10月28日、ニューヨークの国連第1委員会(軍縮)で、オーストリアなどが提出した「2017年の『核兵器禁止条約』制定交渉開始を定めた国連の決議案」が採択されました。しかし唯一の戦争被爆国である日本が、この決議に「反対」票を投じました。核兵廃絶に向けて被爆国としてのリーダーシップを発揮すべき立場であるにもかかわらず、あろうことか核兵器国に追随し「反対」しました。ヒロシマ・ナガサキを生き抜いてきた被爆者を冒涜するだけでなく、核兵器廃絶・平和を願う多くの人々の期待を裏切るものです。
このような日本政府の後ろ向きな姿勢に対して、原水爆禁止日本国民会議が抗議声明を発表しましたのでお知らせいたします。
※以下、抗議声明
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国連総会第1委員会での「核兵器禁止条約」の交渉開始決議案への反対に強く抗議します
国連総会第1委員会において、非核兵器保有国30ヵ国以上が提案した「核兵器を禁止しそれらの全面的廃棄に導くため『核兵器禁止条約』の早期締結をめざして2017 年から交渉を開始するという決議案」が採択されました。「決議案」は、「核兵器廃絶に向けた法規定を協議する国連総会の作業部会」の報告書を踏まえたもので、投票結果は賛成123、反対38、棄権16でした。原水爆禁止日本国民会議は、核軍縮に向けた確実な一歩であると決議採択を評価し、歓迎します。しかしあろうことか日本は、「安全保障での核の役割」を主張し、米国など核保有国と同調して採択に反対しました。
この「決議案」の議論の当初から日本は、「核軍縮は、核保有国と非核保有国が協力し、段階的に進めるべき」として、核兵器保有国の立場に立って主張してきました。「決議案」に反対する日本は、世界で唯一の戦争被爆国であり、核兵器廃絶を主張しその非人道性を訴えながら、日米安全保障条約の下で米国の「核の傘」に依存する立場に立っています。非核兵器保有国の中で、人道的見地から早期の核兵器廃絶を求める声が高まる中、今回の反対により日本は被爆国としての存在意義を大きく損ねてしまいました。また「日本が提出した核廃絶を呼びかける決議こそが、核兵器のない世界の道筋を示していることを表している」と決議同士を対置させる日本政府の主張は、核兵器保有国と非核兵器保有国を分断するものです。
ウクライナ紛争や度重なる朝鮮民主主義人民共和国の核実験とミサイル発射実験など、核戦力を全面に据えての対立と緊張が強まっています。核に依存した安全保障からの脱却が、世界平和のために求められています。決議への反対は核の惨禍を経験し、そこから被爆者とともに核廃絶を呼びかけてきた日本に対する、世界各国の期待を大きく裏切るものです。核兵器国と立場を同じにしていては、核兵器国と非核兵器国との架け橋になることが出来ないことは明白です。
日本は、核兵器保有国に対して核兵器禁止条約早期締結に向けた交渉に参加するよう呼びかける立場に立つべきです。誤った侵略戦争と植民地支配の結果として核兵器の惨禍を経験し、多くの被爆者を生んだ事実から、日本は平和を考えていかなくてはなりません。
日本国憲法前文にあるように「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」ならば、日本が立つべき立場は明らかです。
原水爆禁止日本国民会議は、被爆者の皆さんと共に核兵器廃絶にとりくんできた立場として、日本政府が、この決議案に反対したことに強く抗議します。核に依存した安全保障からの脱却を目指す立場を確立し、「核兵器禁止条約」の早期締結をめざす交渉に参加し、核廃絶へ進むイニシアチブを取り、積極的な役割を果たすことを、強く求めます。
2016年10月28日
原水爆禁止日本国民会議
議長 川野 浩一