第2回定例道議会における支庁再編条例の強行可決に対する
道本部の見解
自治労北海道本部
①会期を1日延ばした第2回定例道議会は、28日未明、現在の14支庁を「9総合振興局・5振興局」に再編する「道総合振興局設置条例」を与党(自民党・公明党)多数の力で強行可決した。
現在の14支庁体制となった1910年(明治43年)から98年、戦後の1948年(昭和23年)の北海道支庁設置条例により現在の体制となってから60年、まさに歴史的な制度変更である。60年前の条例制定に先だっても、支庁所管区域を「9支庁」に再編する答申が出されたが、市町村、地域住民、経済団体ばかりか道庁内部からも強い反発が起こり、結果的に14支庁体制が存続して戦後北海道の自治体制がスタートしたという経緯がある。今回も、市・町村の地方四団体や、住民、地域経済団体、民主党・連合ばかりか、与党議員の一部からも強い反対があったにも関わらず、高橋知事と自民党は、これを押し切って支庁再編条例を強行可決した。
自治労道本部は、昨年の第4回定例道議会で提示された支庁再編案「新しい支庁の姿」(原案)に対して、「結局は『まず道庁ありき』の立場で、道庁の効率化・合理化を進めるために、負担を市町村に求めようとするものでしかないことが明らか」「支庁改革は地方分権改革の一環として、道州制・合併問題(地方財政危機)・支庁改革を三位一体のものとして進め、北海道における『新しい自治の姿』を具体化していくために努力していく」との見解をまとめた。また今回の第2回定例道議会の開会に当たっても、「さらに慎重な検討と現在の支庁制度改革案の撤回を求める」との考えを明らかにしてきた。
②そもそも支庁制度改革は、堀道政下で進められてきた「地方分権型」道政改革では、いわばその総仕上げとして討議されてきたはずのものであった。地方分権改革の先駆的モデルとして、かつて全国的にも高い評価を受けたこの道政改革運動は、高橋道政下で歪められ、後退し、今回の支庁制度再編の強行で、ついに停止させられたと言わざるを得ない。
支庁制度改革は、「地方政府の確立」を選挙公約とした堀道政の1期目において、これを具体化するために、1995年8月に設置された「道政改革民間フォーラム」の提言に基づき実質的にスタートした。道政改革推進委員会(97年7月設置)が中心となって進めてきたおよそ100項目にわたる意欲的な道政改革運動は、「時のアセス」、政策評価条例、情報公開制度、外部監査制度、オンブズマン制度などの先駆的な成果を実らせ、全国的にも高い評価を受けてきた。その中での支庁制度改革の位置づけは「道政改革の一環として、支庁のあり方を切り口にした道政全体の改革につながる取組である。支庁制度改革の目指すものは、道行政の政策展開圏域における地域行政の推進に当たり支庁の主体性を強めることにある。そのため地域行政に係る機能や人員は本庁から支庁へシフトしなければならない」(道「支庁制度改革に関する方針」2002年11月)というものであった。
いわば道政の軸足を市町村重視に移し、これを補完する支庁制度に再編し、北海道における自治のあり方を根本から転換させようとする意欲的な試みであった。
③高橋道政はこの視点を180度逆転させてしまった。市町村重視の地方分権型道政改革運動は、道庁主権型のありふれた行財政改革に変質してしまった。
就任当初の高橋知事は「堀道政下で進められた道政改革を継続する」ことを約束していた。しかしこの間の高橋道政は、市町村の財政危機に対しても冷淡な姿勢を貫き、「平成大合併」に際しては、言葉だけの「補完性の原理」という美名のもとに、道の役割を「市町村の自立(合併)をお手伝いする」ための道庁に、その責任の比重を下げてしまった。当時、高橋知事が示した「北海道版コンパクトシティー」構想は、20程度の拠点都市に住民を集約する(=大合併推進)というものであり、すでにこの時点で、「市町村自治を補完する支庁」という考え方を放棄していたものと考えられる。
今回の支庁再編に対する考え方でも「地域の個性と主体性を一層発揮させる地域主権型社会の実現に資するための、将来を見据えた支庁制度改革の推進」(「新しい支庁の姿」(修正案)本年6月)という文言は残されている。しかし支庁制度の将来的姿は「最終的には地域における最小限の出先機関」とされているように、市町村とともに圏域行政を進める道庁機能は実質的に廃止する方向性が示されていると考えることができる。
④今回の道議会における論議や、地域への説明会で語る高橋知事の考え方は、あくまでも道財政危機への対処策(職員の大幅削減のために)でしかない「支庁制度の改革」であり、「地域が崩壊する」とする地域の反発に対しても「地域振興条例の検討」という単なる地域振興策としてしか支庁制度の改革を考えていないことが明らかにされた。
頓挫した地方分権型道政改革運動を再び推進するためには、やはり新しい道政・新しい知事によるリーダーシップが必要だ。高橋道政には、もはや「地方分権」「地域主権」「道政改革」という言葉を語る資格はない。道本部は、今回の支庁再編を強行可決した高橋知事と自民党に対して強く抗議するとともに、引き続き、国政の場で、条例施行の条件とされた道議選挙区を定めた公職選挙法改正に反対する取り組みを行っていくこととする。