【人勧情報】職員福祉、給与局長交渉で回答引き出す
〔勧告は8月上旬、官民較差はほぼ均衡、一時金は昨年民調結果を若干下回る結果、住宅手当見直しは来年へ見送り〕
公務員連絡会は、7月31日、人事院の職員福祉局長、給与局長と二度目の交渉を実施した。この交渉は、23日に実施した2008人勧期の第2次中央行動の際の両局長との交渉で明確な回答が示されなかったことから行ったもので、人事院側は、①勧告日は8月上旬で調整中、②月例給の官民較差はほぼ均衡、③一時金は昨年の民調結果を若干下回る見通し、④本府省業務調整手当創設を勧告、⑤住居手当の見直しと通勤手当の改定は見送る方向、⑥所定勤務時間の短縮については準備等の最終的確認の段階、などの回答を示した。このため、公務員連絡会側は「厳しい状況の中、組合員は懸命に頑張っている。残された期間は少ないが、総裁回答の中ではわれわれの要求の実現に向けて最大限努力していただきたい」として、最後の努力を求めた。
公務員連絡会は、交渉終了後、幹事会でこの内容を分析し、①官民較差が均衡していることから月例給の改定勧告はない見通しであること、②一時金については、まだ結論が出ていないこと、③所定勤務時間の短縮勧告については最終調整を行っている段階であること、など勧告をめぐる認識を確認した。公務員連絡会は、勧告日前には委員長クラス交渉委員による人事院総裁との交渉を行い、最終的に勧告内容を確定することとしている。
この日行われた人事院職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次の通り。
<人事院職員福祉局長交渉の経過>
人事院川村職員福祉局長との交渉は、午後2時から行われ、公務員連絡会側は書記長クラス交渉委員が臨んだ。
冒頭、吉澤事務局長が現時点での局長の見解を求めたのに対して、川村局長は、以下の通り回答した。
1.所定勤務時間の見直しについて
本年の民調結果の集計はほぼ終了し、最終段階の精査をしているところであるが、概ね昨年並みの数字がでる見込みである。現在、各府省における業務の合理化・効率化の検討状況、勤務時間の短縮を行った場合に窓口業務や交替制勤務の職場において行政サービス水準を低下させない勤務体制が準備されているか等に関して最終的な確認を行っているところである。
2.超過勤務の縮減について
現在、政府全体として取り組んでいる在庁時間削減の取組状況については、勧告を目途としてとりまとめ、情報提供を行うこととしたい。
他律的業務に係る超過勤務の縮減に関しては、法令協議、予算関係、国会関係など業務ごとの縮減の必要性等について言及するとともに、他律的な業務の比重の高い部署における超過勤務の上限目安の設定などの検討や早出遅出勤務の活用促進のための取組を進める旨を報告する予定である。
これらの回答に対して、公務員連絡会側は、次のとおり局長の見解を質した。
(1) 所定勤務時間の見直しについては、民間調査結果の内容はほぼ固まったと考えてよいか。3月段階から「各府省の準備状況を踏まえて」との回答を受けており、本日は、その準備状況の最終確認を行っているとの回答であるが、「短縮勧告を行う」と明確に回答してもらいたい。加えて「来年4月から実施する」ということを勧告に明記し、早急に実施すべきだ。
(2) 超勤の縮減は、実効性の問題につきる。他律的業務、とくに国会関係などにおける超勤の縮減は重要な問題であり、人事院として強い決意を持った主体的な問題提起が必要である。本日の回答の「上限目安」とはどのようなものなのか。施策を特定するのではなく、われわれの意見も含め幅広い視点で検討していくことを求める。
これらを受けて、川村局長は次のとおり考えを述べた。
(1) 民調結果に基づき勧告をするという基本的スタンスは変わらない。しかし、各方面の見直しに対する関心が高く、現在は、問題が生じないように最終段階での精査と確認を行っており、その上で最終判断する。実施時期についての皆さんの要望は重く受け止め検討したい。
(2) 「上限目安」というのは、それを念頭において縮減に努めるものであるが、縮減のための施策はこれにとどまるものではない。超勤縮減は重要かつ喫緊の課題であるとの認識の下、さまざまな取組を組み合わせることによって、効果が上がるよう対応を進めていきたい。
