憲法記念日を前に、5月2日、札幌市・自治労会館で「憲法を私たちの手に!憲法施行66周年北海道集会」が開かれ、約400人が参加した。
主催団体を代表し北海道平和運動フォーラム・江本秀春代表が「現在、改憲論が多数派になっており、危険な状況になっている。この危険な状況を排除するため声をあげていこう」と述べあいさつした。
来賓の上田文雄札幌市長は、「憲法改正に多くの人が危機感を持っている。これからの国のあり方が変えられようとしている。狙いは九条の改悪と基本的人権の制約だ。今の憲法は人類で最高の到達点であり、誇るべきものだ」とした上で、「改憲の何が問題なのかを考え合おう。今の憲法、民主主義と市民自治をまもるためともに頑張ろう」と述べあいさつした。
引き続き、「憲法とは何かを改めて考える~日本国憲法施行66周年に~」と題して、水島朝穂・早稲田大学法学学術院教授が講演した。
水島教授は、「憲法とは『国民がまもる決まり』ではなく『権力者にまもらせる決まり』だ」と指摘した。その上で、「安倍総理は、それをまったく理解していない。歴史・憲法を学んでいない。思い込みや自分の思いだけで憲法改正を進めようとしている。だから、自民党の日本国憲法改正草案は議論レベルになる前のものだ。現行の日本国憲の『これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する』という条文を見ればわかる。人類が歴史を重ねる中で何度も何度も権力者が暴走して過ちを犯してきた経験を生かし、憲法というしくみをつくったことを認識せずに改憲案を作成している。天皇至上主義の産経新聞の改正案のほうがまだマシに見える」と痛烈に批判した。
また、「自衛隊は、軍隊というシステムが過去の実体験で知りつくした者が、決して軍隊にさせたくないという思いを込めて、自衛隊(はじめは警察予備隊)という組織になった。だから、他の国の軍隊が装備していないような救助装置を装備しているしノウハウも訓練も行なっている。その装備を使い、東日本大震災で空挺隊員などのエリート部隊もその過去からの精神を受け継ぎ救助・捜索を行った。安倍総理は、その歴史的経緯を学ばずに国防軍にしようとしているはおかしい」と強調した。
また、「4月28日は「『主権回復の日』ではない。サンフランシスコ講和条約をよく読むと。『沖縄と北方領土の主権を他国に奪われた日』だとがわかる。それを知っていれば、おかしいと思うはず。沖縄の人々はそれをしっているから、怒りより、安倍さんにはあきれている」と述べた。
さらに、「憲法に書いてあることを権力者にまもらせ、政治が行うことを「立憲主義」という。権力者が人権保障(個人の尊重)することと権力分立(けんりょくぶんりゅう)(水平「中央と地方」+垂直「立法・司法・行政」)ということだ。『権力分立』の観点で見ると、橋下さんの大阪都構想・道州制論はおかしいしくみだ。基礎的自治体が主体の地方自治という議論になっていない。中央集権的地方「分権」というしくみになっている。憲法をまもらなければならないのは、権力を持っている者。憲法99条に『天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負ふ』とある。憲法をまもるのは国民ではなく権力者だ」と再び強調した。
さらに、「人類が過去の過ちを歴史から学んで、多数決で暴走しないしくみとして『立憲主義』がある。だから、多数決(民主主義・民意)で選んだ選挙結果を『違憲』という司法の判断(多数決の暴走かどうか)もできる。歴史から学んで『民主主義』と『立憲主義』が微妙なバランスで運営されるしくみを築いた。だから憲法には『過去の過ち』をさせないという条項が書いてある。たくさんあるとそれだけ過去に過ちを犯してきたということでもある。自民党の日本国憲法改正草案は権力者が望む(やりたくてしかない)規制緩和案ということ。憲法改正には、変える側に説明責任(変えない側は理由をいわなくてもいい)があり、十分な情報開示と自由な討論、熟議の時間が必要だ。安倍総理の改憲論にはそれがない」と切り捨てた。
最後に、「憲法についての発想転換が必要。マスコミさんは盛り上げているが、『護憲』や『改憲』ではなく、『立憲』か『壊憲』という見方が必要だ。改憲派でも疑わしきは保留になる。 民意だからと強調する権力者は危険だということを認識しておくことが重要。『護憲』や『改憲』を含めた、「立憲」政党を現在の党派を超えてつくろう」と訴えた。
最後に集会アピールを採択した。