安倍政権は、原発推進の「エネルギー基本計画」の政府案をまとめ、与党内の議論を経て3月中には閣議決定するとしています。原発を「基盤となる重要なベース電源」としていたものを、「重要なベースロード電源」と変更しましたが、その内実は何ら変わるものではありません。
平和フォーラム・原水禁は、下記のとおり、「声明」を発出しましたのでお知らせします。
以下、声明
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エネルギー基本計画政府案の撤回を求める(声明)
安倍政権は、現在「エネルギー基本計画」の政府案をまとめ、3月中には閣議決定しようとしています。今月24日に明らかになった政府案では、原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づける当初案に対して、原発推進の色合いが強いとする与党内での批判を受けて、原発推進のトーンを柔らげるとして「重要なベースロード電源」との専門用語に変更しました。しかし、その本質はこれまでの自民党政策同様、原発の利用を積極的に進めることに他なりません。また、原子力規制委員会の新規制基準で安全が確認された原発は、「再稼働を進める」と明記しています。福島第一原発事故がなかったかのような姿勢であり、事故の反省にたったものとは全く言えない計画になっています。
国会での多数の力を背景に、先の民主党政権下で国民的意見を広く求める中でまとめた「2030年代原発稼働ゼロ」の政策を、いとも簡単に放棄するものとなっています。しかし、圧倒的世論が「脱原発」を求めているのは明らかであり、その声を無視する安倍政権の暴挙は許すことができません。このような意味で、我が国がめざすべきエネルギー政策は、「国民一人ひとりの意見や不安に謙虚に向き合い、国民の負託に応えるエネルギー政策である」とする計画の「はじめに」に書かれる文言は、市民社会を愚弄しているとしか受け止められません。
さらに「はじめに」では、「原発依存を可能な限り低減する」「被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、寄り添い、福島の復興・再生を全力で成し遂げる」と記載されていますが、誰が見ても具体的政策に欠けるもので、「現在も約14万人の人々が困難な生活を強いられている」とする文言が、他人事にしか聞こえません。そして、そのことに対する具体的政策の展開は全く記載されていません。
核燃料サイクル計画については、「再処理やプルサーマルを推進」するとしています。しかし現実の核燃料サイクルは、六ヶ所再処理工場や高速増殖炉もんじゅ、プルサーマル計画、高レベル放射性廃棄物処理処分などのそれぞれの計画や建設など全く見通しが立っていません。このことは、政権与党の議員からも「核燃料サイクル計画は破綻しているのは明白」と明確に指摘されています。
特に高速増殖炉もんじゅは、「研究計画に示された成果のとりまとめを目指す」としていますが、後継炉の計画すら示されておらず、無理に研究を進めてもムダな研究に終わる可能性が強いと考えられます。文部科学省が進める高速増殖炉開発計画は、科学技術庁(現文部科学省の前身)時代に、大した成果も残せず終わった国家プロジェクト・原子力船「むつ」の二の舞になるのは明らかです。
高速増殖開発計画が成果を上げることができなければ、連動して再処理計画も頓挫してしまいます。再処理計画は、あくまで高速増殖炉が将来の原子力の主流になることを前提に進められてきました。また、再処理で作り出されたプルトニウムは、高速増殖炉で利用することを前提とし、NPTの合意を取り付けています。日本は、余剰プルトニウムを持たないことを公約としてプルトニウム利用を進めてきましたが、原発が停止した中ではその利用は極めて限定されます。国際社会から「公約違反」と「核武装」への懸念が広がっていくことにもつながっています。
核燃料サイクル計画の破綻は明確であり、世論は「脱現発」を確実に望んでいます。日本社会は、再生可能エネルギーの推進によって新しい産業の促進とエネルギーの安定供給をめざすべきです。そのことへの覚悟を示すことこそが「エネルギー基本計画」に示されなければならず、そのためにはきちんとした数値目標がなくてはなりません。原子力政策の延命を図る「エネルギー基本計画」の撤回と原子力政策の根本的転換を強く求めるものです。
2014年2月28日
原水爆禁止日本国民会議 議長 川野 浩一