4月19日、札幌市・かでる27で、シンポジウム「アベノミクスで地域はどうなる!?~地方財政と住民のくらし~」が開かれ、全道から約400人が参加した。
はじめに、主催者を代表して、岡田・民主党幹事長があいさつし、「地方財政確立道民会議は地方切り捨ての小泉改革に抗するためにスタートしたが、安倍政権が地方分権の時計の針を逆戻りさせようとしているため、再スタートが必要となった」と述べた。また、「新自由主義をめざすアベノミクスは地方経済の再生にはつながらない」と自公政権の経済政策を批判し「地方のことは地方で決めなければならない」と地方分権・地方自治の確立を訴えた。さらに、TPP交渉参加について「北海道にとっては、百害あって一利なし」と民主党北海道としての反対姿勢を示した。
出村事務局長は「春季生活闘争のなかで地域をまわり、地方交付税の削減に各首長が危機感を抱いている。連合としては5月20日から全道キャラバンをスタートさせる。北海道には何一つ良いことがなく、生活破壊のみが引き起こされる。大衆に呼びかける行動へご参加いただきたい」と呼びかけた。
引き続き、「アベノミクスが地域を壊す!」と題して、金子勝・慶應義塾大学教授が講演した。
金子教授は、安倍政権の経済政策について「失われた20年に繰り返されてきた政策、失敗した政策をまとめて実行しようとしているだけ。過去の総括をしていないのは問題だ」と批判し、「株価があがれば意味もわからずアベノミクスのおかげ」と国民が思い、株価の変動と内閣支持率が同様に変動している現状を指摘した。また、「株価の上昇や円安は、企業の内部留保が増えるだけで、労働者の賃金は上がらない」としたうえで、株価が上がれば政策的失敗や経営的失敗を覆い隠してしまうことについて「90年代と変わらない。本質的なことをかくしている。失われた20年の反省に立たないと今の状況は脱出できない」と強調した。さらに、「(政府の政策の)すべての犠牲の先頭は北海道・沖縄」とし、TPP交渉参加についても「参議院選挙対策で国を売った。日本政府は無能の極み。交渉になっていない」と痛烈に批判した。
その後、「どうなる!?地方財政と住民のくらし」をテーマに、逢坂誠二さん(元総務大臣政務官)をコーディネーター、コメンテーターに金子勝さん、パネリストに、山居忠彰さん(北海道農民連盟書記長)、安久津勝彦さん(足寄町長)、山内亮史さん(旭川大学学長)をむかえパネルディスカッション行った。
はじめに、パネリストから自己紹介も含め講演を基に意見が話された。
山居さんは「アベノミクスは一種のイリュージョン。議員も含めて全部をだましてしまう。何もしていないうちからアナウンス効果で株価は上がる。小泉政権や古い政治の繰り返しである」と、アベノミクスを批判した。
安久津さんは「平成16年に地方交付税が大幅に減らされたことにより、町として職員給与の独自削減や人員減など様々な努力してきた。政権が変わった途端、国交7.8%削減の地公への強制が行われ、忸怩(じくじ)たる思いを持っている。農業が崩壊すれば町は崩壊する。それが我が町の現状である」と、現政権が地域を顧みていないことを指摘した。
山内さんは「現象論的に社会が壊れ始めているのではないか。3万3千人の孤独死、3万人の自殺者、この現象論の中にある実態と本質は何か。2040年には全道の41%の人口が札幌に集中するという試算もある。人が都市に集中し、地方が成り立たなくなる。社会の底が壊れ始めている」と、今後の北海道の状況について述べた。
金子さんは「過去の反省がない。ロジカル(理論的)でなくなっている。原発についても、電力会社の体(てい)たらくで社員がかわいそう。原発を電力会社から切り離してあげることが必要だし、そのことを労働組合がなぜ要求しないのかが不思議である。私たちは正確な情報を知らされていない。情報をしっかり捉え、何が起きているのかを考えることが大切。」と、問題点を指摘した上で、「北海道は自然エネルギーの宝庫である。地域電力を作って地域のデモクラシーが起きる。新しい経済のイメージを持つことが大切。地域分散型ネットワーク社会で、新しい仕組みを北海道から作り出していくようにしなければ」と、今後について持論を展開した。
