本部情報
2009年01月23日【本部情報】公務労協が公務員制度改革本部事務局長と交渉・協議
―幹部職員の任用弾力化と定年延長等で修正を要求-
※この交渉情報は、単組ホームページやチラシ等には掲載せず、組織内の意思統一用として取り扱ってください。
公務労協は、1月20日、19日の立花国家公務員制度改革推進本部事務局長交渉で「引き続き誠実に意見交換を続けていく」ことが再確認されたことを受けて4回目の交渉・協議を実施した。
交渉には、公務労協側から岩岬・藤川両副事務局長ほかの実務交渉メンバーが参加し、公務員事務局側は淵上審議官らが対応した。
冒頭、公務員事務局の淵上審議官が工程表(案)のうち、勤務条件に関わる事項について、次の通り説明した。
○「3 公募・官民人材交流の推進」について
人材交流については、国に近く退職して行く独立行政法人等、研修目的で行く営利法人、その中間があるが、「分限休職」を利用している場合もあって本人にとって不利益を生じており、制度的な手当をした方がよいことなど、幅広く検討する。
また、「個人に着目した官民の人材交流」については、慎重かつ幅広く検討したい。人事院の勧告が必要な事項については、人事院と相談しながら検討する。新法が必要になる
のではないかと考えている。
○「4 能力・実績主義の徹底」について
新たな人事評価については、4月以降、当初の効果が発揮できるよう運用していく。
幹部職員・管理職員の任用・給与の弾力化は、内閣人事局の主要な業務の一つであり、2010年4月の設置に向けて運用可能な人事制度にする必要がある。
降任については、能力・実績主義(成績主義)との調整が必要であり、人事院、法制局と協議中。現行制度では降任するためには国公法78条に基づいて「成績がよくない」という判定が必要であるが、幹部職員については絶対評価ではなく相対評価によって適材適所を確保するとともに能力実績主義との調整を図れないか、ということを検討している。
濫用の恐れもあることから、今詰めを行っており、最終的には法改正を行いたい。
これら職員の処遇のあり方全般の弾力化は、当初考えていたよりも狭くなるし、人事院の勧告を経ることになるので制約がかかると思っている。
なお、幹部職員賞与の傾斜配分化は2010年度からできるよう前倒しをしたいし、評価のあり方もそれに合わせて変える必要(2・3段階をより多段階化)があると思っている。
○「5 定年まで勤務できる環境の整備、定年延長等の検討」について
すべての公務員に関わり、影響も大きい重要な課題である。いろいろなことを抜本的に考えないといけないので真剣に取り組みたい。
「天下り」には厳しい目が向けられているので、定年まで勤務できるよう取り組む。幹部職員の任用の弾力化も1つのツールであり、指定職も専門スタッフ職に移れるよう、所要の給与制度の見直しを人事院に勧告してもらうよう要請する。また、地方支分部局を含めスタッフ職のあり方を検討する必要があるし、現行の定員を削って再任用者のポストを用意するという仕組みは抜本的に変えないといけない。
さらに、ある程度は自発的な退職を促すことも必要であり、退職準備プログラムを拡充する。どういうインセンティブを与えるか、準備期間の対応策なども検討する必要がある。
高齢雇用について、民間企業に対しては3つ(定年廃止、定年延長、再雇用の義務化)の内から1つを選ぶことを義務づけているが、公務員についてどうするか検討しないといけない。2013年度から特別支給の年金が段階的に繰り延べられるが、これに接続する形で定年を延長することは厳しいと考えており、定年延長の準備をしながら、判断の枠組みを作っていく。
民間の定年延長は1割程度であり、背景には企業年金があるのではないか。民間の定年延長の状況に加えて、延長後の給与水準が一定程度下がることはやむを得ないと考えられるが、どの程度所得保障をしていくかも検討しないといけない。
定年延長を視野に入れて再任用なども検討していくとき、数千人から2万人弱のポストが必要になり、スタッフ職を増やす必要が出てくるが、ライン職とスタッフ職の中間のポストを作るという方向性になるのではないか。どういう職場にしていくか慎重に考えたい。
極端な採用抑制を行うと将来の組織に大きな影響を及ぼすので定員管理のあり方も検討しないといけない。
給与カーブについて、60歳以降は下がることについてはあまり異論はないと思うが、60歳以前についてもどうするかを検討しないといけない。フラット化と合わせどういう姿にするか、勧告事項なので人事院と相談しながら検討していく。
さらに高齢者に相応しい職務や選択定年制も考える必要があるし、短時間勤務について、いったんやめるか、常勤のままとするかも考えないといけない。退職給付については、企業年金を含めた給付として考えていく。
優秀な人材の確保も重要であり、民間の取組みも踏まえ、キャリアアップの支援を考えていきたい。
以上の説明に対し、公務労協側は、次の通り公務員事務局の見解を質した。
