ガソリン税の暫定税率を今後も維持するのか廃止するのか、ガソリンは1円でも安い方がいいに決まっているが、なかなかこの問題は根が深い。
揮発油税、つまりガソリンを入れるたびにかかるリッターあたり約50円の税金。この税率の本則約24円が決められたのが1954(昭和29)年、今から54年前。これに約倍の暫定税、が決まったのがそれからちょうど29年後の74(昭和49)年である。
田中角栄が日本列島改造計画をもちだし、全国津々浦々に道路が建設され整備されていくことになった。それからすでに34年、道路は当時と比べ物にならないくらい立派になった。
どんな田舎道も埃の立つ砂利道を車で走ることはない。もちろん、まだまだ整備が必要な道路が道内でも多くあることはいうまでもない。
道路が立派なのはもちろん、この道路特定財源、とりわけ暫定税率のお陰なのだが、問題はまず第一に政府与党がいうように、今後もこの倍の「暫定税率」を10年も維持しなければならないのかどかという点が議論されなければならないと思う。
つまり、道路をどこまでつくるのか。自治体にとってもっと優先すべき行政サービスの分野があるのではないか、限られた財源をどう有効に活用すのるか、といった自治体政策上の議論が深められなければならない。単に、ガソリン税を維持するかしないかという問題だけではないということである。
次に、廃止された場合、自治体財政にどれほどの影響がつまり財源不足が生じるかということをきっちっと把握しておくことが重要となる。
自治体の予算編成は、すでに来年度のこの道路財源を見込んで編成しているので、仮に年度末で廃止されると、直ちに自治体予算はその前提が崩れ大混乱してしまう。
地方への道路財源は、新規のみならず、その維持管理、除雪そして道路建設にともなう借金の返済にまでも使われている。この収入が見込めないとなるとその財源を他から充当しなければならない。
道路特定財源は、総額5.6兆円、内地方分は2.2兆円。暫定税率分は国、1.7兆円、地方1.0兆円となっている。
この地方分が前述のような使用状況にあるのだが、逢坂誠二衆議院議員によれば、民主党は自治体財政には1円の迷惑もかけないように現在ミクロの代替案を検討して、近々国会に法案として提出する予定という。
マスコミは、「ガソリン国会」などと面白おかしく書き立てているが、民主党の基本的な姿勢は、まず、この不透明な道路特定財源の一般財源化にある。詳しくは、以下の民主のウエブサイトを参照していただきたい。
www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=12440
つまり、自治体が自由に使える財源に切り替え、その上で暫定税率を廃止する。結果としてガソリンが約25円程度安くなるということなのだ。これは、地方分権一括法以来の大改革につながる提案ともいえる。置き去りにされた地方税財源のありかたを根本から変えていく。
そこで、この自治体分2.2兆円の民主党の代替案は、今のところ、①国の直轄事業負担金の廃止=約1兆円、②道路財源の余剰金=約1兆円、③株の譲渡への課税=6000億円という内訳で「マクロ」であるけれど、具体的な検討が進んでいると逢坂議員は説明する。
さて、次の問題は国会情勢である。政府与党が譲歩せず、3月末までに、この暫定税率維持を盛り込んだ租税特別措置法案が成立しないと、4月1日午前零時をもって暫定税率が失効してしまうことになる。
すると、消費者はガソリンが直ちに25円安くなるので歓迎なのだが、自治体財政は、前述のような大混乱となる。これは最悪のシナリオといわなければならない。
「60日ルール」といわれるように、テロ特と同じように参院へ法案が送られ60日が経過すると否決したものとみなすという憲法の規定があり、今度は、衆議院で3分の2以上の賛成がないと成立しない。
この奥の手を再び使うのか、使うとしても4月1日を越えてはいけないと与党は考えている。
民主党が衆院でも多数であれば、道路財源は一般財源化され、それこそ地方には交付税としてこれまでの道路財源相当分が交付されてくる。
しかし、現実は民主党が政権を担っているわけではない。「ねじれ」国会である。道路財源にかかわる関係法案だけを分離して議論できればいいが、そんな土俵に与党が乗るとも考えにくい。
民主党は、この問題をガソリン税の25円問題に矮小化することなく、地方分権一括法以来の財政分権改革ととらえ、しっかり代替案をミクロに詰めて、早期に国会へ法案として提出、世論に訴えるべきだろう。この作業はまごまごしていられない。
急を要する
結局のところ、のちのち「ガソリン税解散」といわれるような解散総選挙を実施し、政権の交代を実現することがなによりの「代替案」かもしれない。道路特定財源への民意を問うのだ。自治体にとっても一番わかりやすい。
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