第29回全国町村職総決起集会にともなう総務省要請報告について(2008春闘情報No.7)その1
2月22日、自治労は第29回全国町村職総決起集会を開催した。
参加人数は、47県本部・462単組・806人(男性613人、女性193人 女性参加率23.9%)でした。これに先立ち、21日の午後、総務省に対し「町村財政対策に関する要請」および「町村自治体職員の賃金・労働条件等の改善に関する要請」を行った。
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別記のとおり、賃金・労働条件に関する要請について報告する。なお、町村財政対策に関する要請については、追ってご報告する。
<別記>
町村自治体職員の賃金・労働条件等に関する総務省交渉について(報告)
自治労・全国町村評議会は、2月21日13時30分から、総務省交渉を行った。
自治労からは本部より軍司組織局長、松本労働局次長、全国町村評より川本議長、山室副議長、長沢事務局長(本部組織局次長)ら全国幹事を含め14人が出席し、総務省からは、前田給与能率推進室長らが出席した。
はじめに、川本議長が要求書を手渡し、今回の重点要求項目としていた「1」「5」「6」「8」について、総務省の回答を受けた。
総務省回答は次のとおり。
(要求項目1)
地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に基づき、自治体の規模や地域における民間給与実態の状況等を総合的に勘案し、適正な内容となるべきものと考えている。今後もこのような考え方で必要な助言を行っていく。なお、昨今、給与制度・運用などについて、一部、不適正な事例が見られ、国民・住民から厳しい批判が集まっている。地方公務員に対する国民・住民の理解と納得を得るため、特殊勤務手当、級別職員数の是正など、引き続き必要な助言等を行ってまいりたい。
(要求項目5)
技能労務職の給与については、地方公営企業法第38条に規定されているとおり、生計費、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与等を考慮して定められるべきと考える。また、技能労務職の給与は人事委員会勧告制度が適用されておらず、労使交渉で決定される制度となっている。しかし、近年、国民・住民より、技能労務職の給与が民間と比較し高額であるとの批判が高まっているため、昨年7月「技能労務職員等の給与等の総合的な点検の実施について」により、技能労務職等の給与等について国民・住民に理解が得られるよう、自ら総合的に点検し、具体的な取組内容等を住民にわかりやすく明示した取組方針を、平成19年度中を目途に策定し、公表するよう要請したところである。これらを踏まえた労使交渉のうえ、住民の理解と納得を得られる適切な給与になるようにお願いしたい。
(要求項目6)
地方債は地方財政法第5条で「地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもって、その財源としなければならない。ただし、次に掲げる場合においては、地方債をもってその財源とすることができる」と定められているとおり、地方債を財源としないのが基本であるが、退職手当債は、団塊世代の大量退職や総人件費削減の必要性等を踏まえ、将来の総人件費削減等により償還できる範囲内で特例的に許可するものである。給与制度や運用が不適切な団体は、そうした不適正な制度や運用がなければ、それらに係る財政負担は縮小し、退職手当所要額はより少なくてすんだはずのもの。こうしたものにまで退職手当債の発行を認めることは、世代間の公平を著しく阻害するものであり、このようなものについて、退職手当債の許可に際し、制限を行うことは、給与等の不適正に対する制裁やペナルティーではなく、地方財政法第5条の趣旨に基づいて、世代間の公平を図ろうとするものであり、必要なもの。世代間の公平性を保つためにも、総務省としては定員管理、給与適正化計画を精査し対応していく。
(要求項目7)
勤務成績を給与に反映するためには、公正かつ客観的な人事評価制度を導入することが重要であり、地方公共団体にも要請している。また、2007年4月24日の閣議決定でも求められているとおり、地方公務員についても人事評価制度をそれぞれの任命権者が適切に実施すべきとの考えである。総務省においては、今後も小規模自治体の取り組み事例の紹介や必要な助言を行っていく。
これらの回答を受け、自治労側からは次の点を総務省に質した。
① 小規模自治体の技能労務職場においては、一人しかいない職種もある。給与情報を公開することにより、個人が特定され、個人情報保護法の観点からも問題がある。
② 町村職は地域に密接に関わる職務として、住民のために日夜奮闘している。技能労務職、一般行政職問わず、時には賃金カットも受け入れ公共サービスの維持に努めてきた。しかし、最近の総務省の指導は度を越している。地域実情に配慮し、行き過ぎた指導は行わないで頂きたい。
③ 説明責任というが、ラスパイレス指数や、各自治体の広報紙などにおいて、賃金水準は公表されており、全く公表していないわけではない。小規模自治体においては、地域の賃金水準を押し上げるのは役場になる。地域を活性化し、牽引していくためにも、行き過ぎた指導は行わないで頂きたい。
④ 人事評価制度については、小規模自治体である町村にはなじまない。極端な例では首長の好き・嫌いで評価が行われてしまう。人事管理の一環として人事評価を導入するのは時代の要請というのも分かるが、人事評価制度の目的について伺いたい。
これに対し総務省から、以下の回答があった。
① 個人が特定されてしまう恐れがあるケースまで公開しろという趣旨ではない。あくまでも個人情報保護法との均衡は保っていただきたい。ただ、国民・住民に理解を得られるよう、また、説明責任を果たす観点からも公表していくべきと考える。
賃金センサスはあくまでも一つの参考であり、この数字に引き下げるべきといっているのではない。政府の統計である賃金センサスに代わる正確なデータがあれば、それを使用してもいいので、比較公表することにより自治体の賃金水準を議論していただきたい。
② 地方公務員の給与について、住民の理解と納得を得ることは必要。今後もそういう視点から助言していく。
③ 公務員バッシングといった感情論での賃金批判があるのは確かだ。賃金決定のシステムを含め、広く理解が得られるよう各地方公共団体において、住民に対してしっかりと説明する責任があると考える。
④ 能力を適正に評価し、正しい処遇を行い、質の高い人材を育成する観点からも評価制度は必要と考えている。むしろ感情の良し悪しで評価がされるといった事例がないように、明確な基準による公平・公正な人事評価制度の導入を要請している。
最後に、自治労側から「都市においては十分な政策であっても、小規模自治体では不十分な場合があることを認識していただきたい。また、助言が受け止める側に圧力とならぬよう配慮し、小規模自治体の実状を反映した政策設計をお願いしたい」と強く要請し、交渉を終えた。