本部情報
2009年03月10日【本部情報】自治労は公務員部長交渉を実施
(2009春闘情報No.8)
*この情報は、単組等のHP、機関紙、チラシ等には活用せず、組織内の意思統一用として取り扱ってください。
自治労は3月3日11時から、総務省公務員部長交渉を行った。交渉には、自治労から金田書記長、江﨑労働局長、松本労働局次長、西田労働局次長が臨み、総務省からは松永公務員部長、小池給与能率推進室長ほかが対応した。
はじめに、金田書記長から次の5項目を要求し、総務省側の見解を質した。
1. 給与決定の原則
地方公務員の給与について、地方公務員法第24条第3項の本旨にしたがい、5つの考慮要素を総合的に考慮した、自治体における労使の自主的交渉の結果を尊重すること。
2. 現業労働者の給与
現業労働者の給与は、各自治体における労使交渉と合意を基本とし、労使自治への干渉・介入にわたる助言等は行わないこと。
3. 新たな人事評価制度
新たな人事評価制度は、4原則(公平・公正性、透明性、客観性、納得性の確保)、2要件(労働組合の参画、苦情解決制度の創設)を具備したものとして、労使の十分な協議を経て導入されることが重要と考える。ついては、新たな人事評価制度の導入・運用について、労使の交渉・協議にもとづく自治体の自主性を尊重すること。
4. 臨時・非常勤等職員の雇用・処遇
① 全国で約60万人にものぼる臨時・非常勤等職員の雇用確保、処遇改善にむけて、具体的な対応を行うこと。とくに、「地方公務員の短時間勤務の在り方に関する研究会報告書」が1月23日に公表されたが、これによって、現在任用されている臨時・非常勤等職員に対し雇い止めが横行することがないよう、報告書の取り扱いについては十分に留意すること。
② 東村山市事件など最近の判例をふまえれば、実態として「常勤の職員」と同様の勤務をしている非常勤職員への諸手当支給は、違法とはいえないことが明らかになっていることから、その支給を妨げないこと。
③ 昨年8月の国の非常勤職員の給与に係る人事院指針もふまえ、各自治体が臨時・非常勤等職員の給与決定に際し、国と同様に「職務経験等」の要素を考慮することについて、制約を加えないこと。
5. 人件費に対する国の関与
退職手当債をはじめとする地方債の発行、公的資金補償金免除繰上償還、特別交付税など財政制度を通じた人件費に対する国の地方への関与を行わないこと。とくに、地域手当、寒冷地手当など人件費に係る特別交付税の減額措置は、地方交付税制度の中立性を損ない、給与条例主義に反するものであることから、厳に行わないこと。
これに対し、松永公務員部長からは次の通り回答を受けた。
【1. 給与決定の原則】について
地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に則り、地域の実情を踏まえつつ条例で定められるべきもの。具体的には、当該団体の規模や給与の実態を踏まえ、国家公務員給与や民間給与の状況等を総合的に勘案した上で、適切な内容とするべきものと考えている。今後とも、このような考え方に立って、必要な助言等を行ってまいりたい。
また、地方公務員に対する国民・住民の信頼を確保するためにも、地方公共団体の給与制度や運用について、住民の理解と納得が得られるよう、一層の給与適正化に向けた取組を要請しているところであり、引き続き必要な助言等を行ってまいりたい。
【2. 現業労働者の給与】について
技能労務職員の給与については、人事委員会勧告の対象とはならず、労使交渉を経て労働協約を締結することができるなど、法の適用関係が他の一般行政職員等と異なるところであるが、その職務の性格や内容を踏まえつつ、特に民間の同一又は類似の職種に従事する者との均衡に一層留意し、住民の理解と納得が得られる適正な給与制度・運用となるようにすることが必要と認識している。
各地方公共団体においては、技能労務職員等の給与等について、総合的な点検を実施し、その現状、見直しに向けた基本的な考え方、具体的な取組内容等を住民に分かりやすく明示した取組方針を策定・公表していただいているところであり、この取組方針に沿って、着実な見直しを行っていただくことが必要であると認識している。
【3. 新たな人事評価制度】について
人事評価制度の導入にあたっては、評価の透明性・客観性・納得性を確保するため、各地方公共団体においてその枠組みを適切に構築することが必要であると考えている。また、人事評価制度が効用を発揮するためには、職員の理解と納得が得られるよう努めることが必要であり、制度の趣旨や内容について、職員との意思疎通を図ることが重要である。人事評価システムを構築するに当たっては、それぞれの地方公共団体においてその内容を決めていくべきものであるが、人事評価制度が円滑に導入されるよう、引き続き、総務省としても必要な助言を行って参りたい。
こうした考え方のもと、「地方公共団体における人事評価の活用等に関する研究会」においては、人事評価の実施や活用に係る考え方や方向性を各委員にご検討いただいたが、その検討にあたっては、研究会の構成員として都道府県や市町村の担当者に参加していただくなど、地方公共団体の実情を踏まえながら、公正かつ客観的な人事評価制度の構築に資するものとなるよう努めてきた。研究会では、年度内に結論を出す予定であるが、報告書については、地方公共団体に情報提供する予定であり、各地方公共団体における人事評価の導入や点検、評価結果の十分な活用に当たり、ご参考としていただきたいと考えている。