これらのやり取りを踏まえ、吉澤事務局長は「いまの局長回答は、本年勧告する方向で最終調整しているという回答があったものとして受け止める」と連絡会としての認識を示した上で、「本日申し上げた要求を踏まえ、総裁回答に向けて最大限努力していただきたい」と強く求め、交渉を終えた。
<人事院給与局長交渉の経過>
人事院吉田給与局長との交渉は、午後2時25分から行われ、公務員連絡会側は書記長クラス交渉委員が臨んだ。
冒頭、公務員連絡会吉澤事務局長が局長の回答を求めたのに対し、吉田局長は、以下の通り回答した。
1.勧告日について
8月上旬を目処に調整中である。
2.月例給の官民較差について
官民較差はほぼ均衡している状況である。
3.特別給について
特別給については最終的な結果を言える段階にないが、昨年の民調結果を若干下回るのではないかとの見通しである。
4.その他の手当について
(1) 本府省業務調整手当については、職員団体を含め関係者のご意見を聴きつつ検討を進めてきたが、先日お示しした措置案の内容で、平成21年度からの実施を勧告することとしている。
(2) 住居手当については、その見直しについて昨年の報告で言及したところであるが、本年は官民較差もほとんどない状況であることから、見直しを見送る方向で検討している。報告において、来年の勧告に向けて自宅に係る住居手当の廃止の検討を進めるとともに、借家・借間に係る住居手当については、高額家賃負担者の実情を踏まえた手当の在り方について引き続き検討を進める旨を言及することとしている。
(3) 交通用具使用者に係る通勤手当については、民間の支給状況と現行の手当額が改定を要するほどには離れてはいないこと、過去においてもガソリン価格の上下動に直接連動した改定は行っていないことなどから、本年は手当額の改定は見送る方向で検討している。
5.医師の給与改善について
国の医療施設に勤務する医師の給与が民間病院や国立病院機構に勤務する医師の給与を大きく下回っていることから、国の施設における勤務医確保の必要性を考慮し、初任給調整手当について特別の改善を行うこととしている。
以上が勧告に関する事項である。次に報告事項について申し上げる。
6.給与構造改革期間終了後の取組について
給与構造改革期間終了時点において、これまでの改革の効果を検証し、引き続き地域間での配分の在り方や能力・実績主義の推進の観点からの見直しを検討することに加え、60歳代前半における雇用を前提とした給与水準・体系の在り方について検討を進める旨を言及する予定である。
7.地域手当の支給割合の改定について
平成21年度における地域手当の暫定支給割合について、支給地域における職員の在職状況を踏まえて改定を行うこととしている。
8.非常勤職員の給与等について
非常勤職員の給与決定に関するガイドラインについては、先日お示しした案を、勧告後速やかに事務総長通知の指針として発出することとしている。さらに、非常勤職員の在り方に関して、政府全体で幅広く検討する必要性について言及することについては最終的に検討している。
9.人事評価結果の給与への反映について
既にお示ししている措置案の概要を報告において示し、試行の結果も踏まえ、人事評価制度の施行までに最終的な結論を得て必要な制度整備を図る旨を言及することとしている。
回答に対し公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質し、要求実現を迫った。
(1) 勧告日については、「8月上旬」との不明確な回答だが、いつ頃確定するのか。
(2) 「官民較差はほぼ均衡」との回答だが、それは月例給については改定勧告を行わないということか。また、較差が伸びなかった理由は何か。また、
(3) 一時金は民間実態は昨年より若干下がるということだが、月数の引下げには至らないと受け止めていいか。諸物価高騰の下の生活実態から、組合員は重大な関心をもっており、維持することを強く求める。
(4) 本府省業務調整手当を勧告することは極めて遺憾である。地方の原資を使うことになるので、地方の職員が納得できる説明が必要だ。本府省の問題は何よりも実効性のある超勤縮減が先ではないか。総裁交渉でも遺憾の意を表明せざるを得ない。
