福田首相は経営側に「賃上げ要求」を求めているという。
曰く、「企業も、給与を増やして消費が増えれば、より大きな利益を上げることにつながる。給与引き上げの必要性は経済界も同じように考えているはずだ」
これはちょっとのん気というか森を見て木を見ない発想で、マクロの話としては正しいかもしれないが、実際はここ数年の春闘の結果をみると、賃金が上がっているのは大手企業の従業員だけで、圧倒的多くの労働者は横ばいか減少しているのが現実である。
だから、給与を増やす、すなわち賃金の引き上げは、昔のように社会横断的に働く人全体に波及しなければ消費は増えないし、企業の売り上げも期待できないのである。
今年も自動車などほんの一部の大企業では「賃上げ」が期待できるかもしれない。だが、今や春闘はかつての広がりは期待できない。大手の賃上げが中小に波及しなくなった。いや、自動車や電機など大手の産業内にさえ波及しないのだ。
それだけではない。消費の後退は定率減税の廃止とか社会保険料引き上げとか物価の高騰など自民党政治の政策的な誘因によるものである。
もっとえいば、労働分野の規制緩和の結果としての日雇い派遣に象徴される雇用の改悪・非正規雇用の拡大が構造的な消費の後退を生み出した。
これだけ所得格差が拡大するとパートの時給とか最低賃金の引き上げとかミクロの労働分配率の引き上げが実現しないととても経済全体の好転には寄与しないだろう。
正規と非正規の待遇の均等化と格差の是正、そして労働者全体に波及する賃上げこそ求められているように思う。 そして、消費の拡大と経済の回復は政治の果たす領域が極めて大きいことを知るべきである。
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