【4. 臨時・非常勤等職員の雇用・処遇】について
① 研究会の報告書では、臨時・非常勤職員の任期については、臨時的・補助的業務に従事するものであるその職の性格等にかんがみれば、原則1年以内であるという考え方が採られているものと解されるとされたところである。したがって、任期の終了後、再度任用されること自体は排除されないものの、あくまで1年ごとに「新たに設置された職」に改めて任用されたものと整理されるものであり、再度の任用にあたっても、改めて能力の実証等を経た上で、任期や勤務条件の明示等の手続を適切に行うべきことが指摘されたものと考えている。
② 「常勤の職員」の認定に係る判例についてであるが、地方自治法第203条の2において、非常勤職員には、報酬及び費用弁償を支給することとされており、給料及び手当は支給することができない。なお、これは、非常勤職員の任用手続と職務の内容が常勤職員と大きく異なることを前提として、勤務に対する反対給付としての性格が徹底されているものである。ご指摘の非常勤職員にかかる判例は、個別の事例について、地方自治法上の「常勤の職員」としての実態があるものと事実認定されたものに、手当の支給を認めたものと認識している。
③ 臨時・非常勤職員の報酬等の制度や水準は、各地方公共団体の条例等に即して、職務の内容と責任に応じて適切に決定されるべきものと考えている。臨時・非常勤職員の処遇については、今回の研究会報告書により、基本的な考え方が整理されたところであり、これを踏まえ、総務省としても、地方公共団体に対して必要な助言をしてまいりたい。
【5. 人件費に対する国の関与】について
地方財政法第5条は、地方債を財源としないことを原則としつつ、将来に便益が及ぶ場合に、その範囲内において、地方債の発行ができることとしているが、退職手当債は、この例外として、近年の地方財政の状況、団塊世代の大量退職や総人件費削減の必要性等を踏まえ、世代間の負担の公平に反しないよう将来の総人件費の削減により償還ができる範囲内において、許可がされているものと承知している。
給与制度や運用が不適正な団体は、そうした不適正な制度や運用がなければ、それらに係る財政負担は縮小し、退職手当所要額はより少なくてすんだはずのものである。こうした部分にまで、退職手当債の発行を認めることは、世代間の負担の公平を著しく阻害するものであり、このようなものについて、退職手当債の許可に際し、制限を行うことは、給与等の不適正な運用に対する制裁又はペナルティとして行うものではなく、地方財政法の趣旨に基づいて、世代間の公平を図ろうとするものであり、必要な措置である。
5兆円規模の公的資金の補償金なし繰上償還については、地方財政の健全化による将来的な国民負担の軽減という観点から行われるものであり、他の地方公共団体に比べて財政運営上余裕があると認められるような定員管理や給与制度・運用を行っている地方公共団体についてまで認めることについて、国民の理解と納得が得られないものとの観点から、対応がされているものと理解している。
特別交付税の減額措置は、国の支給基準を超えて給与を支給している地方公共団体については、他の地方公共団体に比べて財政運営上余裕があると認められることから、算定上の一要素としているものと承知している。このような減額措置は、不適正な給与支給に対する制裁という観点から行われているものではなく、特別交付税の公平な算定という観点から行われるものと理解している。
具体的な判断基準については、自治財政局において関係する省・部署と調整のうえ、検討されていると承知しているが、退職手当債の発行、公的資金補償金免除繰上償還実施の同意、特別交付税による減額については、先ほど述べたとおり、それぞれ法令や実施に当たっての趣旨を踏まえ、世代間の負担の公平や国民の理解、公平な算定の観点から、給与制度や運用、定員管理について確認を行っているものと考えている。
この後さらに、各事項について自治労から総務省の考えを質した。
① 各人事委員会では、地域の民間給与実態調査結果をベースにおきつつ、国や他の自治体、その他の事情としての「人材の確保」や「職員の士気」なども考慮し、総合的に判断し、給与勧告を行っている。人事委員会、労使交渉の結果と条例に基づく自治体の自主的決定を尊重するよう、重ねてお願いする。
同時に、地域の民間給与水準をあまりに重視するのでは、地方公務員給与の地域間格差は拡大し、地方行政のナショナルスタンダードが維持できるかという問題にも発展する。「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」でも議論のあった地方公務員の標準的な給与のシステムづくりが急がれるのではないか。
② 現業職員の職務内容については、「技能労務職員の給与に係る基本的考え方に関する研究会」の委員も、「一般の行政職と重なり合ってきている」、「職務の内容が高度化してきている」と述べている。現業職員の賃金の在り方を考える場合には、こうした職務内容の十分な分析が必要である。
