不信の極みともいえる公的年金制度は未だその信頼を回復するいたっていない。年金ほど複雑怪奇な制度はないだろう。その分かり難さが今日の混乱の土壌を作り出したともいえるかもしれない。
保険料の支払経過と年金の受取額を一目瞭然にする「年金通帳」方式の採用など全体をわかりやすくとにかく、そして広く公開することだ。
財源問題など抜本改革の前にやることは山ほどあるだろう。
さて、年金の受給できる年齢は全員が60歳と勘違いしている組合員も多いように思う。いやわからない人がほとんどだろう。
実はもう、1994(平6)年の法改正で、共済年金も厚生年金もすでに支給開始年齢は65歳と決まっているのである。
これでは定年後の生活の糧がなくなるので、特例的に本来の満額年金から減額(基礎年金)して支給開始年齢を段階的に引き上げる経過措置を講じているわけである。
たとえば、今年の3月末の定年退職者の場合は、63歳以降は満額支給されるが、それまでの3年間は減額される。来年3月末定年退職者からはいよいよ64歳に引き上げられる。
このように、段階的に引き上げられ、やがて1953(昭28)年4月2日以降生まれの人、学齢でいうところの「昭和28年」世代からは、この減額された年金がまったく支給されない時代にはいる。無年金時代の到来である。
もちろん、無年金となる年齢もこれまで同様段階的に引き上げられ、最終的には1961(昭36)年4月2日以降生まれの人、学齢で「昭和36年」世代、年齢では47歳以下の組合員からは完全に65歳にならないと年金は支給されない計画なのである。
そこで、この1953年4月2日生まれ以降の方々の60歳から65歳までの生活の糧はどうなるのか、とても退職金だけで食いつなぐというような呑気なことはいっていられない。
現在、その減額された分を補い、雇用と年金支給を繋ぐ制度として民間の再雇用制度に相応する再任用制度が公務員の場合整備されほとんどの自治体で条例化されている。
しかし、実際に運用されている実態は全道庁など極わずかとなっている。満額支給まで期間が短いのでなんとか食いつないでいけるということでもあろう。また、地域民間の実態の影響も大きい。
ところが、あと5年もするとそうはいっていられなくなる。まったくの無収入状態となるからである。
また、現行の再任用制度は、短時間勤務など年金を補填する程度の収入しか想定していないので、とてもリタイヤした後の生活費を完全にカバーする雇用条件とはなっていない。
そこで、人事院は昨年の勧告で「定年延長」と「民間並みの再雇用の義務化」という二つの視点を打ち出し、その具体化のために研究会をスタートさせている。
私たち公務員労働者は定年の延長を基本としながら、仮に再雇用制度であっても今度はその「義務化」が前提となる制度構築を求めていくことが必要だ。
無年金の時代の始まりは、いいかえれば「65歳まではみんな現役だ」という時代がすぐそこまで迫っていることだと思う。
先輩もそして後輩もその発想の転換を図りながら、安心の高齢雇用制度を求めていくことが急務となっている。
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