(1)公募については、具体化した段階で改めて議論をさせていただくことにしたい。官民人材交流については、何のために行うのかという哲学を明確にした上で検討すべきだ。
(2)幹部職員の「適格性審査」は具体的にどう行うのか。また、適格性があるにもかかわらず降任するのは何のためであり、何を根拠にするのか。恣意的になって、メリットシステムが政治任用に変わってしまうのではないか。
(3)再任用の原則化をまず行って、様子を見ながら定年延長を検討することにしているが、政府として雇用と年金の接続の原則をどうするかを最初に確認すべきである。重要な勤務条件であるのでわれわれと合意した上で具体的な制度設計を行うべきである。
また、定年延長を検討する場には、われわれも参加させていただきたい。公務労協としては、「段階的に定年を延長する」方針を確認しているので、しっかり受け止めていただきたい。
(4)指定職から専門スタッフ職に移れるようにしたいとのことだが、「落ちこぼれキャリアの受け皿」ではいけない。ノンキャリアの問題を放置してキャリアの処遇だけ考えることは考えることは許されない。複線型人事制度としての専門スタッフ職制度にすべきだ。これは人事院に対しても要望する。
(5)再任用の原則化について、「2012年度から(中略)実施する」とされているが、現行の再任用制度は破綻している。収入がないにも関わらず、定員を食うことになるため現役に気兼ねして希望しない者が多い。
2012年度に先送りせず、できる限り早く実施すべきだ。また、原則化というあいまいな表現ではなく、「義務化」とすべきだ。定員の扱いを弾力化して「希望した職員を再任用しなければならない」ことを明記してほしい。
(6)人事院の研究会は本年夏に報告をまとめ、人事院としては来年意見の申出を行うことも考えている。公務員事務局における検討とどういう関係になるのか。
(7) 「定年延長の検討」に「高齢職員の給与の引下げ」が明記されているが、「引下げ」と具体的に書くのは認められない。
これらに対し公務員事務局側は、次の通り答えた。
(1)適格性=標準職務遂行能力の有無と考えており、職制に応じ3段階(事務次官級、局長級、部長級)となる。審査の対象は①現に幹部職員である者②任命権者が推薦する者③公募に応募した者④幹部ポストに限らず応募した者が考えられ、定期的及び随時(公募等)行う。下位の官職における人事評価が使えない民間等からの応募者は論文や面談を検討している。
(2)幹部職員ポストは数が限られており、定年まで勤務できるようにすると余る人が出てくるので、幹部職員の中で相対的にパフォーマンスの悪い人を特別に降任することを検討している。その要件については、人事評価と勤務実績が基になる。また、降任前に不利益に対する不服審査申立てができるようにすることも検討している。
(3)基本法では、再任用は「活用」、定年延長は「検討」と書いてあるのでそれを踏まえて検討することにしているが、その当時より状況は悪いと思う。基本哲学については、共有しながら検討していけばいいと思う。
定年を延長したとき、きちんと仕事が回るという政府内の統一見解を確立しないといけないし、足並みを統一して打って出るために時間が掛かる。皆さんと議論する場を設けるのはいいことなので検討したい。
(4)再任用について、希望者の再任用を義務づけることをすぐにやることにすると定年延長の道がなくなる。また、にわかに義務化することは難しいのではないか。
(5)高齢雇用施策について、人事院が来年勧告するとすれば、公務員事務局としてもそれに対応しないといけないと思う。
(6)定年延長のハードルが高い中で、「高齢職員の給与引下げ」は避けて通れない検討課題としている。
以上のように公務労協の要望・意見を受け止めて工程表(案)を修正するとの考えが示されなかったことから、公務労協側は、「幹部職員の任用弾力化は、大臣の意向に基づく政治任用になってしまう。身分保障の根幹、人事行政の中立公正に関わる重大な問題だ。特別職と位置づけて政治任用とするか、能力・実績主義に基づく制度とするかのいずれかでないといけない。
工程表(案)の考えは認められないので修正すべきである。年金と雇用の接続については、現状を打開するため、直ちに再任用の義務化を行い、2013年度以降の年金支給繰り延べに対しては定年延長で対応するとの方針を打ち出すべきであると考えている。
これまでの意見交換は不十分であり、納得できない。今後は、レベルを上げ、然るべき時期に書記長クラスと事務局長との間で、労働基本権の取扱いを含めた工程表のあり方について交渉・協議を行うこととしたい。本日、申し上げたことについては、ぜひ工程表に盛り込んでいただきたい」と強く申し入れ、実務レベルでの工程表に関する交渉・協議に区切りを付けた。
以上
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