2011年09月14日

3.11から半年、自然と共生するとは、文化的生活とは=労文協文学散歩

<初秋の釧路湿原と知床の自然・歴史 そして文学を訪ねる=小杉由美子>

2011年9月10~12日の3日間、北海道労働文化協会主催の第33回全道勤労者文学散歩に参加し、道東の文学、歴史、自然について学んだ。

参加者は13人(男性6人、女性7人)30代~70代まで幅広い年齢層が集まった。
同行講師陣は神谷忠孝北海道文教大学教授、森山軍治郎専修大学北海道短期大学教授、フリーライターの皆藤 健さん、またバスの運転と知床のガイドはシレトコ案内の資格を持つ石井ポンペさん(ポンペさんはアイヌの民族楽器「ムックリ」の世界的奏者でもある)


「解説を聞く参加者」 


「ポンコリ(トンコリ)の調べにのせオリジナル曲を唄う石井ポンペさん」

釧路を出発し、塘路(トウロ)湖半にある標茶町の郷土資料館をめざした。
道中、森山先生から「北海道における囚人労働」について想像を絶する過酷な囚人労働の実態の話しを受けた。資料館の建物は明治18年標茶町に設置された釧路集治監(後の北海道集治監釧路分監)の本館として建てられた。
釧路集治監の囚人の労働は道路開削、戦争の爆薬の原料になる硫黄山の硫黄の採掘であり、山から噴出する亜硫酸ガスにより身体を極度に害し、死亡する者多数、目を失明するものも多数であった。
当日も硫黄山の勢いよく噴出するガスと臭気に圧倒される。


「集治監 当時の階段が保存、使用されていた」


「硫黄山」 


「蒸し玉子、1個100円5個400円」

塘路湖はアイヌ民族の運命を主題とした武田泰淳「森と湖のまつり」(1958年)の舞台となったところ。皆藤さんが、トウロ湖とベカンベ祭りについて解説をした。(ベカンベとはアイヌ語で菱の実こと)現在のトウロ湖のベカンベは、ほとんどが外来種になってしまい。在来種はわずかな量しか収穫できなくなってしまったとのこと。


「トウロ湖」 

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「湖畔に咲く花 猛毒のトリカブト」

弟子屈町ではアイヌ文化研究で有名な原野の詩人更科源蔵文学資料館を訪ねた。
北海道の小中学校の校歌は更科源蔵作詞が多数とのこと。私の地元の中学の校歌も源蔵の作詞のものであった。
源蔵作の版画はとても素朴で源蔵の人物像を物語るような作品であった。また、高村光太郎や萩原朔太郎など著名人からの書簡も展示されており当時の社会状況や、源蔵との関係性が読み取れ興味深く見学し、時間が足りなかった。

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「参加者集合写真」 

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「更科源蔵記念碑」

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「摩周湖」

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羅臼郷土資料室 で学芸員の話を熱心に聞く参加者)

武田泰淳は羅臼のひかりごけと遭難船長人食い事件を組み合わせた名作「ひかりごけ」(1925年)を発表した。
「ひかりごけ」は、そのカニバリズムという衝撃的な内容に惹かれ学生時代に一度読んだことがある。
今回実際に舞台の羅臼を訪れることができ、感激もひとしおであった。ひかりごけは確かにあったが、金網がはりめぐらされなんとも味気なかった。
北海道-道東を舞台とした文学作品が多いことに驚いた旅であった。もう一度作品を読み返したり、未読の作品にこれから挑戦し、また舞台を訪れてみたい。

知床の雄大な自然は北海道が世界に誇れるものだ。後世に必ず遺していかなければならない。自然とともに生きるアイヌ民族の生活にいまこそ学ぶ姿勢が必要ではないだろうか。3.11から半年、自然と共生するとは、文化的生活とは、を再考する文学散歩であった。


光っていなかった「ひかりごけ」


日本最東端の地・相泊

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川を遡上するサケ

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