本部情報

2009年04月03日

【本部情報】人事院が民間夏季一時金の臨時調査実施を提案

公務員連絡会は「人勧制度の信頼損ねる」として撤回を求める

※この交渉情報は、単組のホームページ、機関紙、チラシ等には活用せず、内部意思統一用に止めてください。

公務員連絡会は、4月3日、公務員の夏の一時金引下げ問題について、人事院交渉を実施した。
公務員の夏季一時金を巡っては、自民党の公務員給与PTが民間春闘相場を踏まえて議員立法で引き下げるための動きを強めるなか、人事院総裁も春闘回答の中で、民間の一時金を巡る厳しい情勢に言及したことから、公務員連絡会も人事院等の動向を警戒感を持って注視していた。

こうした情勢の下、2日には与党の公務員給与PTも政府の動向を見ながら引き下げるための給与法改正法案を提出する方針を固めたことなどが報道されている。本日の交渉はこうした情勢の下で、人事院の考えを質すために実施したもの。

交渉は、13時30分から行われ、公務員連絡会側は幹事クラス交渉委員が参加し、人事院側は井上職員団体審議官、上山参事官らが対応した。

冒頭、井上審議官は、夏季一時金の調査について、次の通り提案した。
(1) 本年の民間企業における夏季一時金に関しては、春闘の回答・妥結状況において非常に厳しい結果が出ており、人事院としてもその動向に注視してきたところであるが、判明している妥結状況を見ると大手の製造業を中心に昨年の一時金に比べて2割ないし3割程度の減額を行う企業がみられ、全体としてみても相当大きな減額となるものと見込まれる状況にあり、このような一時金の大幅な変動は、大幅に物価が上昇した昭和49年に匹敵する程度のものとなる可能性があるところである。

(2) 本年の一時金については、従前同様、これから民間給与実態調査により前年冬と当年夏の民間の支給水準を調査し、これに基づいて年間の支給月数で民間との均衡を図ることとしており、この基本的な考え方は、この夏の勧告に向けても変更はない。

(3) 他方において、国家公務員法に基づき、給与については国会により社会一般の情勢に適応するように随時これを変更することができることとされ、その変更に関してこれを勧告することを怠ってはならないとの責務を担っている人事院としては、今次のように民間一時金の急速かつ大幅な変動がうかがえる事態が生じている場合には、現時点においてできる限りの調査を行い、早急に民間の状況を把握する必要があると考えている。

(4) このため概要次のとおりの調査を行うこととし、調査期間や集計・分析に要する期間も考慮し、来週7日から調査を開始したいと考えている。
① 調査対象企業は、民間給与実態調査の対象と同規模の企業から2,700社程度を抽出し、郵送調査を行うが、一部企業に対しては訪問による調査依頼も行う。
② 春闘において既に賞与の支給額を定めている企業をできるだけ多く対象とすること及び短期間の調査となるため調査効率をも考慮して、企業規模ごとに層化した上で、一定の基準により企業を抽出し、調査することとしている。
③ 調査内容は、原則として本年夏の支給額に関する決定・回答結果と前年夏の支給に関する決定額を記入してもらうことにより、昨年比の増減を調査することとしたいと考えている。
④ 調査期間は、4月7日から24日までの18日間とすることを考えている。

これに対し公務員連絡会側は、「当事者であるわれわれに説明する前に、いろいろ報道されていることは遺憾であり、今後、気をつけていただきたい」と報道について遺憾の意を表明した上で、次の通り、問題点などを指摘し、今回の調査には反対であり、撤回するよう迫った。
(1) どうして今回臨時の調査を行うことにしたのか。大手の夏季一時金は2~3割減とのことだが、中小はこれからだ。調査が必要という、納得できる判断基準を示してもらいたい。明確な基準がないと、人事院が情勢認識に基づいて必要と判断すれば、冬の一時金や月例給についても同様なことができることになってしまう。

(2) どのくらいの変化になっているかは既存の調査で把握できる。人事院として調査するということは、調査結果を踏まえて引下げ勧告する意図があると受け止めざるを得ない。また、調査は水準ではなく、前年との増減を把握することを目的としているのか。そうだとすれば、水準や支給月数は公表できる性格のものではない。

(3) この時点の調査では、春闘における妥結・回答結果だけであり、組合員だけの数字が多く、5月から行う民調による支給実態の調査と異なって全体の水準は把握できない。前年との増減把握だけで何ができるのか。仮にこれだけで引下げを勧告すれば、これまで積み上げてきた、精緻で精確な調査に基づく勧告に対する納得性、信頼性を失い、大きな禍根を残す。例年通りの調査、勧告ではどうしてだめなのか。

(4) 1974年(昭和47年)のときは、公務員の生活を守るための勧告であり、急激な変化があったから行ったものではなく、今回とは状況が違う。与党の圧力に応じたものではないか。

こうした指摘に対し、井上審議官は次の通り答えた。
(1) 民間企業の夏季一時金に大幅かつ急激な変化が生じており、全体で10%を超える程度の引下げになっており、ボーナスが10%を超えて変化すれば、物価が大幅に上昇した昭和49年以来の変動になる可能性がある。平成になってから5%減程度の変動はあったが、10%を超える動きがあるとすれば普通でないという認識をしないといけない。大幅な変化が起こっていることから、国公法28条の人事院の責務を果たすため調査を行うこととしたものである。
公務員の一時金については前年冬と当年夏の一時金を調査して均衡させており、今年の民間の夏の状況は夏の勧告で公務員に反映させることになるが、急速に変化しているときに従来通りでいいかということがあり、調査結果を踏まえて判断していきたいと考えている。

(2) 人事院自らが調査することが国公法の責務を果たすことになると思っている。調査の目的は水準把握ではなく、前年との増減の把握である。どのように公表するかは、まだ決めていない。

(3) これまで通りの調査を行い、年間で官民の均衡を図ることは従来通り行うことには変わりはないが、今回は急激な変化の中身を把握しようということである。今までの方法では夏の勧告に基づいて反映させることになるが、今年の場合、変化が大幅で急激なのでそこまで待っていいのかということだ。今起こっている厳しい状況について人事院として緊急に把握する必要があるということだ。

以上のように、人事院は調査を実施する方針を変えず、調査を行うことにした判断基準等について明確な考えを示さなかった。このため、公務員連絡会側は、①なぜ調査を行う必要があるのかについての説得力ある説明を行うこと、②引下げ勧告のための調査と受け止めざるを得ず、前年との増減比だけで引下げ勧告をすることには反対であり、夏季一時金臨時調査の提案を撤回すること、③まだ春闘半ばであることから多くの中小企業の春闘交渉に悪影響を及ぼし、仮に引下げとなれば、公務員の生活のみならず、景気動向にも影響することを踏まえて対応すること、などを要請し、「われわれが納得できるよう十分議論し、一方的に調査は実施しないでいただきたい」と強く要求し、本日の交渉を締めくくった。

なお、公務員連絡会は、交渉終了後、企画調整・幹事合同会議を開催し、今後、この夏季一時金臨時調査とそれに基づく勧告に反対する姿勢を明確にし、さらに交渉を強めるとともに、人事院総裁あてに「夏季一時金臨時調査とそれに基づく引下げ勧告を行わないこと」を求める要求はがき行動を実施するなどの当面の取組み方針を確認した。

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