また、同研究会は3月6日が最後の協議の場となるが、報告書の取り扱い、通知の中身については、われわれ組合側との意見交換の場を改めて持たせていただきたい。
③ 臨時・非常勤職員の再度の任用が妨げられていないとは言え、短時間勤務研究会報告書については、結果として各自治体が雇止めを促すものと捉えることも危惧される。このため、研究会の複数の委員からは、報告書は自治体に雇止めをすることを求めているのではない、との趣旨を明記すべしとの声があり、報告書の「おわりに」で「人員体制の確保を一義として」との記載となったと聞いている。今後の通知等においては、このことをふまえて、書き振りには十分に留意するよう、特にお願いしておきたい。
自治体の臨時・非常勤等職員の給与あるいは報酬については、条例において職務経験等の違いをふまえて、職務内容と職責が違ってくれば、それに応じて給与が決定されるという考え方はあり得ると理解するが、どうか。
総務省側からは次の通り回答があった。
① 「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」においても、地域民間給与水準のより一層の反映が求められている。この提言にあるとおり、総務省は給与の適正化に向けた取り組みの要請を行ってきたところである。標準的給与については、議論はあったが報告書では触れていない。
② 1月23日に開催された第9回研究会において提出された報告書の素案では、民間給与水準との「給与の比較に際しては、職務内容についての十分な分析が必要である」と記述されている。一方で、「本来、技能労務職員については、その職務の内容が性質上、民間労働者に近いことから、一般の公務員に課される規制等を外し、原則として民間労働者と同様の労働法制の下に置かれるとされたものである。法律の明文上も、『同一又は類似の職種の』『民間事業の従事者の給与』を考慮するべきことが定められているところであり、このような制度の沿革を踏まえても、民間労働者の給与水準との比較は重要」と言われている。また、研究会では、そもそも、職務分析の前提として、個別の業務が、公共サービスとして人件費等を含めた最終的なコストを負担する住民の求めるものであることが必要であるとの議論もある。技能労務職員の給与については、各地方公共団体において、職務内容についての十分な分析を行いつつ、住民の理解と納得を得られるよう、民間給与との比較を行っていただきたいと考えている。また、研究会では、3月6日に第10回目の会議を行い、年度内に報告書を取りまとめる予定である。報告書は、地方公共団体に配布するので活用していただきたいと考えている。なお、報告書の取扱いについては、公務公共サービス労働組合協議会から意見交換をしたいとのお話があるようなので、給与能率推進室長に対応させたい。
③ 研究会の「おわりに」の記述についてはご承知のとおりである。
職務経験と、職務内容や職責は直接関係するものではない。採用または再度の任用に当たり、任用しようとする職に求められる職務経験等を考慮することはあり得る。職務内容や職責が異なる職に任用されれば、それに応じた報酬が決定されるものである。
自治労は、重ねて、次の点について再度、対応を要請した。
① 昨年の給与法案の国会審議では、国、自治体双方の臨時・非常勤等職員の雇用・処遇改善を求める与野党からの質疑に対して、総務大臣からの力強い決意を繰り返し得ており、付帯決議もされている。公務員部としても、こうした動向を重く受け止めて、臨時・非常勤等職員の雇用確保と処遇改善に、全力を挙げていただきたい。
② 新たな人事評価制度については、先行している自治体もあるが、多くは諸状況を受けて、ようやく議論がスタートしたところだ。人事評価は、まさに職員の処遇にかかわるものであり、制度設計においては慎重を期さなければならない。自治体の規模や、各自治体の人事政策に応じて評価制度も自ずと異なる。職員の納得が大事である。各自治体によって議論のペースも異なり、それぞれの自主的な取り組みに、画一的な制度を上からかぶせることはあってはならない。
総務省の人事評価の研究会についても、最後の研究会が2月で終わり、3月には報告書が地方に情報提供されることと思うが、自治体の自主性を損ねるようなことのないよう、十分に配意していただきたい。
③ 当面の課題となっている特別交付税の削減については、総務省と大きく認識が異なる。実質的なペナルティであり、地方交付税制度の趣旨に反し、地方自治を侵害するものである。地域手当については、国基準を上回る支給は、財政的余裕を示すものではなく、近隣自治体との均衡から人材確保上の必要でおこなっている。また、人口5万人未満の市と町村をはじめから地域手当の支給対象から除外していることは、自治体職員の支給基準とはなり得ない。最低限、昨年度の減額率を引き上げることないよう、自治財政局にわれわれの要求を伝えていただきたい。
最後に、金田書記長より、所定勤務時間の短縮は、国の勤務時間法、人事院規則の改正が遅れたことなどの影響により、各自治体での条例改正の判断、手続きが遅れている実情を踏まえ、所定勤務時間短縮が各自治体において国に遅滞なく実施されるよう、公務員部として継続して取り組むよう申し入れ、公務員部長交渉を終えた。
組合員専用ページのTOPへ