男女平等産別統一闘争の一環として、自治労本部は6月10日、厚生労働省要請行動を実施しました。概要は以下のとおりです。なお、要請書については別紙をご参照ください。
【厚生労働省:6月10日 10:00〜11:00】
厚生労働省:雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課堀補佐以下、関係局・担当課から9人が出席
自治労:徳茂副委員長、中島健康福祉局長、松本労働局次長
徳茂副委員長より今回の要請の趣旨について説明し、要請書(別紙参照)を手渡した。続いて厚生労働省から要請の重点項目について以下の回答があった。
1. ワーク・ライフ・バランス社会の実現をはかること
仕事と生活の調和の促進は、少子化対策、社会経済の持続的発展の観点からも重要な課題と認識している。07年12月に官民トップ会議が決定した「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を踏まえ、社会的機運を高め、社会全体で進められている。すべての人がはたらきやすい社会にすることが重要であり、仕事と生活の調和の整備に努めていきたい。
2.(3)パートタイム、有期契約労働者の均等待遇を実現すること
08年4月にパートタイム労働法が施行され、就業実態に合わせて均等待遇を明確に位置づけた。施行を着実に進めているところだ。
③介護労働者の処遇改善をはかること
07年8月に福祉人材確保指針を改正した。その中に労働環境の整備や、研修等キャリアアップの仕組みを盛り込んでいる。今回の法律(介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律)についてもこの指針と同じ方向性にあると考えているので、指針に沿って事業を進めていきたい。
(5)ILO第100号条約(同一価値労働・同一賃金)の実効性を確保し、法改正を行うこと
労働基準法第4条で、「労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」としている。これによりILO100号条約の要請を満たしているので法改正は必要ないと考える。実際には、女性のほうが勤続年数が短いため賃金が低くなっているということもあるが、ポジティブ・アクションの推進、「男女間の賃金格差解消のためのガイドライン」(2003)の普及を進めていきたい。
3.(2)①男性の育児・介護休業取得促進の環境整備をはかること
男性の育児休業取得は重要な課題と認識している。「仕事と生活の調和推進のための行動指針」でも、取得率の目標を掲げて取り組んでいる。なかなか進まない実態があるが、各県の労働局で趣旨を徹底しているところだ。次世代育成支援対策推進法に基づく事業主の認定要件にもしている。認定企業は増えてきているが、男性取得者数1名であったり、取得期間が短い事業所が多い。「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」で、引き続き取得促進の検討をしていきたい。
②育児・介護休業取得中の所得保障を改善すること、介護休業取得中の社会保険料本人負担分を免除すること
育児に対する支援策として、94年に育児休業給付を創設した。当初は25%であったものを01年に40%、07年には暫定的に50%としてきている。給付は雇用保険で運営していることから、労使の保険料で成り立っており、両者の負担のバランス、保険料を払う側の納得が必要だ。育児休業中の社会保険料免除は、将来の年金制度を担う次世代育成の観点から設けているもので、介護についてはその趣旨に当てはまらないと考える。
③男性の出産休暇を制度化すること
現行の法律の中でも、産後8週間は男性配偶者が育児休業を取得できることになっている。制度化までできるかわからないが、「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」の中で検討したい。
(3)②育児時間取得時の賃金を保障すること(ILO183号条約批准の条件整備)
基本的にノーワークノーペイという原則。労基法上は有給規定がないので、労使の話し合いに委ねられている。原則的には難しいのではないかと思う。研究会でも働きながら子育てをできる環境を検討していきたい。
4.(2)被用者年金等社会保険の適用基準を拡大すること
雇用の流動化、労働形態の多様化により非正規労働者の割合が高まっており、老後の生活手段がない人たちが増えていると認識している。適用の拡大が望ましいが、一定の就労関係は必要だ。国民年金と厚生年金のバランスの問題もあり、慎重に検討する必要がある。
5. 労働組合におけるポジティブ・アクションを支援すること
労働組合の役員等に性による選考枠を設けることについては労働組合法第5条第2項第5号及び第3号に抵触する恐れがあると考えている。この個別判断についてはそれぞれの労働委員会が判断するものと考える。
これらの回答を受け、自治労は「現行法令の枠が様々にあるというのは承知しているが、ワーク・ライフ・バランスという大きな視点で政策全体を見直す必要がある。また、男女共同参画社会基本法との整合を追及していただきたい」と述べ、次のように質した。
1.少子化が進む中、ワーク・ライフ・バランスの考え方は必要不可欠。理念だけでなく、具体的な手立てが必要であり、少子化対策の観点で何が最重点と考えるか。
2.介護従事者は女性に片寄っており、低賃金で定着も悪い。これを克服する手立てについてどう考えるか。
3.育児休業給付は暫定的に50%となっているというが、この「暫定的」という意味合い、今後の見通しは。
4.社会保険のパート労働者への適用基準拡大について、雇用者の間でのバランスという視点で考えてほしい。
5.ILO100号条約を満たしているという説明だったが、これまで何度も条約勧告適用専門家委員会から指摘を受けており、今回(08年3月)明確に「法改正を」と勧告された。男女間賃金格差は日本の労使にとって大変重い課題だ。今までどおりしていれば解決するという認識ではまずいのではないか。しっかり受け止めてほしい。
6.労働組合への女性の参画について、男女共同参画の視点でどう労働組合政策を推進していくのか。男女共同参画基本法では民間の団体に対してもジェンダーバランスを求めている。労使の片方がバランスを欠いている現状を放置しているのは問題。ジェンダーバランスが取れるように、介入ではなく、支援を。
これらに対し、厚生労働省は以下のとおり回答した。
1.少子化対策については「子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議」を07年に設置し、議論をしているところ。保育サービスの提供などの子育て支援と、長時間労働をなくす働き方の見直しを車の両輪としてやっていくべきだと考えている。
2.「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」を設け、関係団体からヒアリング等を行い検討しているところ。介護のイメージが女性に偏っていること、賃金が低いことが男性が少ない要因だと考えている。イメージアップのためには優良事例の公表を進める。また、09年に予定されている介護報酬改定にむけてデータを提供し、賃金改善につなげたい。
3.暫定50%というのは、当時少子化対策という要請から給付の引き上げの議論がされ、当面09年3月までの措置となった。07.4.10参議院厚生労働委員会の付帯決議では、2010年以降の継続のあり方について検討することとされており、それまでには以降の対策を出していく。
4.被用者年金一元化法では、要件を満たせば、適用を広げることとしている。従業員300人以下の事業所については猶予がついているが、今後猶予を外していく方向だ。
5.ILO100号条約については法改正の指摘を受けており、日本政府の考えについて粘り強く説明をする必要があると思っている。欧米と日本では賃金制度が大きく違う。欧米では職務給が根付いているが、日本ではそうはなっておらず、複雑な賃金制度になっているので、立法化しても有効に働くか疑問である。啓発していればそれで済むわけではないとおっしゃるのはその通りだ。6月から「変化する賃金・雇用制度の下における男女間賃金格差に関する研究会」をはじめることとしており、男女間賃金格差解消に向けて取り組んでいきたい。
6.労働組合法では労働組合は労働者が自主的に結成するものとしており、行政の介入は民主性・自主性という趣旨に合致しない。労働組合の運営において男女バランスが偏っているのは承知している。女性がリーダーシップを取りにくいのは日本社会全体の問題で、労働組合もいっしょだ。今後の参考として受け止めたい。
最後に、徳茂副委員長がこれからもワーク・ライフ・バランスと真の男女平等社会の実現にむけて、積極的な意見交換が継続して行われるよう再度要請し、交渉を終えた。