12月20日、辺野古新基地建設にかかわり、沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長雄志・沖縄県知事を国が訴えた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、知事による承認取り消しは違法とし、知事側の上告を棄却しました。これに対し中央フォーラムは、「抗議声明」を発出しましたのでお知らせします。
辺野古違法確認訴訟上告審での棄却決定に対する抗議声明
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 藤本 泰成

 12月20日15時、「主文、本件上告を棄却する」最高裁第二小法廷鬼丸かおる裁判長の声が響いた。一言も聞き漏らさないと真剣に耳を傾けていた40人くらいの傍聴者から、一斉に抗議の声が上がった。最高裁は、翁長雄志沖縄県知事の主張や沖縄県民の声に耳を傾けたのだろうか。傍聴者の期待は裏切られ、判決の言い渡しは数秒で終わった。国になり代わって、「辺野古が唯一」と論じた福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)の判断については、最高裁で言及されなかったものの、辺野古新基地建設のために埋め立てを認めた仲井眞前知事の判断に違法性はないとした高裁判決を追認した。平和フォーラムは、憲法に規定された地方自治の本旨に反し、沖縄県民の多数の民意を顧みることなく、地域住民の自己決定権を認めない司法の不当な判断に、沖縄県民とともに大きな怒りを持って抗議する。
 判決は、沖縄県に集中し市民生活の安全と命を脅かす米軍基地、沖縄の経済発展の阻害要因としての米軍基地についてまったく顧慮していない。さらに、「国と地方は対等な関係」とする、1999年の地方自治法改正の流れにも逆行するものである。国と地方の紛争での初の裁判であり、本来であれば地方自治法に照らした判断をすべきであったにもかかわらず、福岡高裁の不当性に言及せず、多くの点で判断を回避している。国地方係争処理委員会の役割についても軽んじた判断をしていることも問題だ。判決は、結果的に、国が地方に従属するかつての国と地方の関係をいまだに残していると言わざるを得ない。翁長知事は、福岡高裁那覇支部の判決に対して「地方自治は死に、日本の未来に禍根を残す」と訴えていた。まさに、その通りの結果を引き起こすに違いない。
 安倍晋三首相は2013年、サンフランシスコ講和条約発効の4月28日を「主権回復の日」として祝賀式典を強行した。沖縄県民はこの日を、日本から沖縄を切り捨てた「屈辱の日」として記憶している。日本の主権の及ばない米軍基地の多数を沖縄県に押しつけられ、事故率の高い危険な米海兵隊MV-22オスプレイが、沖縄のすべての自治体と県民の反対を押し切って強行配備された。高江のヘリパット建設では抗議する市民を、日本政府が機動隊の手によって暴力的に排除している。12月13日に、沖縄の北部海岸にオスプレイが墜落し大破した。しかし事故原因の究明も不十分のまま6日後には、米軍は沖縄県民の頭上でオスプレイの飛行を開始した。主権の及ばない米軍基地があるがゆえに引き起こされてきたレイプや殺人事件、米軍機墜落事故など、これまでも抜本的な対策が立てられることなく、なおざりにしてきた。米軍の思うがままに、あまっさえそれに手を貸す安倍政権のあり方は、「主権回復」とは到底いいがたい。
 平和フォーラムは、「辺野古の問題は沖縄県だけでなく、民主主義の根幹に関わる問題」とする翁長知事の主張にしっかりと応えたいと思う。日本の民主主義のために、平和と人権のために、沖縄県民と連帯して全国で辺野古新基地建設阻止の闘いをすすめていくことを改めて確認する。

以上