2012年10月19日

新しい政策は電力会社としての生き方を変える=連合北海道エネ・環委

連合北海道は、10月17日連合北海道エネルギー・環境政策委員会を開き委員56人が参加した。


委員会では、出村良平連合北海道エネルギー・環境政策委員長のあいさつ後、学習会(講演)があり、その後に2013年度 第1回連合北海道エネルギー・環境政策委員会が開かれ、連合北海道の取り組み(案)について確認した。

学習会は、「日本の新しいエネルギー政策と北海道の課題」をテーマに一橋大学大学院商学研究科教授 橘川 武郎(キッカワタケオ)さんが講演した。

以下、講演内容
「9月14日に政府が決定した『革新的エネルギー環境戦略』は、原子力依存からの脱却を明確にした点で画期的だと思う。ただ、原子力については現在、廃炉と推進が相克している状態にある。なぜ相克しているのかというと、政府として調整が不充分だからだろう。原子力(軽水炉)施設立地自治体は原発ゼロ後の地域経済を懸念しており、米国政府は核(兵器)拡散を懸念している。また、廃炉・新増設・再稼働の決定権限を持つのは、政府なのか原子力規制委員会なのかもあいまいな表現となっている。

2010年度の発電構成の実績は、原子力26%、再生エネルギー11%、火力60%、コジェネレーション(コジェネ)3%。今後のエネルギー政策の肝はコジェネの割合。しかし、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会では委員の理解力が無く、コジェネが火力に統合されてしまった。

推進派は事故対応に見られるように非現実的な設定で推進しているし、反対派は原発廃炉後の対案を作れていない。そこで私の考えは連合北海道の考え方に近いが「資源小国の日本では原子力はただちに放棄すべきではないが、過渡的エネルギー(廃棄物処理が未解決)であり、招来へむけてたたみ方を考えるべきもの(リアルでポジティブな原発のたたみ方)」と思っている。

2030年への基本方針は、再生可能エネルギーを可能な限り拡充し、省エネルギー(節電)を進め、石炭火力の高効率化を図り、それで電力が間に合わない場合は原子力。(引き算で原子力のウェートを決めるべき)

原発依存を低下させるのは難しいことではない。原発からの出口戦略を明確にする。例えば原発を火力発電所へ置換する。廃炉作業には時間がかかるので廃炉ビジネスは残り、原発地元経済への配慮となる。また国際的観点からすると、ナトリウム冷却を行う「もんじゅ」の経験は次世代の原発(トリウム炉等)を拡大しようとしている中印などに貢献できる原子力技術でもあるのでIAEA(国際原子力機関)にも参画してもらう。

再生可能エネルギー(地熱・小水力・バイオマス・風力・太陽光)については、北海道は大きな可能性を秘めている。阻害要因はさまざまな規制である。例えば地熱については自然公園法の規制や温泉業者の反対。小水力(農業用水や水道水)については法律の規制。風力は漁業権。しかし、大幅拡充を前提に、技術的・制度的ネックを克服していける。地熱のタービン技術に関しては日本メーカーが世界市場を席巻している。風力・太陽光は技術革新が進んでコストが下がってきている。帯広や北見は日本国内では太陽光に適した地域。漁業権を持っている漁業者が風力発電事業に参加するなど。

また原子力か再生エネルギーかというより本当の焦点は火力である。発電構成の60%を占める火力(石炭・石油・天然ガス)については、燃料の安価かつ安定的な確保をする余地がまだある。例えば、シェール(頁岩層)ガス革命でガスの値段が下がっている。LNGについては購入規模で値段が違うが、韓国は大規模に購入し低価格で購入しているが、日本は経営者に能力がないのか企業単位で小分けで買っているので韓国より高価格で仕入れている。

石炭火力は世界最大の電源(米49%、中79%、印69%)だが、日本より発電効率が悪い。日本の高効率技術を海外へ展開させることで地球温暖化防止にも貢献できる。

新しいエネルギー政策の展開は、「ほくでん」の電力会社としての生き方を変えるだろう。北海道は原発依存度が高い。だから原発が停止すると緊急的に化石燃料費が増え、料金値上げへとつながる。しかし、北海道は日本で最大級の多様な電源の宝庫である。再生エネルギーだと地熱、風力、太陽光、小水力、バイオマス。釧路の石炭(釧路に石炭発電所を作れば地元経済へも貢献できる)、サハリンから近いのでパイプラインにより天然ガスの供給を受けやすいなど。「ほくでん」は原発依存度を下げ、これらを利用していったほうが良いだろう。

質疑応答
Q 3.11の地震に伴う原発事故など「制御できない原発」から脱原発社会にむけてひとこと。
A 事故の大小にこだわらずただちに放棄すべきではない。3.11の地震に伴う原発事故は「制御できない」のではなく、「制御しなかった」(女川原発はきちんと停止できている)ということが問題。しかし、原発は廃棄物の処理が確立できていないので止めざるを得ない。でもすぐにすべて廃止という状況でもない。だから2050年頃までは過渡的エネルギーとして使っていくしかないと思う。
Q 十勝では家畜糞尿のエネルギー利用について、まちづくりと一体で取り組みを考えているところ。
A その糞尿は物量コストが生じない。地域にあるものをそこで使うという考えはすばらしい。
Q 火力と再生エネルギーの兼ね合いについて。
A 再生エネルギーは長持ちしない(独では5年で縮小)という問題点がある。原発のコストはあいまいになっている。今は原発が止まると電気代が上昇する構造。2013年には日本の電力会社10社中6社が値上げを表明するかもしれない。そのとき、火力燃料の購入に係る問題点が惹起されるかもしれない。
Q 原発再稼働の判断は誰がすべきものか。
A 原子力規制委員会であるべきではない。政治判断になると思う。
Q ベース電源が原子力ということですべて設定されているしくみ。
A 泊原発に依存しすぎているのが「ほくでん」の弱点。経営者の能力が悪いのだろうか。北海道では原発がなくてもやっていける。新エネルギー政策のもと、システムコーディネーターとして生きて行けるだろう。
Q 釧路の石炭利用について。
A 石炭発電は今は輸入石炭が主流だが、地元の石炭を使う発電が大事。例えば釧路に火力発電所を設置して釧路の石炭を使えば、国の石炭政策に右往左往する必要がなくなるし、地元経済も潤うことになるだろう。


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