11月22日、札幌市・自治労会館で北海道地方自治研究所が主催し、自治講座「人口減少下のまちづくりを考える」が開かれ、200人が参加した。
基調講演として首都大学東京・山下祐介准教授が「人口減少下のまちづくりを考える-世代・家族・コミュニティから見直す地域の未来」と題して講演した。
山下教授は「これまでは人口減少、高齢化が進行しても、インフラや年金制度などにより高齢者は孤立せず、生活が可能だった。しかし2010年代には『昭和ヒトケタ』が80歳代になり、集落の中心的な家が消滅するなど、『限界集落』と呼ばれる現象が発生した。また、北海道は本州に比べ居住地域が極端であり、『ミニチュア日本』と言える」と人口減少を分析した上で「『地域おこし』については国家レベルの問題であり、地域単位での政策では成功する確率は極めて低い」と結論した。
理由として「何のための誰のための政策なのか問いなおす必要はあるが、国の役割はアベノミクス・TPPなど経済大国を維持するために地方の暮らしを破壊することになっている。多数決の論理が優勢になり、大都市部からは、効率性重視、競争市場原理による淘汰の主張が優勢となり、小さな地域・地方は追い込まれ消滅していく」と解説した。
その上で自治体の役割については、「『これなら、できる』という地域の未来像をシュミレーションし、生き残れる道へと誘導していくこと。必要なことは、政府・自治体・道民が共に考え、知恵を出し、財と資源を出し合って、維持できる道を探すこと。このままでは全てをグローバル化に捧げる動きしか出てこない」と結んだ。
※山下准教授の講演レジュメは下記をクリックするとご覧いただけます。
その後のパネルディスカッションでは、はじめにパネラーそれぞれから報告があった。
これぞ小清水実行委員会の畔木善久さんの報告では「小清水町のでんぷん団子と企業誘致・雇用づくり」では、企業誘致へつながり、廃校になる小学校をせんべい工場として生まれ変わった。また、小清水町で有名なものとして「でんぷん団子」が定着したことが報告された。
ニセコ町環境企画課・福村一広課長の報告では「ニセコ町 デマンドバス事業の概要と背景」では、スクールバス、福祉バス、生活路線バスの経費と整理統合による公共交通の再構築、観光客利用の視点も取り入れたと報告された。
旭川大学・大野剛志准教授の報告では「道内過疎地のまちづくり 道の集落支援事業」では、高齢化・限界集落化する北海道においては「誇りの空洞化」「心の過疎」を生む。集落再生は「地域を支える人づくり」にあることが報告された。
パネルディスカッションは自治研究所・佐藤克廣理事長の司会で行われ、「地域おこしは判りやすい言葉、行政の言葉ではなく、市民の言葉で」「地元の人が地元のいいものを見つけなければならない。地元で解決する仕組みが大切」「限界集落による都市政策の見直し、特に市街地居住を進めることは、住民がそれをよしとするか否かが大切」「北海道の高齢化は本州と比べても酷くはない。札幌があり、地方に産業があり、本州と離れているという利点もある」といった意見が出された。
※この自治講座の詳細は「北海道自治研究2014年1月号」に掲載される予定。