-非常勤給与改善の予算確保と報告での「次のステップへの言及」を要請-
公務員連絡会・賃金労働条件専門委員会は、7月17日13時30分から人事院の松尾職員団体審議官付参事官と交渉を実施し、7月8日に提出した「「非常勤職員の給与に関するガイドライン(案)」への意見等について」(以下「意見」という。)に対する人事院の回答を求めた。
冒頭、石原委員長が人事院の回答を求めたのに対し、松尾参事官は次の通り答えた。
(1) 「初号俸の俸給月額を基礎」ではなく「最低」とすることについて
今回のガイドラインは、非常勤職員の給与決定についてこれまでに定めたものがなく、各府省まちまちであり、その結果給与がバラバラであった。そこで、類似する職務の常勤職員に適用されている俸給表の1級の初号の俸給月額を基礎とすることにしたものであり、初号を下回る俸給月額はないので「最低」という言葉は使う必要はないと考えている。
(2) 「相当長期」ではなく「6カ月以上」と明記することについて
昭和30年通知(34-144給与局長)では「6カ月以上」と書いてあり、今回は書いていないが、30年通知の趣旨は踏まえているので「相当長期」について「6カ月以上」と受け止めていただいてよい。明記していないのは、例えば基準日に5カ月勤務している者について基準日後も勤務してもらう場合に手当を支給しようとしたとき、それを排除しないようにするためである。
(3) 期末手当の基準日前1カ月以内の退職者への支給について
期間を限った雇用であるという非常勤職員の雇用形態等から、基準日前1カ月以内退職者への特例支給措置は必要がないと考えている。
(4) 勤勉手当も支給することについて
勤勉手当は、常勤職員の場合、勤務評定または新たな人事評価による勤務成績に応じて支給される手当であるが、非常勤職員は人事評価の対象となっていないことから明記していない。ただし、各府省において、勤勉手当を支給することを否定するものではなく、支給する場合には何らかの評価を行うことによって勤務成績を判定するよう指導していきたい。
(5) 「支給するよう努めること」を「支給すること」に改めることについて
民間では非常勤職員への一時金の支給は6割弱であること、また予算と関わりがあること、などから努力義務としている。各府省に、できるだけ支給するように働きかけてまいりたいし、支給状況を点検していきたい。
(6) 社会保険・雇用保険を適用するよう指導することについて
各府省において、雇用者の責任として、適用されているものと考えている。雇用期間を2カ月ごとに区切ることによって適用しないということが問題とされたことがかつてあったが、不利に扱われていることがあれば、各府省、所管府省に申し入れていただきたい。
(7) 「確認事項」について
①今回のガイドラインは、最低の基準を定めるものであり、例えば、医療職や労働局の相談窓口など比較的高い賃金が支払われている職員について、それを引き下げるものではない。
②「職務内容」に応じて、初任の級以外の級の初号の俸給月額を基礎することができることにしており、例えば2級、3級相当の専門的な仕事をしていればその級の初号を基礎にできる。
③「在勤する地域」を考慮するとは、ご指摘の通り、少なくとも在勤する地域の地域手当の割合を給与に加算するという趣旨である。
④「職務経験等」を考慮するとは、常勤職員に準じて「学歴免許」「経験年数」に応じた調整を行うことができるという趣旨である。
⑤通勤手当は実費弁償であることから、「支給すること」とはっきりした書き方をしている。ただ、非常勤職員は官署に近いところに住んでいる人を雇用しているし、転勤もないことから支給上限について常勤職員と同様に取り扱うというところまでは想定していない。
以上のように、松尾参事官は公務員連絡会の意見にほぼ沿った回答を示した。これに対し、公務員連絡会側は以下の通り更なる努力などを求めた。
(1) 公務員連絡会としても非常勤職員の実態調査を行ったが、その結果を踏まえると、このガイドラインによって、相当改善されることになる。発出後は、各府省がこれに沿って対応するよう指導していただきたい。
(2) ガイドラインに沿って改善できるよう、人事院として、予算措置について財務省や各府省に働きかけていただきたい。
(3) ガイドラインはいつ頃発出し、どういう形式か。
(4) 地域手当、期末手当、通勤手当以外の手当には言及されていないが、例えば特地勤務手当や寒冷地手当などは支給できないということか。
(5) 新たな人事評価制度との関わりで言えば、成績率の判定をしなければならないのはまだ先の話ではないか。
これらに対し松尾参事官は、次の通り答えた。
(1) このガイドラインによって改善になると考えているが、予算措置の問題があり、このガイドラインに沿った給与を払うことにすると雇用人数を減らすことになり仕事がきつくなることがあるかもしれないので、ある程度の時間は掛かるかもしれないが、こういう形になってほしいと考えている。規程の整備を求めているので、その整備状況をフォローし、足りないところがあれば指導していきたい。
(2) 財務省に対してはガイドラインの内容について説明を行うことにしているが、予算を増やしてほしいというところまでは難しい。
(3) ガイドラインは勧告後早期に出すことにしており、事務総長通知で出すことを考えている。文言の修正は難しいと思うが、皆さんのご意見を踏まえながら、8月中に出すことになるかもしれない。なお、各府省はこのガイドラインを踏まえて21年度の予算要求をすることになる。
(4) ガイドラインに書いてない手当について支給してはいけないということではないので、常勤職員と非常勤職員の位置づけの違いを踏まえて、各府省の実情を勘案して対応していただければよいのではないか。
(5) 勤勉手当の性格上、成績の判定が何もないまま支給することは難しいので、徐々に形を整えてほしいと思っている。常勤職員と同様の人事評価を行わなければ支給できないということではない。
これらのやり取りを踏まえ、最後に石原委員長が①このガイドラインは、非常勤職員の給与の最低基準を定めためものであり、現在の非常勤職員の給与を引き下げるものではないこと②「期末手当に相当する給与」とされている意味は、「勤勉手当に相当する給与」の支給を排除するものではないこと③「相当長期」については、昭和30年の通知の趣旨を踏まえたものであること、の確認を求めたのに対し、松尾参事官が「本日申し上げたとおりである」としてこれを確認したことから、さらに「ガイドラインに沿った措置が実現できるよう、人事院として予算の確保に尽力されたい。非常勤職員の処遇等の改善に向けて、ガイドラインは一歩前進であるが、人勧期要求で求めているように、本年報告で、改善に向けた次のステップに言及していただきたい」と強く申し入れた。申入れに対し、松尾参事官が「ご要望は承った」と応えたことから、石原委員長から「来週の給与局長との交渉では明確な回答をいただきたい」と重ねて要望し、交渉を締めくくった。