憲法をめぐるシンポジウム「どんな国にするか。決めるのは国民です!!」が6月27日、自治労会館で開かれた。

このシンポジウムは、北海道労働文化協会と自治労会館が共催し連合北海道がこうえんし毎年行われているリレー講座の番外編として大きな課題となっている憲法について、横路孝弘衆議院議員と前小樽商科大学教授が講演し、その後北星学園大学・岩本一郎さんが問題提起し3人でディスカッションした。

 

 

 

横路孝弘衆議院議員は、「憲法はどうされようとしているか」をテーマに次の内容で講演した。

・自民党、安倍政権は憲法改正手続きの緩和という暴挙を手はじめに改憲準備を着々と進めている。選挙結果で日本の未来(国防軍、解雇自由化、人権制限、TPP)が問われる。

・安倍さんの主張では、「押し付け憲法」と言うが、「なぜ、米軍に日本が占領されたのか?」を理解しないで主張。歴史を感じていないから。押し付けではないことを知らない。

・明治以降日本は、台湾出兵にはじまり戦争の海外派兵を連続の歴史。

・WWⅠ後の1928年に戦争の悲惨な経験を基に日本もパリ不戦条約を調印(幣原喜重郎)。しかし、その後も戦争は無くならずWWⅡへ。人類は歴史を重ねる中で何度も何度も権力者が暴走して過ちを犯してきた。

・1945年10月に幣原喜重郎が総理大臣就任。GHQへ憲法に「戦争を無くす道」を提案。現行憲法9条にはパリ不戦条約理念が入っている。

・憲法制定過程においては、国内で議論が活発に行われ、それを踏まえてGHQの憲法草案ができ、現日本国憲法が制定された。

 

前小樽商科大学教授 結城 洋一郎さんは、「日本国憲法の法理」について講演した。

 ・自民党の改憲草案は、議会政治を無視する草案。立法は政府が行うとなっているから。国民主権の否定。天賦人権説(生まれながらにある個人の権利)の否定。明治憲法のコピーだ。

・君主といえども従うべき秩序・決まり・約束=「憲法」。「権力者の暴走を止める」という観点。「国家」は何のためにある(存在理由)のかを記したものが憲法。「憲法」に書いてあることを権力者に守らせ、政治を行うことが「立憲主義」。

・「民主主義」は多数決の原理・しくみ。しかし、古代ギリシャでの衆愚政治(扇動者の詭弁に誘導)、フランス革命時の恐怖政治(逮捕・処刑)など、最近ではナチスドイツのヒトラーを台頭させた。人類が過去の過ちを歴史から学んで「多数決で暴走しない仕組み」として「立憲主義」がある(また、民主主義には少数意見を重視するしくみも必要)。 「立憲主義」のしくみは、個人の尊重、権力を小間切れにしておくこと。権力者が人権保障(個人の尊重)することと権力分立(けんりょくぶんりゅう)(水平「中央と地方」+垂直「立法・司法・行政」)ということ。

 

北星学園大学・岩本 一郎教授は、「人権はどうなる」をテーマに問題提起した。

・死刑囚になぜ治療するか=人権意識を試す「試金石」。「人は変わる。悔い改めることもある」という人間の可能性を信じるという思考。刑の執行までは、誰であれ人権は守られると考えるから。

・自民党は、「国家」そのものに存在理由を置く。だから「美しい国」「天皇をいただく国柄」という言葉になる。「ヒトよりもクニ」。全体主義に結び付き戦争へ進むしくみになる。

・「公共の福祉(人権[個人の生き方]尊重。人権制約の正当化根拠:人権同士の衝突調整、自律能力不充分の人の利益を守る制約)」と「公益・公の秩序」では全く違う概念。

・憲法が負う義務:国民が相互に負う義務のみ。立憲主義。人権思想。->これがないのが自民党憲法草案。

 

ディスカッションの内容

①歴史認識が皆無の安倍さんが何でトップになれるのか?

横)安倍さんだけではなく、民主党内にも歴史を知らない(勉強しない)者はいる。いろいろな場面で歴史を伝えて行かなければ、こうなってしまうということ。国会のレベルも落ちていきている。 

結)憲法は歴史を教えない。しかし、「立憲主義」を理解するには、前提に西洋史の理解が必要。日本国憲法を理解するには、日本史を理解する必要がある。今の教育は、先史時代から明治時代までで時間切れの教え方(知られたくないという願いもある)。そして、それを教える者がいないという状況。コツコツ自分でしらべるしかない状況だ。

 ②集団的自衛権

横)歴史を紐解くと、傀儡国の反政府運動を抑圧した事例しかない(ハンガリー動乱、プラハの春、ニカラグア軍事介入、ベトナム戦争)。国際的な理想は、PKO(自衛隊派遣だけがPKOではない)。PKOの任務は多岐にわたる(消防、司法、行政など)。軍事的なものだけで議論するのは偏った議論だ。

③改憲案18条(拘束、苦役)は何を意図したものか?

よく見えないが。徴兵制なのかもしれない。今は、貧しい人が軍隊に入るしくみが米英では主流。政治的関係が抜けているので、そこの政治的拘束をするという宣言かもしれない。

④改憲案98条

 緊急事態を使って、人権抑圧し、独裁体制を敷く事例が多い。日本は、世界で稀に見る人権意識の希薄な国(例:精神保健福祉法の医療保護入院のさせ方)

横路衆議は、最後に、「世論調査では憲法に対する意識が低く無関心になっている。新聞で改憲のキャンペーンをやっているところもある。それらに負けないように憲法の学習をすべきだ。小さな学習会でもネットワークをつくり学習して、来るべき日に備えてほしい。もっと憲法の勉強しよう」と呼びかけた。