公務員連絡会地方公務員部会は、5月21日16時30分から総務省に対する申し入れを実施し、地方公務員災害補償法改正にかかる問題点について質した。総務省からは栄公務員部安全厚生推進室長、野口課長補佐ほかが対応した。
冒頭、藤川地公部会事務局長が、地方公務員災害補償法の閣議決定まで公務員連絡会に情報提供がなかったことについて抗議した。これに対し、栄室長は、「2007年7月にまとめられた行政不服審査制度検討会においても報告が出ているため、既に承知いただいているとの認識もあり、また、4月11日の行政不服審査法改正案は閣議決定の直前まで動いており、事前に地方公務員災害補償法の全体像について描けなかったため、お伝えできなかった。一審制になることについてだけでもお伝えする必要があったかも知れない」と述べた。
次に、藤川事務局長が申し入れ書<別紙>をもとに、以下の改正案の問題点について、総務省側の見解を質した。
①審理が基金本部(東京)に一元化されることにより、地方の請求人等の利便性が低下することについて
②地方公務員の多様な実態を担保している支部審査会の廃止が、地方分権推進に逆行することについて
③審理の一元化により、支部審査会で採決取消しとなった事案が本部審査会で覆る可能性が失われ、誤審を招く恐れがあること
④審理の一元化により、事実の立証に基づく審理がされにくくなること
⑤審理の一元化により、請求者の救済を目的とする不服申し立て制度の救済率が下がる可能性について
これに対し、栄安全厚生推進室長は次のとおり回答した。
①、②については、審理員が支部審査会に出向き手続・口頭陳述を行うことを趣旨とする規定を改正法案を入れており、基金支部の書記に請求者とのやりとりを任せることで利便性は担保できると認識している。
③、④については、誤審の発生や立証の困難性については、一審制か二審制かの問題ではないと考える。むしろ、一審制により個々の事案の検討が充実し、慎重に審査することで解決されるのではないか。
⑤については、機会の回数で捉えるのではなく、審理プロセスの厳正さを確保することで、救済されるべき事案は救済されると考えている。
この後さらに公務員連絡会より以下のような問題点について問い質した。
①審理員を支部審査会に派遣し口頭陳述の実施することについては法律事項か、基金の運営指針による運用か?
②地公災法の二審制が一審制になることついて、審理の迅速性の立証はしたか?
③現在、地方公務員災害補償基金の救済率は、支部で30%、本部で10%未満となっているが、一審制をとると救済率は下がることになると思うが、それについての見解はどうか?
④支部審査会を残さない理由は何か?
⑤これまでの支部審査会には参与がおり、第三者による審査によって公正さが担保されてきた。一審制になった場合、第三者による審査はどのように保障されるのか?
これに対し、総務省は次のとおり回答した。
①文言上具体的な形ではないが、法律上、審理員が支部審査会に出向き手続をすることを想定した措置がなされている。また、地方公務員災害補償法に基づき、総務省として基金に対して技術的助言を行っていくことも考えている。
②2年前の行政不服審査制度検討会のなかでも関係省庁のヒアリングがあり、平均的月数、支部審査会11ヶ月、本部審査会9ヶ月という数字が出されている。一方、今回の行審法改正においては、「迅速性」は一審制化することにより体現されているもの
であり、地公災法もこれに従うものである。
③支部30%の救済率については、本部審査会に一元化されても一般論としては救済される事案であると考えているため、救済率の低下とはならない。一審制化については、司法と比べて客観性に劣る行政不服審査において迅速性な処理を重視する観点から選択されたもの。いずれにせよ、運用のなかで審査の公正さを担保していくことで補っていくべき。
④労災とある程度足並みを揃える必要がある。また、行政不服審査法の改正のなかでは、二審制から一審制への転換は大原則になっており、相当の理由がない限り例外は困難である。また、一審制のなかで、どのように公正さを担保していくかについて
は、我々も相応の配慮が必要と考えるところであり、だからこそ審判員の機能をより
実のある形で運用していくことが重要と考えている。
⑤請求人の利益を考慮し、代理人や参考人を立てて、今までと同様に第三者による審査をすることは可能ではないか。論理的に考えると、参与は地方公務員災害補償基金の業務規程で定められているので、その取扱いは、今後、基金内部でその是非を検討することとなるものと考える。
最後に、藤川地公部会事務局長より「我々としても新たな公務員バッシングを招くことは本意ではない。地方公務員災害補償法改正に対しては、二審制を維持という連合の方針で示された対応をしていく。今後も必要に応じて、我々の要求を十分踏まえた対応をされたい」と述べ、総務省申入れを終えた。