(5) 住居手当について本年の見直しを見送ることにしたことについては歓迎したい。来年は見直すということを報告するとのことであるが、今後とも十分な交渉・協議を行い、合意に基づいた検討を強く求めておきたい。
(6) 通勤手当については必要経費の実費弁償である。これまでガソリン価格の上下動に合わせてこなかったと言うが、今回の上げ幅は大きい。地方の組合員の要求には極めて強いものがあり、ギリギリまで努力してもらいたい。
(7) 地域間配分、能力・実績主義の推進の観点からの見直しや60歳代前半層の雇用を前提とした検討については、人件費を下げることが目的であってはならない。検討に当たっては十分な交渉・協議をさせていただきたい。
(8) 非常勤職員の問題については、解決に向けてスタートを切ったことは評価する。しかしこれは一歩に過ぎない。雇用確保策など、次のステップに踏み出せるよう、報告では人事院として強いメッセージを出していただきたい。
これに対し吉田局長は、次の通り、見解を示した。
(1) 勧告は8月上旬からお盆までの間に行われてきており、その範囲になると思うがいつ確定するかは現時点ではわからない。
(2) 較差が伸びなかったのは、中小や地場企業の伸びが弱かったことと、公務の方で高齢層の退職者が減り、採用抑制で若い人も減っているので、それが較差に影響しているかどうかはわからないが、公務の平均給与額を引き上げたことが考えられる。また、「ほぼ均衡」ということからは、論理的には改定勧告はないということになるが、最終回答は総裁交渉で申し上げる。
(3) 一時金がどうなるかは、現段階では申し上げられない。数値が確定した段階で二捨三入七捨八入というルールにしたがって措置することになる。
(4) 本府省手当の原資は本府省以外で働いている人の原資をその分削ることになるが、本府省の業務の困難性、特殊性に対してできるところから措置しておきたいということであり、ご理解いただきたい。
(5) 住居手当について協議は行うが、去年から今年の流れを考えれば、持ち家に対する手当の役目は終えているという認識であり、来年廃止する準備に入っていることから、どう終わらせるかについて論議をさせていただきたい。
(6) 官民較差が均衡している中で、通勤手当だけ上げることはバランスを失し、適当でないと考えている。民間との均衡という、対外的に説明できるデータとしては改正を必要とするほどの差はない。引き続き、この問題については注目していきたい。
(7) 地域間配分については見直しから5年経つことになるので、再度地域間較差を算出し検証する必要がある。加えて評価制度も2〜3年やってみて、能力・実績主義との関係で問題があれば、評価制度に問題があるのか、給与制度に問題があるのかを検証し、虚心坦懐に見直していくということだ。さらに新たに定年を延長し60歳を超えて雇用していくとき、総人件費を増やさないという要請の下で職員の生活不安に繋がらないようにしていくためには給与制度をどうしたらよいかの検討も必要だ。公務員の給与に対しては各方面からいろいろ批判が行われるので、国民の理解を得ながら対応できるかどうかが大事であり、そのための条件整備を行いたいということである。引き続き、皆さんとは話し合っていきたい。
(8) 非常勤職員の問題については、人事院としてしっかり対応していきたい。
最後に、吉澤事務局長が「厳しい状況の中、組合員は懸命に頑張っている。人事院勧告は唯一の労働条件改善のための手段であり、総裁回答の中ではわれわれの要求の実現に向けて最大限努力していただきたい」と強く求め、交渉を締めくくった。
自宅に係る住居については、自治労・公務員連絡会は、春闘段階から人事院交渉において、国と自治体との住宅政策の違いなどを根拠に、廃止反対を強く主張してきた。さらに、人事院勧告期において個人要請はがき、7・23中央行動などの取組を重ねてきたが、「見直しを見送る方向で検討している」という本日の回答は、これら取組の成果である。しかし、人事院は自宅に係る住居手当について来年度は廃止の検討を進めるとしているため、今年以上に厳しい状況にあると判断せざるを得ないことから、いっそうの取り組み強化が求められている。