昨14日、安倍首相は「戦後70年・安倍首相談話」を閣議決定し、発表しました。

“戦後レジームからの脱却”を掲げる安倍首相は、歴代内閣の平和へのメッセージ、とりわけ「戦後50年・村山首相談話」(1995年)で示された、「国策を誤り」「植民地支配と侵略」によって「とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与え」たことに「痛切な反省」をして「心からのお詫びの気持ちを表明」という認識から、転換をはかろうと検討してきました。

しかしこのような露骨な歴史修正主義は、国内だけでなく国際的にも大きな批判をよんで、安倍首相も低下する内閣支持率と国内外の世論に配慮せざるをえなくなり、結果として、昨日発表された安倍談話は、侵略・反省・おわびなどの文言を盛り込んだものとなりました。

ただし、これはあくまでもこの間の経過・過去形として扱われ、むしろ後半は、首相が積極的平和主義の名の下に進める平和への逆行政策を、正当化・主張するものになっています。

結果として、この間歴代内閣が発信してきた国際社会へのメッセージは、非常に不明瞭で疑心をよぶものに大きく後退・変質されました。

そして何より、憲法違反の安保法制を強権的に推し進めている中で、談話は文言だけ姑息に取り繕うとする姿勢は、極めて欺瞞的と言わざるをえません。

自治労北海道本部は、この安倍談話に断固抗議します。

そして、安倍内閣への抗議と批判にとどまらず、私たち国民一人ひとりがこの戦後70年の日本の岐路にあたって、自らの見解を確立し明らかにして内外に発信することが問われているという認識にたって、以下のとおり、「戦後70年・自治労北海道談話」を明らかにします。

戦後70年・自治労北海道談話

 戦後70年・自治労北海道談話

2015年8月15日

自治労北海道本部 執行委員長 山上 潔

 今年2015年は、第二次大戦の敗戦から数えて70年の節目の年にあたります。

 この戦後70年と、さらにはアジア・近隣諸国と共に歩む未来を考えるとき、私たちは日中戦争に始まり、アジア・太平洋戦争にいたる悲惨な歴史的事実から目を逸らすことはできません。この戦争によって、国内外合わせ二千数百万人という戦死者を出しました。悲惨な殺戮に至った日本による侵略・植民地支配という加害の大罪を、痛切に反省したいと思います。

 『日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』 --戦争放棄を謳ったこの日本国憲法前文と第9条の下、私たちは「非戦・不戦」を世界に向けて誓いました。 

  しかし、昨今の日本政府はこの理念を無視し、「国際紛争を武力で解決する国」を目指す政策を次々と推し進めています。こうした動きは、中韓両国をはじめアジア各国に強い危惧の念を抱かせています。日本政府がいま為すべきことは、歴史の事実を素直に認め、侵略への深い反省と、被害者に対して誠実、かつ真摯に謝罪することであり、平和憲法に明確に違反する安保関連法案を撤回することです。

 さらに、沖縄における軍事基地の建設、原発、ヘイトスピーチ、性差による社会的差別、貧困と格差の拡大など、人間の生存や尊厳を破壊し傷つける多くの不条理や矛盾を、この社会は抱えています。それらに対し、自由に意見や異議を述べることも出来ないような、息苦しい国家への傾斜を感じます。私たちはこうした政治の暴走を危惧し、強い憤りと反対を表明します。

  戦争による最大の被害者は一般国民です。しかし、政治の暴走をゆるし、ファシズムを支えてきたのも私たち国民自身でした。そしてその戦時下、私たち自治体労働者は、「おめでとうございます」と召集令状(赤紙)を配るという、国民を戦争に徴用する最先端の役割を担わされました。この自らの歴史への痛切な反省と二度と繰り返さないという決意をもって、平和への不断の取り組みを強めることを誓わなければなりません。

 私たちは、その歴史を直視し、この国の未来を決めていくのは、時の政治権力ではなく一人ひとりの国民である、との確信と、私たち自治体労働者は平和的生存権を守り、住民福祉の向上をめざすという決意のもとに、平和への思いを国内外に向けて、この「戦後70年・自治労北海道談話」を発信します。 

私たちは、

○戦争につながる一切のものを拒否し、自治体労働者として住民を戦争に動員する役割を二度と担うことのないよう、真の平和への不断の努力をします。

○価値観や文化の多様性を尊重し、国境・民族を超えた人と人との相互信頼を大切にします。

○近隣国との紛争は、歴史をふまえた丁寧な対話と平和的な外交努力、市民レベルでの交流によって解決すべきものと信じます。

○格差や不公平、隷従や暴力が生み出す〈憎しみの連鎖〉をなくす努力をします。

○アジアをはじめ、全世界の平和を大切にする人たちと手をつなぎ、共に生きていく決意です。

                                                                   以 上