3月23日、福島県あづま総合体育館で、「原発のない福島を!県民大集会」が開かれ、県内外から約7000人が集まった。

東京電力福島第1原発事故から2年が経過した今もなお、16万人もの福島県民が避難生活を強いられている。地域住民は故郷を追われるにとどまらず、分断・離散を余儀なくされ、低線量被ばくによる不安が高まり、「復興」とは依然、程遠い状況に置かれている。

 

 会場となったあづま体育館周辺の公園では除染作業が行われており、今も放射能の爪あとが残っている。避難場所でもあった会場には事故当時の新聞や避難地域の写真が展示され、参加者はあらためて惨劇の記憶を思い起こしていた。

 集会では、さまざまな立場から県民代表が発言し、いまだ見えない「復興」と故郷への思いを語った。

 

 

 

 

集会開会前、アトラクションとして、3つの町から伝統芸能などが披露された。

①    霊山(りょうぜん)太鼓(伊達市)

江戸時代から始まり、福島市・伊達市で独自の発達をとげ継承されてきた伝統ある太鼓。霊山町内には約60組の太鼓が保存継承されている。演舞は、各地区の太鼓保存会から選抜された打ち手により構成された霊山太鼓保存会から12人がすばらしいばちさばきを披露した。

 

 

 

 

②    下紫彼岸獅子(喜多方市)

喜多方市関紫町字下紫に伝来する「下紫彼岸獅子」の獅子は、会津の彼岸獅子の中でも最も古い歴史を持ち、彼岸獅子では唯一福島県の重要無形民族文化財の指定を受けている。独特のいでたちで地元では毎年春の彼岸まで各戸をまわり、獅子舞を披露している。

 

 

 

 

 

③    大谷じゃんがら念仏踊り(楢葉町)

第2原発がある楢葉町に伝わる「じゃんがら念仏踊り」は福島県いわき市周辺地域と茨城県北茨城市にも伝わる伝統郷土民俗芸能で、鉦(かね)や太鼓を打ち鳴らし、新盆の家を供養してまわる念仏踊り。原発災害後、警戒区域に指定され、現在も避難指示解除準備区域となっているため地元に戻れないなか、一時帰宅で持ち出した楽器で練習を再開、昨年夏、2年ぶりに復活させた。

 

 

 

はじめに、この大震災で犠牲となった人々のため、参加者全員で黙祷を行った。

 

 

 開会のあいさつで、呼びかけ人の僧侶 吉岡棟憲(とうけん)さんは「福島原発事故により家庭という小さな平和さえも奪われた。しかし、国、東京電力は真剣に謝罪していない。絶対に許すことはできない。美しい福島を取り戻したいとの思いが、日本中、世界中に響き渡るよう願う。」と述べ、最後に「福島の浜通り・中通り(いずれも福島の原発地域)=もとどおり」と思いを比ゆし、言葉にした。

 

 

 

 

 

主催者を代表して五十嵐史郎実行委員長は「復旧・復興はもちろん除染も進まず、先日の停電など、緊張状態が続いている。一方、事故は風化の兆しをみせ、再稼動の動きも出ている。県民の願いは、10基、すべての原発の廃炉と安心て暮らせる福島を取り戻すこと。そのために国や東京電力に最大限の取り組みを訴えていく。」と開催趣旨を述べた。

 

 

 

 

 

続いて、呼びかけ人代表あいさつでは福島大学教授 清水修二さんが「先日起きた冷却装置停止事故は、大変なことだ。原発が不安定で危ういことを物語っている。事故そのものが収束していないことを改めて思い知らされた。現在も15万以上もの人が避難生活を送り、相当疲れている。普通の市民がなぜこんな苦労をしなければならないのか?すべての根源は原発のせいだ!」と述べ、いまだ先の見えない避難生活の深刻さや、目に見えない事故の爪あとを指摘した。

 

 

 

 

 

 連帯のあいさつでは、ルポライターの鎌田 慧(さとし)さんが駆けつけ「『フクシマ』はまだ終わっていない。子どもたちの将来の健康に不安を抱える母親たちを思うとき、私たちに何ができるのか。それを考えていくのが私たちに与えられた課題だ。福島の人々の生活の復旧は、政府と東京電力が真っ先に取り組むべき仕事だ。平穏を奪った罪を償わなければならない。「原発は地域を発展させる、豊かにする」などは全くのウソだった。そのウソは今も続いている。こうしたウソに強い憤りを感じる。しっかり力を蓄えて脱原発を進めていかなければならない。これからも福島の人たちとともに頑張っていきたい」と語った。

 

 

 

 

 

その後、「福島県 佐藤知事」と「福島市 瀬戸市長」、「南相馬市 桜井市長」からのメッセージがそれぞれ紹介された。

「県民からの訴え」では、それぞれの立場から7人が発言に立ち、それぞれの取り組みに対し、会場から大きな拍手が上がった。

 

①農業、生産者の立場から、復興に向けて風評被害と闘いながら、さまざまな活動に取り組むJA代表理事・篠木 弘さん

 

 

 

 

 

 

 

 

②地震の津波で妻を亡くしながらも、あきらめず試験操業を開始した漁師・佐藤 弘行さん

 

 

 

 

 

 

 

③高校生平和大使として海外の高校生などと交流し、世界に向けてメッセージを発信、4月からは福島の大学に進学する南相馬市出身・高野 桜さん

 

 

 

 

 

 

 

 

④崩壊してからでは遅く、優先順位が低い扱いを受けている森林の除染の必要を訴える県森林組合・鈴木 邦彦さん

 

 

 

 

 

 

 

⑤第2次避難所として、県の人口に匹敵する211万人もの被災者受け入れを行い、風評被害の補償を訴える活動にも取り組んできた旅館ホテル業組合長 菅野 豊さん

 

 

 

 

 

 

 ⑥情報がないなか、避難を強いられて家族がばらばらになり、先の見えない不安と「孤独感」に襲われるなど避難生活の厳しさを語った大越 たか子さん(現在、栃木県宇都宮市に避難中)

 

 

 

 

 

 

 

 ⑦ 2人の子どもの母親でもあり、幼い子どたちがのびのび外で遊べるよう取り組む「福島の子ども保養プロジェクト(愛称:コヨット!)」を紹介した平井 華子さん

 

 

 

 

 

 

 

集会では、「『原発のない福島を!』『安心して暮らせる福島を!』これは福島県民の願いであり、心の叫びである。世界史の中で特別な位置に置かれたというべき福島が、しっかりと再生に向けた道を歩むために、原発依存からの脱却=原発との決別はまさに出発点であり、大前提でなければならない。県内外に非難している県民をはじめ、多くの人々が本当に『原発のない福島を』実現するために、互いに支えあい、心をひとつにがんばろう」とした宣言が採択された。

 最後に呼びかけ人の武藤類子さんが、県内外から結集した参加者に感謝の言葉をかけた。