各人事委員会にとりまして、人事院の勧告は、必ずしも、直ちに、これに従うべきものではありませんが、今後の各人事委員会の勧告作業に影響を及ぼすものと考えられます。
○ 現在、各人事委員会では、秋の勧告に向けて、鋭意、作業を進めているところです。今後は、皆様からの要請の趣旨も十分考慮しながら、それぞれの人事委員会が、各自治体の実情を踏まえ、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。
○ 全人連としても、各人事委員会の主体的な取組を支援し、人事院や各人事委員会と、十分な意見交換や連携を行えるよう、努めてまいります。
○ 公務員の給与を取り巻く環境は、引き続き厳しい状況ですが、各人事委員会におきましては、本年も、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしてまいる所存でございます。
(別紙) 全人連への要請書
2008年8月12日
全国人事委員会連合会
会 長 内 田 公 三 様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄
2008年度地方公務員の給与勧告等に関する要請書
各人事委員会の地方公務員の給与・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
人事院は8月11日、政府と国会に対して給与勧告を行いましたが、月例給、一時金とも2008年度の国家公務員給与を改定しないとしました。
地方公務員の給与について、地域の民間給与を反映すべきだとする引下げ圧力が一層強まっている状況にありますが、地方公務員の給与は職務給の原則を踏まえ地公法24条の趣旨に基づいて決められるべきものです。また、地方公務員においては、厳しい財政事情のもとで特例条例等による給与減額が行われており、生活水準の低下を余儀なくされています。
各人事委員会におかれましては、これから本年の地方公務員の給与勧告に向けた作業を本格化されることと思いますが、地方公務員の生活を守るという人事委員会の使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.民間給与実態を精確に把握し、地方公務員の生活を改善するための賃金水準を確保すること。
(1) 人事院勧告を踏まえ、当該職員団体との十分な交渉・協議のもと対応を行うこと。
(2) 配分については職員団体と十分交渉・協議すること。
(3) 燃料費等が高騰している状況を踏まえ、較差外手当としての交通用具使用者の通勤手当を引き上げることなど、地方公務員の実情を踏まえた勧告を行うこと。
(4) すべての在職者が定年まで昇給が可能となるよう、号給を延長すること。
(5) 一般職員の勤務実績の給与への反映の基準については、十分な交渉・協議、合意を前提にすること。
2.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みを行うこと。
(1) 全国人事委員会連合会の体制・機能の強化や人事委員会相互の連携方策などについて、組合との意見交換を進めること。
(2) 「人事委員会の機能強化及び連携方策等に関する検討会報告書」にとらわれることなく、人事委員会が第三者機関として十分な機能を発揮すること。
3.独自の給与削減措置が行われている自治体は、減額措置後の給与に基づく公民較差を基本とすること。
4.教育職員の給料表・諸手当の勧告にあたっては、当該組合との交渉・協議を通じて理解と合意を得るよう努めること。
5.非常勤・臨時採用職員の処遇改善に関する指針を示すこと。
6.人事院勧告において示されたように所定勤務時間を週38時間45分、一日7時間45分、実施時期は2009年4月1日と明示した勧告を行うこと。
7.「不払い残業」の一掃、変則・交替制勤務職場における労働時間短縮、在庁時間の削減目標の策定など超過勤務縮減の具体策を示すこと。