次に、国の交付税削減による地公給与削減の強制という姑息なやり方や、公共事業が地域で消化できるのか、町民のためになっているのか、地方財政とこれからの住民のくらしの問題について、意見が出された。
安久津町長は「総務省の言う通りで試算すると今年度の地方交付税は4500万円くらい減額される。一方で、地域の元気づくり事業費で色を付けるとされているが、その試算は1500万円くらい。結果、3000万円は減らされるということ。地方交付税は地方の固有の財産であるが、国の力が強大なのか、やらざるを得ない自治体も出てきている。当町としては5年間の独自削減をしてきており、職員に申し訳ない気持ち。公共事業については、基盤整備には必要な事業であるが、補正でどんどん来られても、実際、十勝全体でも消化しきれていないのが実態。行政を進めるうえで、職員に大変な苦労を掛けていると感じている」と話した。
山居さんは「アベノミクスには次元の違う大増税という4番目の矢があるのではないか。自民党は影響試算を出す前に交渉参加を決定した。賃金は下がり、税金は上がり、年金医療の制度が崩れ、まさにTPPは農業だけの問題ではない」と話した。
山内さんは「生活の公共権を地域でどう貼り替えていくか。生活者の視点で考えよう。かつて、鷹栖町の町長がメタボ体策としてヘルスプロモーションで健康維持するというのをやっていた。地域の貼り替え、自治の貼り替えなどがなぜ各地でできなかったのか。民主党政権で事業仕分けや地域分権が始まっていたので、本当に残念だ」と話した。
また、自民党政権は、民主党政権に財源が無いと批判しておいて自分たちはあっという間に国債を発行するなどのアベノミクスのご都合主義のやり方について意見が出された。
金子さんは「経常収支が長引くと、海外からお金を入れないともたなくなる。黒田日銀総裁は戦時中と同じことをやっている。日本は結核にかかって死にそうになっているのに、風邪薬や解熱剤を飲んで一時的に良くなったと思っている。悪くなれば薬の量を増やせば良い、これがアベノミクス。違う薬を飲んでも病気の元は治らない。後になって悲惨なことになる。民主党はもう一度再出発するならば、将来ビジョンをしっかり持つことが大事だ」と話した。
安久津さんは「われわれ自身も考える力を身につけなければ。農業について、安倍さんは産業面もあると言っていたが、農業は民間が参入して競争、経済にまきこむ、そんな分野のものではない」と話した。
金子さんは「劇場型政治の特質は、抵抗勢力を作りだすこと。TPPでいえばJAがそれにされている。まわりはそれを応援すれば応援しているような気になる。データは絶対見せないのだから、こちらが試算して数値を示すことは、劇場型政治をぶち壊す手段にもなる」と話した。
山居さんは「参院選の後、憲法改正、国防軍など全部つながっていることを、私たちは真剣に考えていかなければならない。」と話した。
安久津さんは「最近、労働組合が弱いと感じる。昔はもっと地域の人と町づくりについて議論していた。組織の力を生かして、町づくりに力を貸してほしい。がんばってほしい」と話した。
山内さんは「北海道の森、水、空気が汚染されれば、北海道はどうなるのか。泊原発の再稼働に反対していきたい。福島県双葉町の町長が「赤字で町が持たないから再稼働してくれ」と訴えている。負の連鎖である。人間の共同性が破壊されている。共同性をどうはかっていくか、非常に大事になってくる。」と話した。
最後に、逢坂さんが「政治と経済が表裏一体になった時が一番危ない。儲かれば主権者の声が届かなくなる。アベノミクスの突破口は、地域がどう捉え、どう考え、どう突破していくか。地域がしっかり考える事が大切。金子先生から、一極集中型のメインフレームを地域分散型のネットワーク社会にすることが大事と話されたが、私はそれに“自律”を加え、自律分散型ネットワーク社会をこの北海道から作っていくことが大切だと感じた」とまとめ、パネルディスカッションを終えた。
その後、アピール採択として、小川勝也・連合北海道国会議員団会議会長が「安心社会の実現をめざし、自治体財政の確保と地方分権の確立を求めて、地域・職場から全力で取り組みを進めていく」ことを読み上げ、全体の拍手で採択し、閉会した。